「皆さんに知って欲しい」アイ,ロボット 跳猫さんの映画レビュー(感想・評価)
皆さんに知って欲しい
この映画はSF作家アシモフの小説にインスパイアされたということになっています。
アイ,ロボットというタイトルもロボット工学3原則もアシモフの作品からとられています。
あえて「とられて」とひらがなで書きました。ここにどんな漢字が充てられるか皆さんにも考えて欲しいです。
まず、この映画について語る前にアシモフについて知っていただきたい。
アシモフはSF作家として有名ですが、科学エッセイを書き続けた人物としての功績も有ります。
科学について広く多くの人に知ってもらい、慣れ親しんで欲しかったからです。
そこにアシモフの信念がありました。「人間は科学を恐れる必要はない。科学が人を不幸にするなんてことは絶対にない。人間を不幸にしているのは人間であって科学ではない。」
科学について理解していない状態で科学を恐れる人に科学を恐れないで!と常にメッセージを送り続けていたんです。
当然SF作品にもその信念は込められています。
アイ,ロボットというタイトルを付けられた短編集には特にその信念が綴られていると思います。
ここでこの映画について語るわけですが、この映画はロボットへの恐怖、科学技術への恐怖を喚起する内容になっています。
脚本家や監督がこの映画でどんなメッセージを伝えたいか、ラストで何を語っているか、そんなことは関係ありません。
ロボットが暴れて、明確に人間に危害を加えている映像を映し出しているんです。
これを見てロボットに対して恐怖しない人はいないでしょう。
何よりアシモフが忌避していた科学に対する恐怖心を煽る映画なんです。
最後まで見たらそんな単純な映画ではないよ!って擁護する人もいるんですかね?
でもこの映画のレビューを読んでみれば分かります。多くの人がロボットや科学に対する恐怖を感じた感想を書いていました。結局そういうことなんです。
別に科学やロボットに対する恐怖を煽るような映画を作りたいなら好きにすればいい。
だが、その映画に間違ってもアイ,ロボットなんてタイトルを付けちゃいけない。
ロボット工学3原則を作中に持ち出してはいけない。
エンドロールにアシモフの名前を記載するなどもっての外。
この映画はアシモフの死後、制作され公開されました。
アシモフがこの映画を見て文句を言うこともできません。
とても卑怯なやり方です。
アシモフの作品を読んでから映画を見ろ!なんて言うつもりはありません。
ただ知って欲しかったんです。
この映画はアシモフの信念を侮辱する、故人となった偉大なSF作家の信念を侮辱する映画であったということを。