「激怒(fury)の赤がやってくる」クリスティーン 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
激怒(fury)の赤がやってくる
久々に、勝手にスティーヴン・キング原作特集その16!
今回は怨念の宿った車が巻き起こす恐怖を描いた
ティーンホラー『クリスティーン』を紹介。
内気で暗い高校生アーニーは、ある日目にした車に心を奪われた。
廃車同然の状態で道端に放置されていた、
真っ赤なボディの ’58年型プリマス・フューリー(fury)。
車の持ち主いわく、名前は“クリスティーン”。
自動車の整備だけには自信のあったアーニーは、
持ち主から“彼女”を250ドルで購入する。
何かに取り憑かれたかのように“彼女”の整備に
打ち込むアーニー。その日を境に、気弱だった
アーニーは段々と別人のように容姿を変え、
同時に傲慢な人間へと変わっていく。
アーニーの唯一の親友デニスはそんな彼を
心配するが、そんな折、かつてアーニーを
いじめていた不良の1人が何者かの車に
轢き殺されるという事件が起こる――。
...
特筆すべきは “クリスティーン”。
車については全く興味のない自分でも、艶やかな深紅の
ボディのクリスティーンはなかなかにステキな車に見える。
だが彼女は意思を持ち、自分の気に入らない
人間を容赦無く抹殺していく恐ろしい女。
車体をメチャクチャにグシャグシャに歪めながら、
狙った獲物を執拗に追う様子が怖い怖い。
無表情で、何を考えているのか分からないのに、
“殺意”だけは明確に伝わるというこの怖さ。
(スピルバーグ監督の『激突!』に登場する
トラックをイメージしていただきたい)
しかも、壊れても壊れても翌日にはきれいに元通り。
中盤、いよいよ本性を露にするシーンのSFXは
CG全盛の今見てもリアルでスゴい。どうやって
撮影したんだろうと首を傾げてしまう。
そうそう、気弱な男から自信に満ちた男へ変貌する
アーニーを演じたキース・ゴードンの演技もグッドだ。
...
原作との差異。
原作では、“クリスティーン”の持ち主の怨念が車と
アーニーに取り憑いたような描写になっているが、
映画での“クリスティーン”は生まれついての
邪悪な存在として描かれている感じ。
話の説明としてはその方が簡潔だが、アーニーが
変貌していく理由としては弱く感じてしまう。
だが、結局 “クリスティーン”が何者だったのか、
映画版では最後まで明確な答えが出ない。
“クリスティーン”を単純に、嫉妬に狂った女のように
描いていれば陳腐な話になってしまっていただろうが、
前述通り、彼女は“殺意” を持っていること意外は殆ど不明。
そこに『得体が知れない』という不気味さがある。
さすがはジョン・カーペンター大先生。
ただ、アーニーと友人デニスとの友情を描いた
ドラマが切なく感動的だった原作と比べると、
映画版での2人のドラマの結末は素っ気ない。
アーニーの恋人リーとの関係や、クライマックス
の展開もかなり急ぎ足で、そこはやはり残念な点。
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なので映画版は、
“クリスティーン”の暴れっぷり壊れっぷり、そしてアーニー役
キース・ゴードンの演技等を中心に楽しめば良いかと。
ド派手な爆破シーンやクライマックスも見応え十分。
静かに不気味に終わるラストカットにもニヤリ。
騒々しいだけの演出に終始するB級ホラーとは異なる、
一定以上の出来のホラー映画になっている。
<了> ※2014.05初投稿
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余談:
ホラー映画というとティーンエイジャーが
色々と災難に遭う映画が多いワケだが、
実はキング作品でティーンエイジャーが
主人公になる例は案外少ない。パッと浮かぶ所では
『死のロングウォーク』『ハイスクール・パニック』
『ゴールデン・ボーイ』『キャリー』くらいか。
だが、どれもティーンホラーの定石に
ハマらないパワフルで面白い作品ばかりだ。
キングは作家として成功する前は高校で英語教師をして
いたそうで、その辺りの経験を活かしているのかも。
ゴキです。毎回コメント返し、ありがとうございます。
>『ノロイ』や『裏ホラー』
ご紹介ありがとうございます!なんとかVODを探してみます(汗)
「クリスティーン」については、「ザ・カー」を見てましたから、
残念ながらそれほど斬新さを感じることはなかったです。
車が「女」だという設定は面白かった(怖かった)ですね。
>ティーンエイジャーが主人公になる例
「スタンド・バイ・ミー」に「IT」もそうですね。
ジョン・カーペンターも、、、懐かしいですなぁ(笑)
私の中で一番残っているのは「スターマン/愛・宇宙はるかに」
異常に感情移入してしまって、ウルウルになった映画です。
今週は目標3本です!(笑)
「ノア 約束の舟」、「ヒックとドラゴン2」
そして「7500」清水崇監督です!