ピンポン : 映画評論・批評
2002年7月3日更新
2002年7月20日よりシネマライズほかにてロードショー
スポ根ものではないスポーツ青春映画が誕生
本作の偉業は、暑苦しくもクサクもない青春映画を実現したことにある。
それはつまり、原作の魅力を映画化することに成功した、ということでもある。原作は、松本大洋の同名漫画。その魅力は、友情あり、苦悩ありの正しい青春ものを、現代の観客が納得のいく形で表現してくれたことにある。
そのため、あえて使われたのが「スポーツ漫画」という枠組だ。その枠組どおりに、主要登場人物たちは全員、卓球の全国大会で試合をするのだが、彼らが卓球をする理由はみな違う。しかも、その究極の目的は試合に勝つことですらない。それまでのスポーツものの、みんなでひとつの何かに向かう、といった世界の対極を描くのだ。だから、集団競技ではなく、卓球。映画はそのドラマをきちんと描く。キモのセリフは原作のままで出てくる、という念の入れようで。
さらに、原作のあの独特の画(何しろ汗が有機物に見えない)の効果を、映画は超スピードで飛び交う球のCG映像と、日本のエレクトロ系音楽の使用で試みたといえるだろう。
もちろん、原作をまったく知らずに見ても楽しめるはず。原作を知っている観客にも、その映画化法の妙技が楽しめる作品だ。
(編集部)