Playground 校庭

劇場公開日:2025年3月7日

解説・あらすじ

小学校に入学したばかりの少女の視点から、不安と恐怖に満ちた子どもたちの過酷な日常を没入感たっぷりに描いたベルギー映画。

7歳の内気な少女ノラは3歳上の兄アベルが通う小学校に入学するが、なかなか友だちができず校内に居場所がない。やがて同じクラスの女の子2人と仲良くなったノラは、ある日、兄が大柄な少年にいじめられている現場を目撃しショックを受ける。ノラは大好きな兄を助けたいと願うも、兄から拒絶されてしまう。その後もいじめは繰り返され、一方的にやられっぱなしの兄の気持ちを理解できないノラは寂しさと苦しみを募らせていく。唯一の理解者だった担任教師が学校を去り、友だちから仲間はずれにされて再びひとりぼっちになったノラは、ある日、校庭で衝撃的な光景を目にする。

出演は「またヴィンセントは襲われる」のカリム・ルクルー、「ハッピーエンド」のローラ・ファーリンデン。本作が長編デビューとなるベルギーの新鋭ローラ・ワンデルが監督・脚本を手がけた。2021年・第74回カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞。

2021年製作/72分/G/ベルギー
原題または英題:Un monde
配給:アルバトロス・フィルム
劇場公開日:2025年3月7日

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(C)2021 Dragons Films/ Lunanime

映画レビュー

4.0 目隠し鬼の記憶

2025年4月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 突然の喧騒に、すっと引き込まれる。校門前で登校を渋る女の子・ノラとのやり取りに、親の顔は登場しない。不安げな彼女が顔を寄せる、たるんだお腹が大写しされるだけ。性別さえも分からない。その後も、子どもの視線で物語は進む。大人はほとんど登場しない。声が上の方から振ってくるばかりで、かがむか座るかして視線を落としたときだけ、彼らはふっと現れる。子どもの世界で、大人は単なる遠景、もしくは脇役。絡まっていく事態をほどくことは、とても期待できないのだ。大人の非力に気づき、絶望した子どもの、孤独なたたかいが始まる。
 友だちがふえ、彩りを得ていく妹・ノラと反比例するかのように、兄・アベルはいじめのターゲットととなり、追い詰められていく。そして、順調に見えたノラにも新たな影が…。
 めまぐるしく、容赦ないパワーゲームに気を取られながらも、ノラの友人たちのおしゃべりがちくりちくりと胸に刺さった。「サッカーやる子は差別主義者」、「差別主義者は自分が一番な人たち」、「無職者は怠け者」となどという短絡的な価値観を、彼女たちはどこで得たのか。無神経な大人の言葉が、子どもに取り込まれ、暴力性をあらわにしていくさまが生々しい。
 共に遊び、笑い合える瞬間がきらきらとするほどに、これがいつまで続くのかと、不安がよぎる。中盤、目隠し鬼のシーンが印象的だった。鮮やかな青い布ですっぽりと顔を覆い、ぐるぐると回り、歓声の中で手探りするノラは、目隠しを外すのが少し怖かったのではないか。子どもの遊びには、目をつぶったり目隠ししたりと視覚を奪われるがものが色々ある。そういった遊びは少し非日常でワクワクするけれど、ちょっとした怖さもある。目を開いたとき、周りはどうなっているのか、目の前に広がる世界が様変わりしていないか、自分だけ取り残されていないか…。そんなひんやりとした記憶が、ふっと蘇った。
 ラスト、ノラが選んだ必死の行動は、ささやかな光だ。すさみかけた、観る者の心を温めてくれた。けれども、解決とは言えない。問題は、そこからだ。もし、大人が彼女と同じ行動を取ったら、どうなるだろう。そもそも、同じ行動を取れる大人は、どのくらいいるだろう? だからこそ、必死のバトンを受け取れる大人になりたい。ほろ苦さを噛み締めながら、そう思った。

(追記: ほとんど情報なく劇場に駆け込んだので、鑑賞後に、ちらしを改めて手に取った。フランスではなく、ベルギー作品だったのか。ベルギーと言えば…と思ったら、ローラ・ワンデル監督の次回作は、ダルデンヌ兄弟が製作に加わるとのことだった。納得。期待!)

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cma

4.0 不安・恐怖・成長の追体験に誘う“子供の情景”

2025年3月9日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

被写界深度をごく浅く設定したカメラで撮影した映像が特徴的。主人公の7歳の少女ノラの目線の高さにカメラを合わせ、ノラの表情や彼女が見る対象をフォーカスが丁寧に追い、それに伴い周囲の視界がボケる。本作が長編デビューとなるベルギーのローラ・ワンデル監督の狙いは、ノラが目にする世界を観客に体感させること。それはすなわち、誰もが通ってきた幼少期の、幼稚園や小学校に入り見知らぬ大勢の中に放り込まれたときに感じる不安や恐怖を追体験させることでもある。幼い頃は余裕がなく、身の回りの見える範囲が“世界のすべて”だったことを思い出させる。フランス語の原題「Un monde」の意味はずばり「世界」だ。

冒頭からノラは心細くて泣いている。コミュニケーションが苦手のようで、仲間外れなどの軽いいじめにあう。だがより深刻なのは3歳上の兄アベルのほうで、心身のダメージを伴う攻撃を数人から受けている。大好きな兄が校庭や校舎内でいじめられているのを目撃したノラは、なんとか兄の力になろうとするのだが……。

演技を感じさせない子供たちの自然な表情と言葉(もちろん監督の演出の賜物でもあるだろう)が、ドキュメンタリーを観ている錯覚さえ起こさせる。多少なりとも人付き合いに苦手意識がある人、新しい集団に馴染むのに苦労した経験がある人なら、ノラの心情にきっと共感するはず。そして、泣き虫だった彼女がつらく苦しい体験を経て成長する姿に、不安や孤独を克服した幼い自分を思い出して重ねるに違いない。

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高森 郁哉

3.5 眩しすぎるほどに暗い

2025年8月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

人格形成の段階。なんて言うが実際は人なんて一度でも人生を諦めたら、それが小学生の時であろうと決定的に人格は変わるし以前の自分と比べると文字通り"終わって"しまう。それが人生や一般常識から見た時の善し悪しは視点によって変わるが、元に戻ることは決してない。悪人が更生しても幼少期の善人に戻るわけではない、悪人を経験した善人があるだけだ。もっとも善悪なんてものがそもそも在るのかは置いておくとして、この映画はその心、人格が移り変わる瞬間をできるだけ映画に収めよう、再現しようとしていたように思う。現実ではないがフィクションとは言い切れない、あまりにも現実的で現実世界を濃縮して72分にしたような映画だった。

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ezio

3.0 兄妹の演技がすごい……けど

2025年8月2日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

これもまた…
子どもの世界はこうだよね。自分も通ってきた道。
だからこそアベルの判断が自分には全くない発想過ぎて理解に苦しむ。

自分が虐められる▶親介入▶ヤラれる側に戻りたくないから加害者になる

え?なんで?
ヤるかヤラレるかしかないの?
あれだけ人がいてなんでそのグループの人としか居られないの??

自分の過去を振り返る。
心ない女の子からの突然の御達し→「今かららまちゃんと口聞いた人は絶交ね」→自分の身に降りかかる女子グループからの完全無視。もちろん身に覚えはない。
そりゃされていい気分はしないけど、初めてされたときは悩んだけど、理由もないのにきまぐれに繰り返されてたら、そのうちに振り回されるのが馬鹿馬鹿しくなってきて自分の方から試合を降りた(?)とでもいうのかな。おかげでそれまで挨拶くらいしかしなかった子とも仲良くなれた。

この映画のアベルのような目に今、現実で遭ってる子からしてみたら辛いし、綺麗事言うなーって感じだとは思うけど、「このままこの人達と付き合っていかなきゃならない」という自分を縛っている呪縛みたいなものを解いてから考え直してみてほしいなー。

ノラの癇癪はさらにあたしには完全理解不能。

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らまんば