フロントライン

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劇場公開日:

解説・あらすじ

日本で初めて新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」での実話を基に、未知のウイルスに最前線で立ち向かった医師や看護師たちの闘いをオリジナル脚本で描いたドラマ。

2020年2月3日、乗客乗員3711名を乗せた豪華客船が横浜港に入港した。香港で下船した乗客1名に新型コロナウイルスの感染が確認されており、船内では100人以上が症状を訴えていた。日本には大規模なウイルス対応を専門とする機関がなく、災害医療専門の医療ボランティア的組織「DMAT」が急きょ出動することに。彼らは治療法不明のウイルスを相手に自らの命を危険にさらしながらも、乗客全員を下船させるまであきらめずに闘い続ける。

対策本部で指揮をとるDMAT指揮官・結城英晴を小栗旬、厚生労働省の役人・立松信貴を松坂桃李、現場で対応にあたるDMAT隊員・真田春人を池松壮亮、医師・仙道行義を窪塚洋介が演じ、森七菜、桜井ユキ、美村里江、吹越満、光石研、滝藤賢一が共演。「劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」の増本淳プロデューサーが企画・脚本・プロデュースを手がけ、「生きてるだけで、愛。」の関根光才が監督を務めた。

2025年製作/129分/G/日本
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:2025年6月13日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

監督
脚本
増本淳
企画
増本淳
プロデュース
増本淳
製作
バディ・マリーニ
木下直哉
山本大樹
黒川精一
勝股英夫
弓矢政法
五十嵐淳之
プロデューサー
関口大輔
増子知希
玉田祐美子
協力プロデューサー
的場明日香
ラインプロデューサー
大熊敏之
撮影
重森豊太郎
照明
中須岳士
録音
田辺正晴
美術プロデューサー
小林大輔
美術デザイン
飯塚洋行
アートコーディネーター
竹田政弘
装飾
石橋達郎
衣装
牧亜矢美
ヘアメイク
那須野詞
ポストプロダクションプロデューサー
篠田学
VFXスーパーバイザー
菅原悦史
カラリスト
長谷川将広
リレコーディングミキサー
久連石由文
音響効果
渋谷圭介
編集
本田吉孝
音楽
スティーブン・アーギラ
音楽プロデュース
備耕庸
監督補
関野宗紀
助監督
木ノ本浩平
岩坪梨絵
制作担当
松田憲一良
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映画レビュー

4.0未来はわたしたちの「善意」で守れるかもしれない

2025年6月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

2020年春。
あの日、連日ニュースで報道された「ダイヤモンド・プリンセス」の名。
見えないウイルス、未知の恐怖、混乱と情報の嵐──
その“内側”で命の最前線に立ち続けた人々がいたことを、私たちはどれだけ知っていただろうか。

映画『フロントライン』は、
日本で最初の集団感染が発生した豪華客船を舞台に、医療ボランティア組織「DMAT」の奮闘を、事実に基づきながらもオリジナル脚本で描いた、“記録”であり、“祈り”であり、“証言”のような映画です。

主演の小栗旬さんをはじめ、松坂桃李さん、池松壮亮さん、窪塚洋介さんと豪華キャストがそろい、特に久しぶりにスクリーンでしっかりと拝見した窪塚洋介さんの存在感には胸を打たれました。誰か一人が特別に立ちすぎているということもなく、それぞれの役者さんが、自分の“仕事”に誠実に取り組んでいる姿が伝わってきて、観ている私たちは物語そのものに集中できました。

正義や正解が見えない中、それでも前に進もうとする人たちの姿に、2時間という時間があっという間に感じられました。

2020年、豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」に突如持ち込まれた未知のウイルス。閉ざされた海の上で、混乱、恐怖、そして絶望が渦巻く中、最前線で立ち向かったのは、
我々と同じ、日常を持つ“普通の人々でした。

DMAT指揮官・結城(小栗旬)、厚労省の立松(松坂桃李)、現場に踏み込んだ医師の真田(池松壮亮)と仙道(窪塚洋介)、そして若き船内クルー羽鳥(森七菜)たち──

彼らに共通していたのは、
「目の前の命を救いたい」という静かで強い想いでした。どんなマニュアルにも書かれていない“人としてどうあるべきか”という問いに、それぞれの立場で、彼らは必死に答えを探し続けました。

あのパンデミックで、私たちは思い知りました。
食べること、眠ること、働くこと、学ぶこと、笑うこと──
当たり前の日常なんて、この世には存在しなかったということを。

それらすべてが、奇跡のように
誰かの働きや善意のうえに成り立っていたのだと。

医療者、食の現場、行政、報道──
あらゆる立場の“誰か”の懸命な行動が、誰かの命をつなぐ「盾」になっていたことに、改めて気づかされたのです。

はじめに立ち上がったのは、
たったひと握りの心ある人たち。

彼らの「利他の心」と「勇気ある行動」が、やがて周囲を動かし、私たちを救ってくれたのです。

希望とは、きっとヒーローなんかじゃない。希望とは、特別なスーツも、魔法もいらない。ただ「誰かのために」動くという、シンプルで力強い行動のこと。

それはいつだって、
一人ひとりの中にある「善意のかたち」をしている。

未曾有のパンデミックを体験した私たちにとって、
変わったのは、“人々の意識”であり
変わらなかったのは、“人としての本質”だと信じさせてくれる、静かで熱い作品です。

災害が多いこの国で、
日々、自分ではない“誰か”の命を最優先に考えて行動する人たちがいるということ。それはとても恵まれた事実であり、私たちが誇るべき日本の強さでもあります。

けれど、この作品はただ彼らを称えるためだけの映画ではありません。これは終わった過去の物語ではなく、日常の中の“続き”のひとコマ。

次に災害が起こったとき──
「あなたなら、どう行動する?」
そう、静かに、でも確かに問いかけてくるのです。

医者でなくても、官僚でなくても、
ただの“わたし”にも、できることがある。

たとえば、誰かを思いやる「小さな善意」
たとえば、学び、備えるという「意識」

それは、未来の私たちを守る「防護服」になるかもしれない。

「事実は小説より奇なり」──
この映画は、誰もが知っていて、誰もが体験した現実に基づいてつくられています。
だからこそ、誰の心にも静かに届く“本当の力”を持っています。

もしかしたら、
この映画を観ることこそが、
「善意の一歩」なのかもしれません。

どなたのココロにも届く
ぜひ、観ておきたい一本です🧐

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ななやお

4.0一瞬の深呼吸と、顔に刻まれたマスク痕

2025年6月15日
iPhoneアプリから投稿

 冒頭から、すっと引き込まれる。どこまでも続く、船内の長廊下。波のせいか、小走りのクルーの視線なのか、ゆらゆらと揺れ、先が見通せない。搬送のため開かれた搭乗口で、クルーがほんのいっときマスクを外し、大きく呼吸する。暗い海、深い闇。これから始まる、長く苦しい道筋を、暗示させる幕開けだ。
 国内初となったダイヤモンド・プリンセス号でのコロナ対応は、誰しもの記憶に残る強烈な出来事だ。けれども当時、私は情報の渦に巻き込まれるのが苦痛で、極力距離を置いていた。本作に触れ、知らないことだらけだったと改めて痛感した。乗客やクルーが多国籍で構成され、言葉の壁があったことも、少し想像すれば思い至ったはずなのに、当時は考えもしなかった。あれだけ騒ぎ立てられていたのにもかかわらず、そこにいた人々の顔の見えない、空虚な報道が日々繰り返されていたのだ。
 言葉の壁、法の壁、そして受け入れ先の限界があっても、病気は待ってくれない。当時叫ばれていた、ウイルスを持ち込ませない、広げないという姿勢とは異なる視点から、DMATは格闘を開始する。ひとりでも多くの命を救うという、揺らがない軸。それは、当時ほぼ理解されず、広く伝わってくることもなかった。叩くだけ叩いていた外側と、激動の事態から目を逸らさずに向き合い続けていた彼らの隔たりに、今更ながら後ろめたい気持ちになった。
「これは面白い」、「いやいや、もっと面白いことになりますよ」とほくそえむマスコミ。本作では分かりやすい嫌悪の対象になりがちだが、彼らの情報に飛びつき、食い散らかすように消費していったのは、大衆という隠れみので顔を隠してきた私たちだ。本作は、涙腺狙いの美談然としたつくりをきっぱり排し、冷静な物語運びを貫いて、報道では顔が見えなかった(私たちが見ようとしていなかった)医療チームひとりひとりの顔をくっきりと見せてくれた。物語の中盤で大きな波紋となる、某専門家の警鐘動画とその顛末も、ぼやかさずに取り上げられている。マスクの着用や人物像など、エンドロール直前に示された演出上の説明書きにも、本作スタッフの誠実さを感じた。
 ラスト、悶々とした日々を乗り越え、下船した親子にマイクを向けるレポーターのまなざしが、ほのかな希望を残す。また、ようやく(娘が家で教科書を広げており、2月末からの一斉休校に突入していると思われた。)帰宅した若い医師の頬には、くっきりとマスク痕が。苦しい日々の証であるが、家族との日常に戻った彼の、ささやかな笑いじわのようにも映った。彼らが思いを馳せたアフターコロナの世界に、今は追いついているだろうか。

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cma

4.5私にこの真実を教えてくれてありがとう

2025年6月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

この作品は、5年前、日本で初めて新型コロナウイルスの集団感染が発生した、豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス号」のニュースを見た全ての人々が、当事者の視点で見ることができる作品だ。

過去様々な事件や歴史の『事実に基づいた作品』を見てきたけれど、自分が当事者となって見ることができる作品を見るのは生まれて初めてだった。それだけに感じるものがとても多く、衝撃が大きかった。

TVニュースに映る横浜港の豪華客船を見ていたあの日、その内部でこんなに複雑で困難なことが繰り広げられていたなんて、当時の私は全く知らなかった。知らないのをいいことに「なんでこんなに時間がかかっているんだろう」とすら思っていたように思う。そんな無知な自分が今は恥ずかしい。
私はどこかで、こういう誰もがやりたがらないことを、誰かがやらなければならない時、行動してくれる人がいることを軽く思ってしまっていたのかもしれない。
彼らのような名もなき人々によって、私たちの日常の平和はいつも守られていることを絶対忘れてはいけないと強く思った。

今後も、コロナや東日本大震災の津波、福島の原発事故のように、誰も経験したことのない危機が突然私たちを襲うかもしれない。そんなときに、疑い合ったり責め合ったりするのではなく、信じ合い、支え合える社会を築くためにも、この作品を通して“知らなかった自分”に気づき、心を動かされる人が一人でも多く増えてほしいと思った。

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AZU

4.5実話ベースの社会派映画、日本でももっと増えるといい

2025年6月21日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

怖い

知的

本作については当サイトの新作評論枠に寄稿したので、ここでは補足的な事柄をいくつか書いてみたい。

まず、「実話に基づく劇映画を、事象の発生からわずか5年余りで公開までこぎつけたことも、邦画界では異例の快挙」と書き、このタイプの映画がなかなか実現しない理由を「政治家や役人や大企業に忖度しがちな日本では往々にして、事故や事件が重大であればあるほど各方面への配慮や調整で長い年月を費やしたり、そもそも関係者の了解や必要な資金が得られず企画が頓挫したり」と説明した。これに付け加えると、医師、厚労省官僚、乗員といった主要な登場人物らの大部分を苦難に立ち向かうヒーローとして肯定的に描いたことも、関係者らから了解と支持を早期に得られた一因だろう。

これまで、実話ベースで社会派の邦画を比較的タイムリーに作るのは、製作・配給を手がけるスターサンズの独壇場というイメージがあった。松坂桃李がやはり官僚役だった「新聞記者」をはじめ、相模原障害者施設殺傷事件に着想を得た小説を映画化した「月」、ドキュメンタリーでも政治の問題に切り込んだ「パンケーキを毒見する」「妖怪の孫」などが挙げられる。一方、今作「フロントライン」、そしてNetflix配信ドラマ「THE DAYS」を手がけた増本淳プロデューサー(元フジテレビ所属、現在はフリー)のラインが確立してきたようで、こうした流れがさらに広がるといい。

また、評論では「ラスト・クルーズ」と「COVID-19 2つの大国の過ち」のドキュメンタリー2本についても触れた(これらはU-NEXTで配信中)。後者によると、武漢の当局が2019年12月の時点で未知のウイルスに感染した患者が大勢出ているのを把握しながら、めでたい国家的行事である1月6日~18日の人民代表大会が終わるまでこの事実を伏せ、20日になってようやく人同士の感染が確認されたと報告したという。もし中国の当局が早期に事実を公表し、各国に警戒と協力を真摯に求めていたら、ダイヤモンド・プリンセス号が香港で乗客を無防備なまま降ろすことはなかっただろうし、クルーズ中大勢の乗客たちが交流するイベントも自粛していたかもしれず、つまりは集団感染を防げた可能性があったのだ。

いろいろ理不尽なこと、腹立たしいこともあるが、前例のない災害、とてつもなく困難な異常事態に、不屈の精神と柔軟な対応力で最前線に立つ彼ら、彼女らのような存在がいることは大いなる希望であり、大勢の心の支えにもなるだろう。

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高森 郁哉