韓国ミュージカル ON SCREEN「笑う男」

劇場公開日:2026年1月9日

解説・あらすじ

韓国ミュージカルの名作を映画館のスクリーンで上映するシネマシリーズ「韓国ミュージカル ON SCREEN」の一作。韓国発のオリジナルミュージカルの2018年初演版「笑う男」を上映。

17世紀終盤のイングランド。見世物として口を裂かれた少年グウィンプレンは、雪の中で死にかけている赤ん坊デアを見つけ、近くの小屋で暮らす興行師ウルシュスと出会う。数年後、青年となったグウィンプレンは、口の傷から「笑う男」と呼ばれるようになっていた。彼は盲目のデアとともに、ウルシュスのもとで自身の生い立ちを芝居で演じて有名人となる。ある日、彼らの興行に貴族が興味を抱いたことで、グウィンプレンとデアの運命は大きく動きだす。

「レ・ミゼラブル」などの文豪ビクトル・ユーゴーが自身の最高傑作と称した小説「笑う男」を原作に、ロバート・ヨハンソンが脚本・演出、ジャック・マーフィが歌詞、ブロードウェイミュージカルのヒットメーカーであるフランク・ワイルドホーンが作曲を手がけ、2018年に韓国にて世界初演。日本でも2019年と22年に上演され、繊細な人間ドラマと壮大な音楽で話題を集めた。

2018年製作/153分/G/韓国
原題または英題:The Man Who Laughs
配給:ライブ・ビューイング・ジャパン
劇場公開日:2026年1月9日

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映画レビュー

4.5 救いを語らず、ただ人生と世界が置かれている物語

2026年1月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

難しい

最初は、パク・ガンヒョンのグウィンプレンに対して少し構えて観ていた。
「本当に歌がうまいの?」と、どこか疑いながら。

でもそれは、意図的に抑制されていただけだった。
声も、感情も、物語も。
すべてが「あの場面」まで抑えて演じられていたのだと思う。
あの叫び。爆発的だった。鳥肌が止まらなかった。

それは、一般的に言えば「闇堕ち」と言えるかもしれない。
が、闇に飲み込まれた堕落ではなく、世界が闇であると知った到達だった。

もう希望を語らない。
もう理解される前提に立たない。
もう自分を偽らない。

言うなれば「ここが地獄なら、地獄の言葉で話す」
とでもいうような、強い選択だった。

この作品は、救いの物語ではない。
教訓も、希望のメッセージも提示されない。
ただ、生き切った者と、その人生を見送った者とが静かに置かれる。

残酷な世界。
努力ではどうにもならないこと。
理不尽で、容赦のない運命。
それでも世界は続いていく、という事実。

だからこそ、いのちの一瞬のきらめきが強烈に美しい。
一瞬一瞬が、取り返しのつかないものとして輝く。

特に心を奪われたのはヤン・ジュンモのウルシュス。
彼の歌声は「見送る覚悟」そのものだった。
重厚で伸びやかで、心の底に波紋を起こさせ、そして鎮めるかのようだ。

「人生とは、愛する者の旅立ちを見送ることだ」
ウルシュスの言葉が、重く、静かに胸に残る。

デアの目が見えないことは、欠落ではない。
価値や優劣、醜さといった
「見える者が背負わされるもの」を、彼女は持たずに生きている。
それは弱さではなく、別のかたちの強さだった。

物語はずっと夜である。

昼=救済、啓蒙、進歩
夜=放置、搾取、沈黙

だとしたら、この物語はほとんど後者の側に置かれている。
デアにとっては、もとより比喩ではなく闇の中である。

彼女は最後まで、価値も、序列も、醜さも、美しさも、
この世界の「見えるもの」を知らないまま生きた。

そして死の直前にだけ、一瞬だけ光に触れる。

でもそれは、生に戻るための光でも、世界に参加するための光でもなくて、
生を手放す瞬間にだけ与えられる残酷な光。

もし「生きるための光」だったら、物語は希望になる。が、あれは「見えないまま生き切った存在」に対する、最後の祝福のような光。
しかも彼女が見るのは、世界ではなく、愛しい人の顔、ただそれだけ。

ラストシーン。
天に昇るというより、吹雪の中、宙をさすらっていくようなグウィンプレンとデア。
それを、ただ見送るウルシュスの背中。

そこに説明はない。救いはない。
感情を誘導する音楽も、答えもない。
ただ「そうだった」という人生だけが残る。
生き切った男と、それを見送った男の人生。

余白が凄い。
というより、この作品は余白でできている。

初回は、救いがない物語だと感じた。
が、二度目では、ただ「世間とは、人生とはこういうものだ」という静かな理解と諦念が生まれた。

初日に観て、たまらなくなって別の映画館に移動して二度目を観た。
予定になく思わず1日に二度観たのは、「オペラ座の怪人」だけだ。

最後に、「バイオリン弾き」が舞台上で、哀切極まるメロディを奏でることで、世界観にさらに深みが増している。

韓国ミュージカルの質の高さに殴られた。
余韻が凄くて、まだ物語から現実に復帰できていない。

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