ミュンヘンのレビュー・感想・評価
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イスラエルとパレスチナの対立。長い歴史の中で流されてきた夥しい血。...
イスラエルとパレスチナの対立。長い歴史の中で流されてきた夥しい血。被害者感情に訴えれば、控えめに言っても、"自分たち"を正当化するだけの犠牲はいくらでもある。
しかし、被害者意識に駆られた報復は、なんの解決にもならない。暴力が生むのは暴力だけなのだ。暴力は被害者を新たな加害者にするばかりか、加害者自身から人間性をも奪ってゆく。
国家や民族、信仰、組織のために奪い合う命。その闘争は遠くから眺めれば、誇り高い英雄譚として人の心を惹きつけるものになるんだろう。でもその闘争の当事者になった時、人は初めて気づく。そこには何もないと。
親イスラエルであるアメリカ、特に映画産業において、イスラエル、およびユダヤに批判的であることは、容易なことではないだろう。とくにユダヤ系アメリカ人、つまり完全に当事者であるスピルバーグ監督が、反ユダヤ的な作品をつくるということは、日本人が考える以上に覚悟のいることだということは想像に難くない。
暴力で解決できることはなにもない。しかし、現実の脅威に対抗する手段としての軍事オプションという暴力装置が必要なのも事実。問題は装置が装置として機能しない時。アメリカが撤退したイラクは崩壊し、イスラム国が壊滅したはずのシリアでは今日もなお空爆が行われている。トランプが首都発言をしたイスラエルのエルサレムでは、デモ隊と警察との衝突が激化し、パレスチナ市民が数十人殺害された。
ミュンヘンオリンピックから46年。北朝鮮が平昌で微笑み外交をする裏では、いよいよ米朝の軍事衝突が懸念されている。暴力で解決できることはなにもない。それでも暴力を選ぶ覚悟が僕らにあるのだろうか。
スピルバーグならでは
ミュンヘン
1972年のミュンヘン・オリンピックで起きたパレスチナ・ゲリラによるイスラエル選手殺害事件とその後のイスラエル暗殺部隊による報復の過程をリアルかつ緊迫感のあるタッチで描いた衝撃の問題作。
BGMをほとんど使っておらず冷たい静寂の中での暗殺劇はスリル満点。
ザラついた映像によって冷酷さ、
悲壮感を伝えるあたりはスピルバーグの上手さだと思う。
諜報機関“モサド”の精鋭5人による暗殺活動を描く部分で、
人一人を殺す目標達成の過程は計画通り行かないのもお粗末ですが、
映画の様に上手く行かないのもリアルでありスリリングでした。
人体破壊描写も気合が入っていて良かった。
テロリストを追うものがまたテロリストになり、
追うものは追われるものとなり、
そして報復が報復を生み出していく悪循環で終わりがない。
ちょっと長くなるかも知れないが、3段落に渡って〜
3段落に渡って本作をレビューしたい。
先ず第一に。俺の問題なのだが・・
年取ったなぁ・・と感じた事だ。
今迄の映画レビュー。
俺は良く、映画偏差値とか映画経験値て造語を使ってきた。
似た言葉なんだけど・・
映画偏差値の方が頭で考える。
映画経験値の方が五感で感じる。
〜みたいなイメージになるか?
映画を見る、いや『観る』のはとても頭と五感を使うのだ。
後の二段落でも記するけど、そこは後回しで、先ず俺だ。
映画偏差値も有るハズだし、映画経験値も有るハズなのだが・・
160分のこの映画に、俺は付いて行けなかった。
純粋に、俺自身が劣化したんだ。と痛感させられた。。。
で?
そんな年寄り手前の俺だが、まだまだ若い者には負けられん!と、第二に本題の作品レビューを記す。
いろいろ?映画経験値よろしく、事前知識を先ず本作は、入れとかねばならないだろう。
・スピルバーグがユダヤ系である事
・公開年は05年/制作を思い立ったキッカケが01年であろう事
そして〜
・アメリカとイスラエルがかなりの友好国(友好国と言う言葉では片付けられない?)である事
〜社会や世界史の勉強をきちんとして、本作に挑む方が良いだろう。
事件や暗殺等が主題と思われがちだし、実際そうなのだろうけど。
年をとったからか?俺には、本作は家族愛の物語にも思えた。
実際どうなのか?は、観た人が決める事だろうが、女性はいつも偉大だ。
強く優しいのだな・・と本作で感じた。
映画経験値→高め(アーパー女子には向かない/世界史も学んどいた方が良いだろう、チャーチル二枚舌で検索だ!)
映画偏差値→高め、いや高めというか?硬めだ。そう硬い映画だ。
もう一回観る度→「0」
DVD買う度→「0」
重い映画で、二度と見たくは無い。
だが、それは決してこの映画が悪辣だ!とか・・つまらない映画だ!とか言う話では無い。
重く硬く様々な事を突き付けられるのだ。
三番目に、語りたいと言うか添えて置きたいのだが・・
映画ドットコムのプロの?ライターさん?の一文に『ラストに写る、あのビルが答えだ!』みたいな書き込みが有って・・
そこを見逃してて、ますます映画への衰えを痛感した俺でした。
平和だね。平和がやはり良いよね。・゜・(ノД`)・゜・。
忘れられる目標
きっかけはオリンピック村での殺戮で、その後にはやってやられての繰り返しである。どちらの陣営もしてることは同じで、情報を集め、近づき、殺す。
自分たちの国が欲しい。祖国を死守する、自分たちの権利が尊重される社会が必要だ。という真っ当な目標が、いつのまにか忘れ去られ、復讐の連鎖から抜け出せない。
個人としては家族を守るといった、また別の目的もあり、主人公にとっては第一目的であった。その目的も国家による大きな目標に飲み込まれ、彼自身が家族を傷つけてしまうことになるだろう。
作中に直接は大きく描かれていないが、アメリカに対する視点も感じられ、観客に疑問を投げかける作品だった。
テロ、正義、愛国心、人への愛、共通点と差異、多様性と差別、様々な観点からみることができる。
チームが任務を遂行する様はわくわくし、映画的に楽しかった。
当時のニュース映像を鮮明に覚えている。選手達が空港でテロリストに連...
テロリスト目線。
平和主義者スピルバーグの願い
1972年のミュンヘン・オリンピックで、11人のイスラエル選手がパレスチナ・ゲリラ“ブラック・セプテンバー”に殺された。イスラエルの諜報機関“モサド”は暗殺チームを組織し、首謀者たちを暗殺していく…。
実際に起きた悲劇の事件とその後の報復行動を描いたスティーヴン・スピルバーグの2005年の作品。
パレスチナ・ゲリラやモサドなどの描写が物議を呼び、数あるスピルバーグの作品の中でも屈指の問題作で、重くシリアスだが、一本の映画としては超一級品。
暗殺チームの面々にはそれぞれ得意分野があり、スパイ・サスペンス映画としての醍醐味も充分。
とりわけ秀逸だったのが、電話に爆弾を仕掛けるもターゲットの娘がその電話を取りそうになるシーン。スピルバーグならではの緊張感あるサスペンス演出に、さすが!と唸らされた。
祖国の為、同胞の為、非道なテロリストを討つ。
果たしてそれは、正義の行動か、人が人を殺める行為か。
やがて仲間や自分の身にも危険が迫り、精神的に追い詰められていく。
悲劇が報復を呼び、報復が更なる苦悩や哀しみを生む。
ここに、平和主義者スピルバーグの願いが感じられた。
スピルバーグ、さすがの底力
イスラエルとパレスチナの対立や政治的背景に詳しくなく、彼岸の火事のように感じてしまっている自分としては、その渦中となっている問題について、真に迫ってくるものがない。とはいえ、復讐の連鎖が生み出す悲劇を暗示するかのように、ニューヨークの“あの場所”が映し出されるシーンには、ハッとさせられのだが。
70年代の雰囲気を再現した町並みや衣装、小道具、彩度を落とした乾いた画面がいい感じだし、娯楽作品と割り切ってみるのは気が引けるけど、それでも娯楽性とストーリー性、テーマ性を高いレベルで融合させ、164分という長尺を飽きずにみさせる緊迫感・緊張感は見応え十分。こういうものをたった半年で作り上げてしまうスピルバーグとそのスタッフたちの底力はさすが。
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