LOVERS : インタビュー
昨年の「HERO」に引き続き、チャン・イーモウ監督の「LOVERS」でアクション監督を務めたトニー・チン・シウトン。映画監督としても知られる彼にイーモウ監督のこと、そして新作「LOVERS」について聞いてみた。
トニー・チン・シウトン アクション監督インタビュー
「自分なりのオリジナリティ<個性>を打ち出したい」
編集部
――まず、「LOVERS」を大変楽しく拝見いたしました。
「(日本語で)ありがとう」
――「HERO」に引き続いてのチャン・イーモウ監督との仕事ですが、シウトンさんが、「テラコッタ・ウォーリアー」を撮った頃に、当時主演だったイーモウ監督がこれほどの巨匠になると想像できましたか?
「わからないなあ(笑)。でも、その当時、すでに『紅いコーリャン』を観ていたので、いい監督になるとは思っていたよ。俳優としては80点くらいだったかな(笑)」
――今回の「LOVERS」ですが、スタッフの間で竹林は絶対撮らなければならないといった決意のようなものはあったのですか?
「特にはなかったよ。イーモウ監督はまず物語を第一に考えるから、あるシーンを撮るために映画を撮るようなことは絶対しないんだよ。だけど、竹林は中国の代表的な風景の一つだから、撮ってみたかったというのはあるよね」
――やはりキン・フー監督へのオマージュなのでしょうか?
「そういうことではない。しかし、彼は武侠アクションの元祖で、彼が武侠アクションというジャンルを創造したといっても過言ではない。だけど、今の時代に彼の作り上げてきたものと同じものを作っても仕方ないからね。やはり現代には現代のやり方、見せ方がある。自分なりのオリジナリティをしっかり打ち出した作品を作って、先達を乗り越えなくていけないと思うよね」
――前作の「HERO」に引き続き、大変豪華なキャスティングでしたが、気を遣ったシーンなどはありましたか?
「全然。みんな以前に仕事をしたことがある人ばかりだったし、俳優自身がやはり自分自身を良く見せたいと思っているわけだから、頑張ってついてきてくれた。それにスターと呼ばれる人達はとても謙虚。謙虚でなければ、一流にはなれないよ」
――会見では、金城武さんが「苦労した」と素直に語っていましたが?
「彼は今までがアイドル的な扱いだったので、撮影中は大変だったと思うけど、彼に合ったアクション、振り付けをつけたつもりだよ。あと、アンディも非常に努力していたよね。今回は主演3人皆頑張ったと思うよ」
――シウトンさんがアクション監督を担当した「少林サッカー」がとても好きなのですが、チャウ・シンチー監督とチャン・イーモウ監督の違いは? 「少林サッカー」ではとても弾けた感じで自由奔放な印象でしたが、今回の「LOVERS」では非常に抑制された印象を受けました。
「2人は全く対称的でスタイルも違う。イーモウは物語、人物を第一に考え、やや芸術的な映画を目指そうとする。一方のシンチーは非日常、劇的なシーンを中心に映画を構成する人だね。それぞれ個性が違うということだが、その個性がなければ、映画作家として生き残っていけないだろうね」