ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男

劇場公開日:2025年9月26日

解説・あらすじ

「ザ・ビートルズ」を世界的な成功に導いたマネージャー、ブライアン・エプスタインの実話を描いた伝記ドラマ。マネージャーとして辣腕を振るう一方で、業務過多や自身がゲイであることによる偏見などに苦しみ、やがて薬物に依存するようになっていく姿を通して、エプスタインの短くも濃厚な半生と、世界的バンドの知られざる内幕を描き出す。

1959年、イギリスのリバプール。ユダヤ系家庭に生まれ育ったブライアン・エプスタインは、家業の家具店で忙しい毎日を送っていた。熱心に働くブライアンのおかげで家具店は繁盛し、若者文化の広がりを見越して新たに始めたレコードショップも評判になる。1961年11月、ドイツ・ハンブルクで発売された1枚のレコードが話題を集めていると知ったブライアンは、そのバンドが出演する地下クラブ「キャヴァーン」を訪れる。その4人組バンドは、地元リバプールで結成された、無名に近い20代そこそこの若者たちだった。そのサウンドに魅了されたブライアンは、彼らを世に出したいと考え、家業の傍らバンドのマネージメントを手がけることを決意。彼らの初代マネージャーから権利を譲り受けると、早速メジャーデビューのためのレーベルを探し始めるが……。

ブライアン役は「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」などに出演した新進俳優ジェイコブ・フォーチュン=ロイド。ブライアンを支える両親役で、エディ・マーサンとエミリー・ワトソンという名優が脇を固める。

2024年製作/112分/PG12/イギリス
原題または英題:Midas Man
配給:ロングライド
劇場公開日:2025年9月26日

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映画レビュー

3.5 ビートルズの自作曲を使えないわりには健闘

2025年10月4日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

楽しい

知的

ビートルズのオリジナル曲を映像作品などで二次使用したくても、手続きと使用料の両面でハードルが高くなかなか実現しないと言われている。製作費が潤沢とは思えない「ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男」でも残念ながらそれは同じ。ただし映画で描かれるデビュー前の頃から活動期前半までは、ロックンロールやR&Bの既成曲をカバーしてライブで演奏したりアルバム用にスタジオ収録していた。劇中のバンドの演奏シーンでも、そうしたカバー曲のパフォーマンスを描くことで、有名なオリジナル曲が不在の物足りなさを埋め合わせている。

エプスタインがキャバーンで初めてビートルズと衝撃の出会いをするシーンでは「サム・アザー・ガイ」(オリジナル曲:米国人歌手のリッチー・バレット)、エプスタインによって洗練された4人が再度キャバーンで演奏するのは「プリーズ・ミスター・ポストマン」(同:女性R&Bコーラスグループのマーヴェレッツ)、アビーロード・スタジオでのオーディションでは「ベサメ・ムーチョ」(1940年にメキシコ人音楽家コンスエロ・ベラスケスが作詞作曲、のちに幅広いジャンルでカバーされたスタンダード曲)といった具合。

英王室主催のチャリティーコンサートでジョン・レノンが言い放った有名なジョークも再現されている。ただし史実ではあの「高い席の方は宝石を鳴らして」の後に演奏したのは「ツイスト・アンド・シャウト」で、これもカバー曲だから問題なく再現できたはずなのに、本作では「マネー」に置き換えられたのがファンとしては少々残念。ジョンが強烈な皮肉でばっちり決めたのに、その後に「俺が欲しいのは金」と歌う同曲が続くのはくどいし下品だなと。

オリジナル曲抜きでビートルズがメジャーになっていく様子を工夫して描いたことに感心するけれど、たとえばエプスタインがメンバーらに「『抱きしめたい』が米国で1位になった」と報告して喜び合う場面など、やはりその曲が流れないさびしさはある。彼らの曲のタイトルを聞いただけで脳内再生できるファンなら問題ないが、そうでないと不満に感じるかもしれない。

エプスタインが主人公の映画なのに、ビートルズ曲の話ばかりになってしまって申し訳ない、ファンなもので。彼らの音楽にはまった十代の頃、関連本も読みあさったのでエプスタインのことも一通り知っているつもりだったが、ビートルズ以外のアーティストの発掘と売り出しも手がけていたことや、私生活においてゲイのセクシュアリティーで悩みトラブルも招いたことなどはほぼ忘れていた(イングランドでは1967年に法改正されるまで同性同士の性行為は違法だった)。

そんなことも考え合わせると、単にビートルズを見出し、見た目を洗練させて、根気強く売り込んで成功に導いた功績だけでなく、エプスタインの人間性にまで迫ろうとした本作は、満足のいく出来とまではいかないにせよ、制約もある中で健闘したのではないかと思う。

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高森郁哉

4.0 「心に希望を持って」

2025年10月14日
iPhoneアプリから投稿

知的

今年303本目。

シネマート新宿で。
心に希望を持って、君は一人で生きてるんじゃない何ていい歌詞。初期のビートルズの曲満載。権利で使えないと思うので俳優さんの歌も良い。

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ヨッシー

4.0 運とタイミングと感性

2025年10月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

138本目。
上手く噛み合ったと思う。
育った環境、時代の中で苦労したとは思うけど、亡くなった後に、ゲイだった事をあそこまで描くのは、複雑な気持ちにはなる。

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ひで

4.5 All You Need Is Love(愛こそはすべて)

2025年10月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

幸せ

人は何のために生まれてくるのか。そんなことを考えさせてくれるビートルズのマネージャーの話だった。

ビートルズをキャバンクラブでブライアンが発見し、マネージャーになる。ビートルズの版権が使えなくてもこのあたりは、レッドベリーをパクったスキッフルからの文脈で誠実に描く。ビートルズが初期はチャックベリーなどブルース起点の黒人音楽のカバーからスタートしたことは知っていたから納得。今やってるツェッペリンと同じ感じ。ここがわかるから、その後のアメリカでの活躍の歓喜が伝わる。

中盤からこの映画の描きたかったことが、徐々に姿を現す。このあたりから、ビートルズの音楽映画を期待していた観客は何を見せられてるかわからなくなるのもわかる。特にビートルズの版権が使えないからなおさらだと思う。

ラスト3分。とんでもない経験をした。スクリーンで鳴ってる劇伴と違う、ビートルズのあの曲が脳内で高らかに再生される。これが幻聴か?違う。確かに聴こえる「All You Need Is Love(愛こそはすべて)」。涙が止まらない。

いろいろな問題を抱えながらみんなに愛されたブライアンの生き様が胸にせまる良作。映画好きの方なら、きっと「愛こそはすべて」と感じていただけるのではないか。

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minavo