グッド・ウィル・ハンティング 旅立ちのレビュー・感想・評価
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特異な才能を等身大の人物で描く。
◯作品全体
見始めてから2,30分くらいで「能力が見いだされて急に出世するんだけど浮足立った結果天狗になっちゃって孤独になる系の作品か~」と決めつけてしまったが、主人公・ウィルは浮足立つどころか自身が張った根を頑なに動かさない人物として描かれ、自分の予想したものとはまったく違う作品だった。もしも能力が見いだされてウィルが変わってしまう、という作品だとしたら『ボヘミアンラプソディー』とか『ロケットマン』なんかが頭にちらついてしまっていたけれど、ウィルの能力が人とのかかわりを拡げることだったりウィルの幼さや臆病を表すものとして存在していて、等身大のウィルを映すことに活かされていた。
ウィルの生い立ちは特殊だけれど、自分の心に踏み込まれたり裏切られることを恐れて壁を作ってしまう姿は個人的にとても共感する部分だった。記憶力が優れてるわけじゃない自分ですら、過去の失敗や人との関わりで傷ついたことは嫌でも覚えてる。それが特異な記憶力を持つウィルだとしたら、傷の深さは計り知れない。
自分を守るために相手に拒絶する態度をとってしまって、結果的に自身も相手も傷つけてしまう。気持ちと行動はうらはらだけど原理が明確だから、別の街で暮らそうと提案するガールフレンドに対するウィルの苛立ちだったり、「愛してない」の言葉に隠れた不安が切なく刺さった。ウィルの能力は特異なものだけれど、ウィル自身は臆病で寂しい人間として実直に描くからこそウィルの葛藤が心に響く。
ウィルに寄り添うショーンや親友との関係性も良かった。ショーンはウィルが作る壁に正面からぶつかって、正面から壁を壊す役割だった。カウンセラーとして一方的に諭す立場ではなく、ショーン自身の深い傷に触れられながらウィルと共に傷つき、理解していく姿にグッとくる。親友は正面からぶつかるのでなく並走しながら支えているような関係性が素晴らしかった。ウィルと過ごす時間を仲間同士で楽しんでいながら、しっかりとその終わりも提示する。ウィルと長い時間を過ごしてきたからこそ、ウィルを傷つけない寄り添い方を知っていて、それを実行する。押しつけがましくない優しさがとても良かった。ウィルが静かにいなくなるラストシーンは親友の望みどおりだけれど、寂しさの表情を隠しきれていない感じが本当に良い。
エンドロールは曇り空の中、先の見えない道路の先へオンボロ車が進んでいく。なんの変哲もない景色だけれど、等身大のウィルを描き切った本作にふさわしい景色だ。一方で心の壁を破たウィルには今まで感じたことのない視界が広がっている。そのコントラストがとても眩しく輝いて見えた。
過去のトラウマを持った天才青年が心理学者との出会いで心を開き新しい人生の一歩を踏み出すヒューマンドラマ映画
スラム育ちの天才的な頭脳を持つ青年は心に大きな傷を抱えている。人を信用することができず、愛し愛されることを知らない。
天才が故に知識だけを並べ、良いところばかりみせようと見栄を張り、嘘をつくプライドの高さ。嫌われることを恐れ、傷つく前に去ることで自分を守ろうとする。
誰もが羨む天才青年は、誰よりも人間らしく弱いところがある。
そんな青年を心理学者が心の交流をして
少しずつ心を開いていく。
心理描写が繊細に描かれ、感情に触れた繊細な内容で何度も涙した。
心理学者が妻との愛を語るシーンでは
本当の愛とは、を考えさせられる。
相手の欠点をも愛し、認め合うことができること。
どんなに才能があっても完璧な人間などはいない。
大事なのはお互いにとって完璧であれば良いということ。
そして、言葉の大切さ。
良くも悪くも、言葉が人に与える影響力は凄まじい。正論を突きつけることが全てではない。
自分が傷つくことを恐れるより相手を傷つけることのないよう考えて、助言や発言をしたい。
そんな強さを持ちたいと感じた。
本や歴史などの知識や情報が全てではないということも感じた。実際に自分の目で見て感じて沢山の経験をする。失敗も沢山する。
その経験こそがどんなに有名な本や偉大な歴史上の人物よりも
唯一無二の素晴らしい人生の物語なのだと感じた。みんな自分の人生の主人公なのである。
今の自分、弱いところも認めて許すこと。自分自身と向き合い知ること。
自分の道は自分で決め、生きたい人生を生きる。
失敗しても良い、失敗や嫌われることを恐れない強さをもつこと。
一歩進むためにほんの少しの勇気を持つこと。
そして、自分が望んで進んだ先には
絶対に後悔はないということ。
たくさんのことを感じ考えさせてくれる
とても奥深い映画。
大切な人を大切にするために
素晴らしき数学の世界へようこそ! 才能をどう使うかは自分次第
まず本作は脚本が凄く良く出来ているのですが、実は、これはあのマット・デイモンとベン・アフレックの2人が書いているのです。当時は2人とも無名ながら、本作でアカデミー賞の脚本賞を受賞して、この成功が今の彼らのキャリアに大きくつながっているのです。
当時の第70回アカデミー賞は、現時点でも最多受賞記録を持つ「タイタニック」があった年で、そんな中、「タイタニック」が14ノミネートに対し、本作は、作品賞、監督賞(ガス・ヴァン・サント)、主演男優賞(マット・デイモン)、助演男優賞(ロビン・ウィリアムズ)、助演女優賞など主要9部門でノミネートを果たしていたのです! そして脚本賞と共に、ロビン・ウィリアムズが初の助演男優賞を受賞しました。
本作の主人公ウィル・ハンティングは、MIT(マサチューセッツ工科大学)で清掃員をしたりして生計を立てる青年である一方で、100年に数人級の頭脳を持った人物として描かれています。本作のリアリティーの源泉には、ラマヌジャンという1900年頃のインドの数学者の存在があったりします(詳しく知りたい人は「奇蹟がくれた数式」という映画を!)。
マット・デイモンはハーバード大学にいた(中退)だけのことはあって、学問的なリサーチがしっかりしていて、主人公にリアリティーを巧みに与えているのです。
そして、そんなウィル・ハンティングを才能を見出し、その才能に惹かれ翻弄される「フィールズ賞」(いわば「数学のノーベル賞」)受賞者のランボー教授、そして、ランボー教授に頼まれてウィル・ハンティングを更生させようとする心理学者ショーンとのやり取りも深いものがあります。
なぜウィル・ハンティングは素直に能力を活かすことができないのか? その謎を追う過程において、周辺の人たちを巻き込み、思わぬ展開が続いていきます。
「エンディング以降のウィル・ハンティングはどのように生きていくのか」を想像するのも意味がありそうですし、本作には数々の名言もあります。
今この作品を見直して良かったな、と思えたのは、本作でアカデミー賞を受賞したロビン・ウィリアムズが、実社会においては、2014年に63歳で自殺してしまったのです。
当時は勝手に「パーキンソン病や、幻覚が見えたりする(レビー小体型)認知症に苦しんで亡くなってしまったのか」と記事を見て思っていましたが、ショーン(ロビン・ウィリアムズ)の
「そのことだけで私が君の気持ちをわかると思うか? 『オリバー・ツイスト』を読めば理解できるのか?」という言葉の通り、想像でしかないですし、「本当の気持ち」は誰にも解らないものなのかもしれませんね。
3月30日にCNNが、志村けんさんの訃報の際に「日本のロビン・ウィリアムズが亡くなった」と伝えていたので、「パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー」の際のロビン・ウィリアムズが被ってきたりと、さらに多くの感情が去来しました。
学問をモチーフにしながら、様々な人間関係や深層心理などを考えたりできる名作です!
元気を失ったあなたに観てほしい、心がほどける映画です。
今、自信や元気を失っている方、またはそうした方のそばにいる方に、ぜひ観てほしい作品です。
静かに寄り添い、心を温めてくれる映画だと思います。
天才的な頭脳を持ちながらも清掃員として働く青年ウィル・ハンティング。過去の傷から心を閉ざし、他人と関わることを避けて生きてきた彼は、ある日大学教授に才能を見出され、セラピストのショーンと出会います。彼との対話を通じて、ウィルは自分の過去や孤独と向き合い、愛と人生の意味を見出していく――心の再生を描いた感動のヒューマンドラマです。
ウィルの生い立ちは非常に苦しいものですが、ショーンは似たような経験を持ちながらも、「分かったような態度」を決して取りません。
その人の苦しみは、その人にしか分からない――私も深く共感しました。
信頼関係を築くまで、ただそばに居続け、他愛もない会話を重ね、ウィルの心に固く結ばれた紐を少しずつ解いていくショーンの姿は、痛みを知る人間だからこそできたのだと思います。
そして「君は悪くない」というショーンの言葉には、涙腺が崩壊しました。
ショーンとの関係を通じて、ウィル自身も恋人や友人との関係の中で少しずつ変化を見せていきます。そしてまたショーンも、ウィルとの関わりの中で、傷ついた心を再生している様子も窺えます。彼らの再生の過程を見守ることも、この映画の大きな魅力のひとつです。
若きマット・デイモンの演技、そして脚本の完成度が本当に素晴らしい。心に深く残る名作です。
たとえ違う道でも、共に立って行けるのが、本当の友達だ。
コレは、天の道を往き総てを司る男が、祖母の言葉ではなく、自身で紡いだ言葉です。
親友を騙る嫌なヤツなら、
自分より上へと昇れる者の邪魔をして、
オレ達?トモダチだろ?とか云って、自分と同じ場所に留まる様に促す筈です。
然し、主人公・ウィルの親友チャッキーは漢です。
「20年後もこんな所でオレ達と酔っ払って管を巻いてたら、オレはお前を絶対許さない。お前は、ココから抜け出せるだけの才能が有るのに!宝籤が当たってるって分かっているのに、現金化出来ない腰抜けなんざお前が自分自身を許せても俺が許さない。お前は羽ばたけ!」
…みたいな熱い言葉を真剣に云えるってのはなかなかですよ。
天才過ぎて…親から気味悪がられて見放され捨てられて、補助金目当ての里親を虐待付きで、たらい回し。
一般にIQが10違うとまるで会話が成り立たないそうですが、
スーパー天才青年、主人公ウィルが見ている世界は、さぞかし辛いものだったでしょう。
自分なら呼吸の様に«当たり前»として分かる事が、周りには分からないし、理解しようともしないのだから。
驚いた…
心を閉ざし 港に停泊したままの船のようになっていた 才能豊かな若者が碇を上げて人生という大海原に出航してゆくまでの物語
とてもいい映画です。私はこれを生涯のお気に入りリストの中に入れています。複数回 鑑賞していますが、いつも同じ箇所で目が潤んできます(と、書きましたが、鑑賞を重ねるたびに目の潤む箇所がじわじわと増えてきているようにも感じています)。リバイバル上映されるということでしたので、いそいそと映画館に出かけて観てきました。
たぶん、私はこの映画でマット•デイモンとベン•アフレックの名前を知ったように思います。おそらく監督のガス•ヴァン•サントの名も。この映画は1997年作品で、あのジェームズ•キャメロン監督の大作『タイタニック』と同じ年で、アカデミー賞を始めとする賞レースでバッティングしてしまって獲れる範囲がかなり狭まったにもかかわらず、それをかいくぐってアカデミー賞で脚本賞(なんと、マット•デイモンとベン•アフレックの共同脚本!)、助演男優賞(ロビン•ウィリアムズ)の2部門でオスカーを獲っています。個人的な好みで恐縮ですが、私は『タイタニック』よりこの『グッド•ウィル•ハンティング 旅立ち』のほうがはるかに好きです。『タイタニック』も複数回 鑑賞してそれなりに感動してきましたが、なんだかジェームズ•キャメロンが主人公ふたりのラブ•ストーリーやタイタニック号の最期を見せ過ぎてしまっているような気がして…… それに比べてこちらのほうには、文学作品でいう「行間を読ませる」というか、鑑賞者に想像力を働かせる余地を残しておく優しさみたいなものがあって、それが余韻のある心地よい鑑賞後感に繋がっているのかなとも思っています。
さて、この物語のキモは、共同脚本を書いたふたり、マット•デイモンが演じる 両親を失い里親に虐待されて育ったが、天才的な頭脳を持つ ボストンのスラム出身のウィルと彼の仕事仲間であり遊び仲間でもある ベン•アフレック演じるチャッキーの友情物語です。また、もうひとつのキモとしては、心を閉ざして偽悪的な言動を繰り返すウィルと、限られたカウンセリングの時間の中で、そんな彼に寄り添いながら彼の心を解きほぐしてゆく 大学で心理学を教えながら心理カウンセラーをしているショーン(演: ロビン•ウィリアムズ)との心の交流の物語です。冒頭に書いた私の目が潤む箇所というのは、ウィル+チャッキーのシーンか、ウィル+ショーンのシーンになります。
まあでも鑑賞を重ねるうちに、もうひとつの登場人物同士の関係が気になるようになってきました。それはフィールズ賞受賞者でMITで数学を教えているランボー教授(演: ステラン•スカルスガルド)とショーンの関係です。このふたりは学生時代からの友人のようなのですが、何やら過去に確執めいたものがあったような雰囲気が漂っています。ウィルの数学の才能を発見したランボー教授は彼をなんとか更生させようと何人かのカウンセラーにカウンセリングをお願いするのですが、誰もうまくいきません。結局、ランボーは最後の切り札みたいな感じでショーンにお願いし、ショーンのほうは自分のところに来る前に何人かに依頼していたことを指摘しつつも引き受けます。ふたりはウィルに対する方針について対立したりもしますが、結局は和解します。最初に観たころはやはりウィルとチャッキーの友情物語に涙していたのですが(もちろん今でもそうなんですけど)、私が年をとってきたこともあって、ウィルの出現によって新たなステージに入ったように感じられる彼らの関係を見るのも興味深いところではあります。
いずれにせよ、生まれてこのかた、ボストンを離れたことがなかったウィルは(それが書物で得た知識ばかりで自分の言葉で語っていないという、ショーンに指摘された点にも繋がっているのですが)、友人や師を残して恋人スカイラー(演: ミニー•ドライバー)のいるカリフォルニアに旅立ってゆきます。チャッキーを始めとする仲のよかった3人組にプレゼントされたオンボロの車を駆って。さて、エンドロールからの余韻に浸りながら、ウィルのその後の人生でも想像してみますか。
真の友情とは
本作はマット・デイモン演じる天才的な頭脳をもつウィルと、ロビン・ウィリアムズ演じるセラピストのショーンのやり取りが中心だが、私はベン・アフレック演じるウィルの友人チャッキーとのやり取りに真の友情を感じた。
ウィルが俺はずっとこの工事現場でお前と仕事をしてていいというが、チャッキーはお前には能力がある、それを活かさないのは宝くじの当たりくじを持っていながら換金しないのと同じだ。お前が良くてもそんな事は俺が許さないと言い背中を押す。だがチャッキーはある朝いつも通りウィルの家に迎えに行っていなくなっているのが怖いとの本音がある。だが本当にそうなった時に彼は悲しそうに、でも笑っていた。
本当の友情は足を引っ張り嫉み同じ場所に留めておくのではなく、変わろうとする友人の背中を押す事なのだ。
グッド「ウィル ハンティング」? 「グッド ウィル」ハンティング?
主人公ウィルハンティングは 幼少期のあれこれで心を閉ざしてしまい、天賦の才能を眠らせたまま。その心の澱を取り除き 数学者として世に出してやろう、と周囲の人があくせく。ただ 偽悪家の青年は なかなか心を開かない。最終的に 善良なる「ウィルハンティング」となりまして、めでたしめでたし・・・という見方は 的外れではないでしょう。
もう一つ、本当に主人公の閉ざされた心を解き放とう、と 周りの人間は汗をかくが そういう一見しての「善意=グッドウィル」が 患者である彼の救いになっているのかどうか・・・それ、本当に善意からですか?彼にためにだけの行動ですか?は 実際のところ判断も難しい気もします。
善意のあり方、よかれと思っての行動が 本当に正しいものかどうか。映画タイトルには【善意のあり方を追い求めて】という意味も込められていると思います。
余談ですが。
大好きな役者ロビンウィリアムズ・・・最期はレビー小体型認知症で自ら斃れますが、この映画や【レナードの朝】【パッチ・アダムズ】などの撮影現場をどんな想いで 薄れゆく記憶の中から拾い集めてたか、を考えると 胸がつまります。
コーヒーは月並みすぎる
リバイバル上映で鑑賞してきました🎬
見るのは2回目です😀
ショーンにはロビン・ウィリアムズ🙂
普段は温厚なのですが、亡き妻への心ない言葉には怒りをあらわにする男性。
何人ものセラピストがさじを投げたウィルに辛抱強く付き合い、閉ざされた彼の心を溶かしてゆく。
ウィリアムズの優しさを称えた目で語る演技は、素晴らしいですね😀
ウィルにはマット・デイモン🙂
抜群の数学の才能を持ちながら、素行が悪い青年です。
さらに口が物凄い達者で、雑学王みたいなところがあり、何人ものセラピストをコケにして退散させる。
しかしショーンだけは違うのです。
彼の過去を考えれば、やさぐれるのも無理もないのかもしれません😔
それだけに、ショーンとウィルが衝突しながらも心理的な距離を縮めていく過程は見応えがあります。
ヒロインのスカイラーにはミニー・ドライヴァー🙂
私も人のこと言えませんが、特別美人ではないものの笑い方がなかなか爽快で、魅力的です😀
中盤過ぎのウィルとの口論シーンは、2人の感情が画面越しにしっかり伝わるリアルさでした👍
ウィルの親友チャッキーにはベン・アフレック🙂
私にはどの役でも彼にしか見えません😅
しかし、後半にウィルに発破をかけるシーンは2人の絆を感じさせます。
ケイシー・アフレックも、ウィルとつるむ四人組の一人のモーガンで出てましたね😀
97年公開なので、今と声が違いますな🤔
人間が望む幸せや、才能を持つものはどう生きるべきなのか、鑑賞後は考えをめぐらせました。
私としては、愛を忘れずに生きれればいいと思います😁
やはりヒューマンドラマの傑作にふさわしい1本ですね🎬
そして自ら命を絶ってしまったロビン・ウィリアムズのご冥福をお祈りします。
【99.4】グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち 映画レビュー
作品レビュー:『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)
作品の完成度
映画『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』は、その脚本、演技、そして感動的な物語の融合によって、普遍的なテーマを深く掘り下げた傑作。一見すると天才的な才能を持つ若者の成長物語に過ぎないが、その根底には、人間が抱えるトラウマ、信頼、そして自己受容という重層的なテーマが織り込まれている。脚本家のマット・デイモンとベン・アフレックが描いたウィルの内面の葛藤は、観客自身の心の傷と向き合うきっかけを与える。物語の展開は、登場人物たちの感情の機微を丁寧に描き出し、特にセラピストとの対話シーンは、映画全体に緊張感と感動をもたらす。アカデミー賞脚本賞を受賞したことからも、その完成度の高さが証明されており、単なるエンターテイメントに留まらない芸術性を持つ。
監督・演出・編集
監督ガス・ヴァン・サントによる演出は、ヒューマンドラマとしての繊細さと、時折見せるドキュメンタリーのような生々しさを両立させている。特に、ウィルとショーンの対話シーンでは、静寂と間を巧みに利用し、言葉にできない感情の揺れ動きを表現。ボストンという街の風情を捉えた映像は、物語にリアリティを付与する。編集は、物語のテンポを損なうことなく、登場人物の感情の起伏を強調する構成。過去のトラウマをフラッシュバックとして挿入する手法は、ウィルの心の傷を視覚的に表現し、観客の共感を誘う。全体の演出は、決して派手ではないが、細部にまでこだわった丁寧な作り込みが光る。
キャスティング・役者の演技
• マット・デイモン(ウィル・ハンティング役)
ハーバード大学の清掃員として働く天才的な頭脳を持つ青年。自身の才能に蓋をし、過去のトラウマから心を閉ざしている複雑なキャラクター。デイモンの演技は、内面の葛藤を静かに、しかし強烈に表現。知的なセリフ回しだけでなく、眼差しや仕草一つ一つにウィルの孤独や恐怖がにじみ出ていた。自ら脚本を執筆したことで、役柄への深い理解とシンクロニシティが生まれ、単なる演技を超えた真実味を帯びている。若き日の葛藤と希望を見事に演じ切り、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたその演技は、まさにキャリアの転機となる名演。
• ロビン・ウィリアムズ(ショーン・マグワイア役)
ウィルの才能を見抜き、心の扉を開かせようとするセラピスト。自身の過去の経験から、ウィルの孤独に寄り添う温かさと、時に厳しさを持つ役柄。ウィリアムズは、コメディ俳優としてのイメージを覆すシリアスな演技で、深い人間性を表現。ウィルとの対話シーンでの繊細な感情表現は、観客の心を深く揺さぶる。特に「It's not your fault.」と繰り返すシーンは、映画史に残る名場面。この演技によってアカデミー賞助演男優賞を受賞し、彼の俳優としての幅広さと深さを世界に知らしめた。
• ベン・アフレック(チャッキー・サリヴァン役)
ウィルの幼馴染で、彼の才能を信じ、自立を促す親友。ウィルとは対照的に、学歴はないが真っ直ぐな心を持つキャラクター。アフレックは、親友への強い愛情と、時に見せる不器用さを自然体で演じ切っている。ウィルに「お前が毎日俺の家の前にいなくなってくれるのを願っている」と語るシーンは、友情の本質を突いた名台詞であり、アフレックの演技がその感動を増幅させた。共同脚本家としての視点も、キャラクターに深みを与えている。
• ミニー・ドライヴァー(スカイラー役)
ウィルの才能を愛し、彼の心の壁を壊そうとする恋人。ハーバード大学の学生であり、ウィルとは異なる世界に生きているが、純粋に彼を想う。ドライヴァーは、ウィルへの愛情と、彼の過去への戸惑いを繊細に表現。ウィルとの関係性の進展を通じて、物語にロマンティックな要素を加える重要な役割を担っている。
脚本・ストーリー
脚本はマット・デイモンとベン・アフレックが執筆し、アカデミー賞脚本賞を受賞。数学の天才が、才能を活かせずにいるという設定から、彼の心の奥底にあるトラウマを紐解いていく構成。物語は、友情、恋愛、そして師弟関係という3つの軸で展開され、それぞれの関係性がウィルの内面に変化をもたらす。特に、ウィルとショーンのセラピーセッションは、哲学的で示唆に富んだ会話が多く、単なるセリフ以上の深みを持つ。物語のクライマックスは、ウィルが自分の人生を自分で選択するというシンプルながらも感動的な結末。これは、才能だけでなく、人間としての成長を描いていることを示唆している。
映像・美術・衣装
映像は、ボストンの街並みをリアルに描き出し、物語に説得力を与えている。ハーバード大学の荘厳な建築物と、ウィルが住む労働者階級の街の対比が、彼の抱えるジレンマを視覚的に表現。美術と衣装は、登場人物の生活感を忠実に再現しており、特にウィルの質素な衣装や住まいは、彼の内面的な閉鎖性を象徴している。派手さはないが、物語の背景を丁寧に作り込んでいる。
音楽
音楽は、ダニー・エルフマンが作曲。しかし、この作品のサウンドトラックで最も印象的なのは、シンガーソングライターのエリオット・スミスが提供した楽曲群。彼の独特の哀愁を帯びたアコースティックギターの音色と、内省的な歌詞は、ウィルの孤独な心象風景と見事にシンクロしている。主題歌の「Miss Misery」は、映画のエンディングで流れ、物語の余韻をさらに深める。この曲はアカデミー賞歌曲賞にノミネートされた。
受賞歴
• アカデミー賞 脚本賞(マット・デイモン、ベン・アフレック)
• アカデミー賞 助演男優賞(ロビン・ウィリアムズ)
• アカデミー賞 作品賞、監督賞、主演男優賞(マット・デイモン)、助演女優賞(ミニー・ドライヴァー)、作曲賞、歌曲賞(「Miss Misery」)にノミネート。
作品
監督 ガス・バン・サント 139×0.715 99.4
編集
主演 マット・デイモンS10×3
助演 ロビン・ウィリアムズ S10
脚本・ストーリー ベン・アフレック
マット・デイモン
S10×7
撮影・映像 ジャン=イブ・エスコフィエ S10
美術・衣装 美術
メリッサ・スチュワート
衣装
ベアトリス・アルナ・パーストル A9
音楽 ダニー・エルフマン
主題歌
エリオット・スミス
S10
自分の殻を打ち破る
若き日のマット・デイモンの繊細な眼差しがたまらない
ずっと気になっていた映画。アンコール上映に飛びつきました。
2時間超えの対策ですが、全く長さを感じさせません。
登場人物全員がちょっと出来すぎに良い人なのがおとぎ話的ではありますがそれもまた一興。
見いだされた不遇の天才がテーマかと思っていましたがちょっと違っていました。
若者も、昔若者だった人たちも、それぞれに望んだものがあり、当然全てを手に入れられる訳もなく、なんとか現状と折り合いをつけている。
ラスト近くのベン・アフレックとマット・デイモンが車の前で交わす会話には涙が溢れます。
いかに辛くても自分のしたいこと、行きたい道を迷わず選んだスカイラーの格好いい事!
それが触媒となったように、終盤は様々な人々の人生が再び転がり始めます。
君のしたいことは何だ
君は少しも悪くない
ラストの選択は、長い煩悶を観てきた観客に爽快なカタルシスを感じさせます。
ところで、ジェリーの助手のトム。
彼がなりたかったのは何なのだろう!?
ないものねだり
チャッキー、いい友達だ マットデイモンが制作もしていることは知らな...
チャッキー、いい友達だ
マットデイモンが制作もしていることは知らなかった
もしあの頃見ていたら完全スルーしそうな、
その後身につけた知識がいくつもあった
あの頃じゃなく今これを初めて見て、
良かったと思う
ロビンウィリアムズもいなくなっちゃったし、
そんな意味でも感慨深かった
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