SEX

劇場公開日:2025年9月5日

解説・あらすじ

ベストセラー作家や図書館司書という経歴を持つノルウェーのダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督が、ノルウェーの首都オスロを舞台に「恋」「愛」「性」にまつわる3つの風景を描くトリロジーの第1作。妻子のいる2人の男性が、とある体験から「男らしさ」について再考していく姿を、コメディタッチで描き出す。

煙突掃除人として働く、妻子持ちの2人の男。ひとりは客先の男性との思いがけないセックスで新しい刺激を覚えるが、悪びれることなく妻にその体験を話したことで夫婦仲がこじれてしまう。もうひとりは、デビッド・ボウイに女性として意識される夢を見たことから、自分という人格が他人の視線によりどのように形成されているのか気になりはじめる。それぞれ良き父、良き夫として過ごしてきた彼らは、自らの「男らしさ」やアイデンティティと向き合っていくことになる。

2024年・第74回ベルリン国際映画祭でエキュメニカル審査員賞など3部門を受賞。日本では25年9月、特集上映「オスロ、3つの愛の風景」にて、トリロジーの「LOVE」「DREAMS」とともに劇場公開。

2024年製作/118分/G/ノルウェー
原題または英題:Sex
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2025年9月5日

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映画レビュー

4.0 煙突掃除人は幸福のシンボル🍀

2025年9月6日
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鑑賞方法:映画館

笑える

幸せ

斬新

ハウゲルード監督の三部作、最初に見たのが「SEX」。いきなりなタイトルで少し緊張したが楽しくて笑える映画でもあった。みんなとにかくよく喋る。イタリア人みたいに人の話に割り込む方式でなく、じっくり一人が語りその次に相手が語る、順番ちゃんと守ります方式。北ヨーロッパだ。

煙突掃除人、ときたら、四つ葉のクローバー、てんとう虫、馬の蹄鉄、豚さん、1ペニヒ硬貨と並んで幸運をもたらす御守りアイテムだ。煙突掃除人は黒い帽子に始まって黒い作業服に黒い靴、全身真っ黒で針金みたいな道具を背中にしょっている男性だ(映画では女性もいた)。この映画は二人の煙突掃除人の会話から始まる。

金髪の彼は、デヴィッド・ボウイに性的な眼差しで見つめられる夢の話をする。人の夢の話ほど退屈なものないが相手はジッと聞いている。金髪男は今までそんな風に男から見られることも願望もなかった。ところが夢の中の自分は快感を覚えた。映るのはひたすら話す彼の顔だけなので、ジッと聞いているのが誰なのか観客はわからない。ボウイの話が終わって相手が映ったと思ったら、その男は「俺は昨日、男とセックスしたんだ」とあっけらかんと言う。この「あっけらかん」は可笑しいが後に大変な状況を引き起こす。同僚で友人同士の二人にはそれぞれ妻がいて子どもがいる中年男だ。男と生まれて初めてセックスをしたという茶髪男は気持ちよかったらしい。妻に対して罪悪感はなく自分に対してショックを受けることもなくこれからも男とセックスしようとは思っていない。自然ななりゆきで、異常でも有り得ないことでもなかった。性自認とか性志向なんて言葉は脳裏を掠めもしなかった。ただ人間は社会的存在だから大変だ。妻にとっては夫に「浮気され」「自分にとって繊細で大切なことが蔑ろにされた」のだ。妻は混乱する。そしてこの夫婦も本当によく話す。声を荒げることなく沢山話す。妻に細かく質問されて答えるうちに、夫も混乱して訳がわからなくなりドツボにはまる。妻泣く、夫も泣く、寝室別になる、妻は友だちに相談することにする。

一方の金髪男は、ボウイの夢のせいで自分の声がかすれて音程が変わったのだと悩みカウンセリングを受ける。隣には13才の息子(この年齢で自分の将来の年金を心配したり、パパのコーラス発表会のための衣装をミシンで縫う。すごく可愛い!)が居る。緊張をほぐすとのことで、舌をタオルで挟まれ引っ張られる。カウンセラー(女性)はハンナ・アーレントの本を紹介し読んでみるといいと言って貸す。ここでアーレントか~!とシュールな感じだが茶髪男同様、社会との関わりを問われている気がする。社会や公共といったものから役割をあてがわれ、その通りに生きていけば男性は楽だ。その楽ちんなマッチョ世界の裏には深くて暗い無意識世界がドーンと構えている。知らなかった世界にちょっと触れた金髪男と茶髪男、似たような経験をして互いに共感しあって、これからもたくさん色んなことを話すんだろう。笑えて考えて映像がユニークで面白い映画だった!

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