ジャーヘッド : インタビュー
サム・メンデス監督インタビュー
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――映画の中の台詞「Every War is Different. Every War is the Same」に引っかけて言うと、この映画は今までの戦争映画とは違って「Every War Movie is Different. Every War Movie is the Same」だと思うのですが、いかがでしょうか?
「今までにない戦争映画を作ろうとしたので、その言葉は嬉しいですね。ただ、映画の中のその台詞は皮肉であり、実際の戦争は時代や場所が全て異なるので、全てが違うものだと思います。戦場にいる若者の心の動き、特に虚しくて荒んでいくところは共通だと思いますし、そのことを適格に表現した台詞です」
――ジェイミー・フォックス演じる上官と主人公のスオフォードが出会う時のナレーションで、「ハーレー・ダビッドソンVSホンダ」など多くの現代的な対比する単語を散りばめ、落ち込んでいながらも客観的に自分を見つめる今どきの若者の心境を表現しているのが秀逸だと思いました。
「物事を考える若者は『善と悪』のように、いつでも何か対立したものを心に持って葛藤しているものだと思います。ジェイミー・フォックス演じる上官はテレビ局の取材のシーンでも明らかなように、軍のイメージを対外的に良く見せることができればハッピーな男ですが、スオフォードは違います。現代に生きて悩みを持った普通の若者なんです」
――戦争映画以外で本作を監督するうえで参考にした映画はありますか?
「私の大好きな映画で、ルイス・ブニュエル監督の『欲望のあいまいな対象』(77)を参考にしました。登場人物たちが精神的にいつもギリギリのところにいるが、どこにも辿り着かないところが象徴的でとても好きです。この映画の戦争版を作ろうと思いました」
――90年代の無気力な若者を表現する言葉である“「ジェネレーションX世代」の戦争映画”と言われることに関しては?
「今の若者もそうですが、彼らは感情的に麻痺し過ぎているんだと思います。さまざまなカルチャーや情報に囲まれて、とても暴力的なこともアクション映画を観るように眺めてしまいます」
――大変だったシーンは?
「兵士の目の視線で撮影して、マスターショットを撮らなかったので編集が大変でした。撮影そのものは暑かったので、俳優もスタッフも暑さで体力を消耗しないように注意しましたね」
――メインキャストにジェイク・ギレンホールとピーター・サースガードを起用した理由は?
「2人とも素晴らしい俳優で、期待に十分応えてこれる演技をしてくれました。ジェイクはロンドンで上演された舞台『This is Our Youth』の演技を観て素晴らしく思い、ピーターは『ボーイズ・ドント・クライ』(99)、『ニュースの天才』(03)、『愛についてのキンゼイ・レポート』(04)を観ていたので、起用することに決めました。ピーターは自然な感じがありながら、どこかミステリアスでセクシーなんです。そして、とても頭が良いので最近の多くの映画に出演し、注目の俳優になっているのは当然だと思います。この映画でもピーターが演じるトロイを観た観客は、彼のミステリアスな部分に『彼は何者なんだろう?』と思うでしょう。従来の映画のような明快なストーリーやサスペンスがある映画ではないので、キーになるトロイを素晴らしく演じてくれたピーターには感謝しています」
――次回作の予定は?
「本作の製作が大変だったのと、子供もまだ小さいですし(ケイト・ウィンスレットとの間に生まれた子供)、1年は休む予定です」