ネタバレ! クリックして本文を読む
砂時計、薔薇の花瓶、赤ワイン、金色の腕時計、マティーニ…全てが割れていく
シングルマザーのバイオレットはマッチングアプリで知り合った男性と初デート。
4年ぶりのデートなのだからドキドキだろう。選ぶ服がダサすぎてびっくりした。妹ちゃんグッジョブ!
デート場所は高層ビルのレストラン。
みるからに高級だし、そもそも彼女の家はとても豪華。
楕円が続く廊下を抜ければ煌めく夜景の見える優雅で素敵な場所。
彼を待つ間、数回のドロップアプリが入るが拒否しても何度もやってくる。ドロップ機能は同じデバイスならば動画や画像などが共有されるという恐ろしいシロモノ。その有効範囲は決まっている。
イケメン登場。良い眺めだ…呟く彼にエリザベスは夜景を見る。そして彼は彼女の胸元を見る。そうね。なんかいつ見えるかそっちでもドキドキしてたよ。
初めましてのデートでこんな素敵なレストランってすごいなと思うし、スマホをテーブルに置いてもいいかしら?と了解をとるバイオレットも、緊張する彼女にウィットのきいた返しをするのヘンリーがとても良い。
アプリによる脅迫が始まる。次々と出される指示、映される監視カメラ。誰が何のために?
その指示は言葉に出してはいけないもの。
それを壁や窓などに大きく字幕の様に表示されるので主人公がいちいちじっくりスマホを見るでもなくこちらにも理解できるので無駄な行動がなく、こちらのストレスにならず且つかなりオシャレなカットになっている。
そこまでで癖のある男性と何人か接触があるもどいつもこいつも怪しく見えて、接触はなくても背景にちょっと映った男性までも怪しく思えてくる。
助けを求めるも、常に一歩先手を打たれており行動が塞がれ言いなりになるしかないので、どんどん挙動不審になってくる。
マッチングアプリで出会った女性がこんな不自然な行動を取り続け、なかなか席に戻らないとか相手は怒ってもいいし、帰ってもいい案件だ。すごい美女でも。
最初こそヘンリーも笑って許しているが怪しく思い始める。
女性用手洗いの中まで監視が入るとか、最終的にはヘンリーを殺せとの指示が入る。できないと躊躇する彼女に、君は一度人を殺しているから…その言葉で暗い底へどんどん沈んでいき、レストランに帰るも聞こえる声がボワボワと水の中にいる様に耳に入らない演出とかとても良かった。
彼女がDV夫に銃を向けた導入を思い出させる。
最初は緊張と期待を込めて通った円形の続く廊下や壁の波型などが今度はバイオレットの心の不安、恐怖、揺れを感じさせる。
覚悟を決めて殺そうとするもヘンリーも警戒するし、やはり行動も不自然で何度も回り道をする。
ショットを飲む瞬間、割れる赤ワインのグラス。
そこでバイオレットは考える。考えて考えぬいて突き止めた犯人。正解を掴んだバイオレットに怯えはない。
あの滑稽なご老人。これがほんとに不気味で目をギョロリと見開き嘲笑う。私はチェスをしている、君はサイコロだ。
確かに彼は全てを読んで常に一手先を押さえていた。
しかし、最後の一手を読んだのはバイオレット。
唇をペロリと舌で舐める。勝利の合図。
最後の夜のパンナコッタ。
痺れるーーー!!
ご老人、最後のご乱心にレストランは大騒ぎ。
ヘンリーから送られたホッケーのパックで割れる窓ガラス、高層ビルから犯人共々落ちかけるがヘンリーーー!ありがとう!
そこからはカーチェイスが始まり、家では妹ちゃんが息子を守り大活躍。そこへバイオレットも参戦するも劣勢に。
そこに助け舟。息子のラジコンカーが銃を運んでやってきた。4才なのに天才かな?
その様に何気に登場する小道具も上手く回収されてるのとても良い。
ラストは入院するヘンリーの元へバイオレットがジャンクフードを持ってお見舞いに。お店は修復中よ、病院食よりマシさ。こんな会話はとても好きだし、同じく入院中の妹ちゃんの小憎らしい言い回しも良いなと思う。
あの夜、大きな窓のキラキラ光る夜景をバックに高級料理を挟んで向き合う彼女達より、病院の大きな窓からの日差しをうけ向かい合い安いジャンクフードを食べる方がきっと楽しいと思う。
全体的にテッパンネタオンパレードではあるのだが、主人公の表情や小物、カメラワークなど上手く料理されているので目が離せずずっとドキドキしながら楽しめる最高の90分。尺も丁度良い。サラダから札が出た時はヒェってなった。
エンドロールにDV被害は悩まずに相談をって書いてあり、きちんとフォローしている所も好ましい。