「人のつながり」グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち うyさんの映画レビュー(感想・評価)
人のつながり
好きな映画を聞かれたら、迷わずこの作品を挙げる。それくらい「グッド・ウィル・ハンティング」が大好きだ。
主人公のウィルは天才的な頭脳を持ちながらも、幼少期の過酷な家庭環境のせいで心を閉ざし、悪友たちとつるんで騒ぐ日々を送っている。学ぶこと自体は好きなのに、不器用なため大学には進学せず、清掃員のアルバイトとして大学に潜り込んでいた。ある日、廊下に張り出された数学の難問を、いたずら半分で解いてしまう。
それを見つけた数学者ランボーは、ウィルの才能を見抜き、カウンセリングを受けさせながら一緒に数学の研究をすることを提案する。しかしウィルは心を頑なに閉ざし、紹介されるカウンセラーを片っ端からからかっては追い払ってしまう。そんな中、ランボーは旧友でカウンセラーのショーンをウィルに紹介する。
ショーンもまた、最愛の妻を亡くし、深い傷を抱えていた。初回のカウンセリングでウィルは彼の本や絵をバカにし、ショーンの怒りを買う。しかし、ショーンは冷静に考え、ウィルの未熟さを見抜くと、彼の挑発を気にしなくなる。そしてこう語りかける。
「君はミケランジェロのことを知っている。でも、それは本に書かれていることを読んだだけだろう?君自身のことなら聞きたい。君に関心があるからね。」
このシーンがとても好きだ。
僕も知識を得ることが好きだし、それを楽しんでいる。でも、本の中の世界が実際に目の前に広がる瞬間こそ、もっと楽しいと思う。だからこそ旅に出る。ガイドブックを読めば、旅先に何があるかは分かる。でも、それを自分の五感で体感することには、何にも代えがたい価値がある。
ウィルは次第にショーンに心を開き、 将来を考え始める。しかし、就職活動を進めるうちに、ふと立ち止まる。もし仕事に就けば、今のように悪友たちとバカをやる時間はなくなり、彼らと疎遠になってしまうかもしれない。それならば、一生現場仕事でも構わない、そう思っていた。
しかし、その考えを聞いた悪友のチャッキーは、こう言い放つ。
「20年後、おまえがまだここに住んでて、俺の家に来て、工事現場で働いてたらーー俺はおまえをぶっ殺してやる。脅しじゃない、本気だ。俺はいいんだ、クソみたいな仕事でも。でもおまえは違う。おまえは宝くじの当たり券を持ってるのに、それを換金する勇気がないだけだ。それを無駄にすることは、俺が許さない。」
ウィルの才能を心から信じ、その未来を大切に思うからこそ、彼は厳しい言葉を投げかけたのだ。こんな友人がいることは、どれだけ幸運なことだろう。
最近は、こうした言葉をかけてくれる人が少なくなったように思う。「嫌なら逃げてもいい」と、優しい言葉はあふれている。しかし、その言葉の先にある未来に、誰が責任を持ってくれるのだろうか。