「見直してみた。」ロード・オブ・ザ・リング 葵須さんの映画レビュー(感想・評価)
見直してみた。
2002年頃、まだ自分が子供だった頃見たものを見直してみた。映画館で見たのか、父親がビデオを見せてくれたのかは覚えていない。
感想を一言で言うと面白かった。没入感があるため、映画を見ながらその手法について自分なりの批評をする気もなかった。
キャラクタとしてはガンダルフが一番好印象がある。時々冗談をいうお茶目さもあるが、力を持ちながらも指輪に誘惑されない数少ない登場人物で、主人公フロドを最後までバックアップしてくれていた(最近の創作物ではおしなべて彼のような立ち位置に老賢者はいない。いたとしても、『老』とはラベルがあるだけで見た目は美少女・美男子ばかりだ。この作品を見るにつけ、ガンダルフのようなキャラクタが欲しいなと思い起こした)。ビルボやボロミアは指輪の誘惑に負け人間の弱さを見せるが二人共その本質を憎むことはできない。森の奥方ガラドリエル(ケイト・ブランシェット)については子供の頃彼女を見た時その美しさに驚いたし、今回も驚いた。
フロドが指輪の誘惑に苛まれているときの青白い顔で視点がぼやけて見える表情は見ていて辛くなるところがあった。これは子供の頃見たときも今回見たときも同じだった。普段の彼はほほが朱色に染まっていて個人的にダビデ像の様子を彷彿とさせる美男子なのだが。
この創作物の表すところを象徴的に我田引水した意味として表現するならば、フロドの苦悩と目的への邁進はすべての人がもつ人生での苦悩、目的につながるところがあると思う。だから、このような作品を見ることはファンタジーではるが皆に勇気を与えるという意味で意義あることだと思う。
日本の漫画・アニメ・ゲーム文化のファンタジー界隈に与えた影響はハリーポッターシリーズに続き大きなものがあるだろう。ファンタジーはこの映像作品が出る前からあって、その原型は皆の心にあったが、この作品が見せたガンダルフ=魔法使い=賢人始めそれぞれのシンボルの見事な映像表現は皆の心のなかにより洗練されたシンボルを作り出すことに成功し、創作界隈だけでなく人々の豊かな想像する心に育みを与えただろうと思う。