ゴッド・ディーバ : インタビュー
Part3:リンダ・アルディ、「主人公ジル」を語る
エンキ・ビラルのコミックに描かれた青い髪の美女ジルそっくりのヒロインを演じたリンダ・アルディは元ミス・フランス。監督が彼女をキャスティングしたのは、彼女がコミック版のジルそっくりだったからだという。
「それは監督に聞いたわ。たしかに顔や身体が似ているからというのはあったんでしょうね。でも、それだけじゃなくて、女優としての素質も評価されたんだと思うけど。映画のジルは容姿は同じだけど、設定は違うの。コミック版のジルはジャーナリストだけど、映画版では最初は突然変異体で少しずつ人間になっていくという存在なのよ」
ビラルはジルという役について細かい説明はしなかったそうだ。
「もともと私を選んだのは、私の中にジルを体現しているような部分があると感じたからじゃないかしら。映画のジルは、地上に出現したばかりで、過去もない。どこから来たのか、なぜここにいるのかも分からない。その謎が、彼女が愛を発見することによって少しずつ明らかになっていく。そういう物語だから、私なりの解釈をさせてくれたのかもしれないわ。監督は、彼女が内面に動物的な抑圧を抱えているということも説明してくれたけど、それはシナリオを読めばわかることだったし。それと、私がまだそんなに映画経験がなくて、女優としてはある種の処女性を保っているということが、この役を演じるのには適していたかもしれないと思うわ。ジルは常に純真さを失わない存在だから」
さて、現場のエンキ・ビラルは、どんな雰囲気だったのだろう?
「彼は撮影現場でも、とても落ち着いていて静かな人。俳優にもスタッフにも、とても人間的に接するやさしい人よ。監督にはいろんなタイプがあって、中には俳優との間に上下関係を築いて、その関係を使って俳優に圧力をかけて演技を引き出そうとする監督もいるけど、ビラルにはそういうところは全然ないの。彼は俳優をとても大切に保護するようにして演出したわ。俳優たちのアイデアにも耳を傾けてくれるし。ジルが生の魚や生肉を大量に食べるシーンがあるでしょ。あれは代用食じゃなくて、本物を食べてるんだけど、生のアンコウを食べるときにホイップクリームをかけるのは、私のアイデアなのよ。けっこうイケル味だったわよ(笑)」
ちなみに、映画版のジルには、エジプト神話の神ホルスに何度もレイプされる場面があり、演技が難しかったと思われるのだが……。
「あのシーンはどうやって演技の準備をしたのかと、よく訊ねられるんだけど、演技として難しいシーンではなかったわ。むしろ準備しないのが準備。直感的に演じたの。それに、この映画の大部分は設定も出来事も日常生活とはかけ離れているけど、あのシーンはいちばん現実に近いシーンでしょ(笑)?」