劇場公開日 2003年10月25日

キル・ビル : 映画評論・批評

2003年10月15日更新

2003年10月25日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にてロードショー

「やっちまいな!」と趣味爆発!

画像1

クエンティン・タランティーノという人間は、映画を栄養にして育ってきた筋金入りのおたくである。それもいわゆる芸術映画ではなく、B級、C級の娯楽映画を愛し、浴びるように見てきたことに、非常な誇りを持っている。そして「キル・ビル」は、そんな「オレ」による映画愛の告白だ!

キャラクターを際だたせるセリフでストーリーを引っぱっていた、かつてのタランティーノ映画とはまるで違う。彼はこの作品を、自分の愛するジャンル映画のさまざまなスタイルで引っぱってみせる。日本のヤクザ映画、チャンバラ時代劇にアニメ、香港カンフー映画、マカロニ・ウェスタンなど……。アレもコレも詰め込んで、見事なまでのゴチャ混ぜ状態。この世界にバランスをもたらすのが、タランティーノの個性だ。しかも舞台そのものが、彼がその種の映画を咀嚼して創り出した、オリジナルの「宇宙」になっている。このリアリティのなさが、たまらなく面白い!

つまりこれは「やっちまいな!」という自分の声に忠実に作った、タランティーノの趣味爆発映画。彼一流のアクション・ファンタジーだ。いやもう、ここまで徹底し、映画的興奮を与えてくれれば、言うことなしだよ。

若林ゆり

Amazonで今すぐ購入

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む
「キル・ビル」の作品トップへ