劇場公開日 2025年5月9日

「報道写真家のレゾンデートル」リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0報道写真家のレゾンデートル

2025年5月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

驚く

撮られる側から撮る側への転身は、
過去からも耳目にするところ。

至近の例では『安珠』だろうか。
2023年に「CHANEL NEXUS HALL」で
個展も開催されている。

が、やはり慣れ親しんだ人物を被写体にするケースが多く、
『リー・ミラー』ように「報道写真」、
それも「戦場」をフィールドに選択した例は少ないのでは。

とは言え、
主人公が何故そこまで執心したのかは詳らかにはされず、
かなりもやっとした思いがわだかまる。

今よりも更に女性に対しての差別が甚だしい時代。
彼女の従軍は「D-デイ」には間に合わない。

その間に『キャパ』は
最前線で〔オマハ・ビーチ〕の写真をものし
名声を上げている。

しかし、『リー(ケイト・ウィンスレット)』の足跡は
次第に東進するアメリカ軍の進攻に追い付き、終いには先陣にまで。
そこで目にするのは、
世界の人々がまだ認識していない「ホロコースト」の実態。

再現映像でも目を背けたくなるような惨状は、
いくら強靭な精神の持ち主でも
その後の人生に影響を及ぼすに違いない。
一例を挙げれば、アルコールへの逃避、だろうか。

彼女の視線は、敵味方の枠を越え、
常に弱者である女性に向けられる。

常でも差別され虐げられているのに、
戦禍の非常時ではそれが更に際立つ。

痛みを一方的に受けることへのやり場のない憤りが、
幾つもの写真から溢れ出す。

本作は基本的に『リー・ミラー』への賛歌。

主演の『ケイト・ウィンスレット』が
製作にも名を連ねていることからも、
並々ならぬ入れ込み具合は判ろうというもの。

その一方でショッキングな映像、
独軍への協力を疑われ、頭を丸刈りにされる女性や、
解放軍のはずのアメリカ兵士に、まさに犯されようとしている女性など、
ショッキングな場面は多い。

主人公の戦場での体験を際立たせるためのエピソードの数々も、
次第に実録モノと区別がつかなくなり、
彼女のキャラクターが埋もれてしまう難点になってしまうのは難点で
この匙加減はむつかしいところ。

もっとも印象的な写真は
〔ヒトラーの浴室〕だろう。

ベルリンで『ヒトラー』が自殺した日に
彼のアパートのバスタブで湯あみをする彼女の姿は、
官能を感じさせつつ、
独裁者に対しての反抗心が如実に現れている。

戦場を撮っていないのに、
戦争の不毛さをこれほど端的に表現した一枚が嘗て有ったろうか。

ウイットに富みながら、反骨の精神をまざまざと感じる、
『リー・ミラー』を象徴する一枚だ。

ジュン一
トミーさんのコメント
2025年5月10日

滾る様な怒り、ショック!というより、糖衣やオブラートでくるんで、そっとデリケートな演出を心がけてる印象でした。

トミー
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