劇場公開日 2006年8月19日

マッチポイント : 映画評論・批評

2006年8月15日更新

2006年8月19日よりシネスイッチ銀座ほかにてロードショー

イギリスだからこそ生まれた新たなウッディ・アレンの世界

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ウッディ・アレンの新作「マッチポイント」では、ジョナサン・リース・マイヤーズ演じる、野心と愛欲の間で揺れる青年の苦悩が描かれる。普通は野心と純粋な愛の間で悩むものだが、秤にかけられるのが肉体的官能というのは、相手がスカーレット・ヨハンソンだからか。ヨハンソンの若さからくる自信や勢いは肉感的な体を通して強い光を放っており、ウッディの眩しそうな顔が目に浮かぶようだ。

新生ウッディの世界は新しいミューズのお陰だけではない。この作品は“It's not fair!"が口癖の、フェアなことなど存在しない皮肉たっぷりのイギリスだからこそ生まれたものだと言える。大体イギリスでなければ、彼はいつもの軽い皮肉を飛び越え、こんなブラックでねじれたラストにしただろうか。これは「運」というより、実にイギリス的なフェアについての物語なのだ。また同じ英語でも、独特のニュアンスを持つイギリスのアッパー・イングリッシュの台詞は、今までの作品とはまったく異なる新たな言葉のリズムを生み出し、(ウッディ映画では言葉のリズムが重要なだけに)それに従って歩くリズムや街のリズムも変化、作品の空気密度が大きく変わった。この映画の成功は、観客に新鮮な世界を提供したことではない。彼がイギリスで撮る意義を見つけたことにあるのだ。

(木村満里子)

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