ロード・トゥ・パーディション : インタビュー
「ロード・トゥ・パーディション」主演トム・ハンクスに小西未来氏がインタビュー。ロサンゼルスで採れたばかりの生の声を産地直送でレポートだ。話題作続きの売れっ子ハンクスだが、ぜーんぜんエラそうじゃないとこがさすがなのである。
トム・ハンクス インタビュー
「サム・メンデスとコンラッド・ホールは夫婦のようなんだ(笑)」
小西未来
――これほど美しいギャング映画は、初めて観ました。
「それは同感だね。サム・メンデス監督と撮影監督のコンラッド・ホールは絶対的な信頼関係にあって、ほとんど夫婦のようで(笑)」
――(笑)
「セットに入っただけで、『この映画は違うぞ』って分かったよ。他の映画と照明の位置もまるで違ったしね。おまけに、カメラの準備に時間をかけられるように、撮影スケジュールもゆったりと組まれていたんだ。いまどき贅沢だよね」
――監督が決まるよりも先に、出演を決められたそうですね。
「そうなんだ。グラフィック・ノベル版を最初に読んで、それから6カ月か8カ月したあとに、脚本の第一稿が上がってきて。『これをやりたい』ってすぐに思ったよ。でも、俳優が先に出演を決めてしまうのは、必ずしもいいことじゃないんだ。映画は監督のものだから、監督が先にその作品の料理法を定めて、それに俳優が合わせるべきだよね。サムとぼくとの間に意見の衝突が起きて、サム監督を降りてしまう、っていう危険性もあったわけだし。幸いそんなことはなくて、おまけにポール・ニューマンやジュード・ロウなど、素晴らしい共演者が集まってくれて、本当についてるよ。心からやりたいと思う作品があっても、それが実際に映画化できることなんて、希なことだからね」
――いつものナイスなキャラクターと違い、今回は殺し屋を演じられていますが、どのように役作りされたのですか?
「大した役作りはしていないんだよ。少なくとも外見に関してはね。それは、衣装さんとか専門の人たちが作り上げてくれるものだから。『殺し』のテクニックについても、この映画は息子の視点で描かれていて、父親が殺し屋かどうかはある種のミステリーになっているから、特別な技術を覚える必要もなかった。だから、ぼくの俳優としての仕事は、脚本に書かれている父と息子との関係を、いかにスクリーンに投影するかということだけだった。これは大量のリハーサルと、監督との意見交換によって培った。この映画では、リハーサル期間が通常の映画よりも長くあって、その間に、脚本を読み込んで、湧いてきた疑問を監督にぶつけていった。そんなプロセスを何カ月もやっていたから、現場では単純だったよ」
――あなたが出る作品はどれも大ヒットを飛ばしていますが、作品選びのコツを教えてください。
「全部が全部ヒットしているわけじゃないんだ。それはフィルモグラフィーを調べてもらえば分かるよ(笑)」
――でも、最近はヒット作を連発しています(笑)
「確かにね。ただ、ぼくにとって唯一の判断基準は、脚本を読んだとき、サプライズがあるかどうかということ。『ワオ、こんな映画を見てみたいな』って思わせる要素があるかどうかで、ヒットするかどうかなんてことはまったく考えない。ストーリーが新しいか、サプライズがあるか、あるいは、完成度が非常に高いか。それだけなんだ。そうやって選んだ作品が、たまたまヒットしているだけなんだよ」
――これまでたくさんの役を演じていらっしゃいますが、まだやったことがない役で、やってみたいものはありますか?
「ぼくはそういう風には考えないんだ。もし、ぼくがやりたい役というのを設定してしまったら、正しく作品選びできなくなってしまうと思うんだ。以前は、宇宙飛行士役をやるのが夢だった。でも、送られてきた脚本のなかに、宇宙飛行士役があったとしても、出演しようとはしなかった。そういう脚本は数え切れないほどあったけどね。それで、『アポロ13』を引き受けたのも、『やっと宇宙飛行士役ができる!』というよりも、『いいストーリーの映画に出られる』と思ったからだし。だから“炭坑夫”とか“消防士”とか、あるいは“日本人ジャーナリスト”とか(笑)」
――(笑)
「……そういう風にキャラクターで選ぶことはないんだよ。そうしてしまったら、いい映画を選ぶことができなくなってしまうから」
――それが、ヒット作を選ぶ秘訣なのかもしれませんね。
「そうだと言えるかもね(笑)」
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