蝶の渡り

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蝶の渡り

解説・あらすじ

ジョージアを代表する女性監督ナナ・ジョルジャゼが、ジョージア近代史と芸術への深い思いを込めて撮りあげた集大成的作品。ジョージア独立のために闘った若者たちの27年後の姿を描く。自身が生き抜くために他国へ「渡り」を行うジョージア人の姿を蝶に託しつつ、ユーモアと希望に満ちたまなざしで描きだす。

1991年、ジョージア。ソ連からの独立の夢が近づき、若者たちは未来への希望を胸に新しい年を迎える。ソ連が崩壊するとジョージアはついに独立を宣言するが、その喜びは新たな戦争によって失われてしまう。27年後、画家コスタは祖父母の代からの家の半地下に暮らし、そこには芸術仲間たちがいつも集まっていた。才能があってもうまくいかず、生活は困窮するばかりの彼らだったが、その表情は不思議と楽しげだ。新年を迎えようとしていたある日、コスタの家にかつての恋人ニナが戻ってくる。しかし、コスタの絵を買いに来たアメリカ人の美術コレクター・スティーブがニナに一目ぼれし、彼女はより良い生活を求めてスティーブとともにアメリカへ渡ることを決意する。

2023年製作/90分/G/ジョージア
原題または英題:Peplebis idzulebiti migratsia
配給:ムヴィオラ
劇場公開日:2025年1月24日

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映画レビュー

3.5この手狭な空間にジョージアの精神性が浮かび上がる

2025年1月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

ジョージアを代表するナナ・ジョルジャゼ監督が、同国の現代史、人々の思い、生き様を巧みに凝縮させた作品。かつて独立の気風に湧いた芸術家の若者たちが、あれから27年を経た今、いかに暮らしているかを、笑いあり悲哀ありの豊かなタッチで描き出す。彼らは念願の自由を手に入れた一方、そこからの90年代は混乱や紛争が大きな喪失と爪痕を残し、その影響は今も尾を引いていると言われる。でもだからと言って物語が悲しみ一辺倒に陥らないところが彼らの逞しさであり、屈することのない精神性だ。芸術家らは時を経ても相変わらず同じ場所に集い、金はなくとも、変わらぬ友情を交わし合う。そこにふと登場する「蝶の渡り」という幻想的な絵画が、日本人には到底預かりしれない彼らの内面を見事に象徴していて興味深い限り。ほんの90分足らずでジョージアの全てを知り尽くすことはできないものの、その一面を実に味わい深く垣間見させてくれる一本である。

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牛津厚信

まずは、ジョージアの勉強から

2025年3月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ロシアからの圧力・国内の紛争から27年を経たジョージアに暮らす初老のアーチストたちが集まった時、人々の間に生じる細やかなさざ波と言うお話。緩やかに流れる物語の向こうには冷え冷えした手触りがあるに違いないのだが、それが十分に感得できないのは、映画自身のせいではなく、僕がジョージアの歴史を全く分かっていないからだろう。そこで、南オセチア問題から勉強を始めた。

 それにしても、あんな小さな国から映画作品が次々産み出されるのはどういう訳なのだろう。それも知りたい。

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La Strada

3.0ちょっとどこが見所なのか分からなかったな。

2025年3月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ちょっとどこが見所なのか分からなかったな。

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Mr. Planty

3.5取り止めもない、でももう一度見たい映画

2025年2月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

かつて若く自由で貧乏でお祭り騒ぎの日々を暮らしていた芸術家たち。若者の特権と思いきや、30年ほどの時を経てなお半地下の住まいでアートや音楽を糧とし、
金に事欠きながらも楽しく生きているように見える。
それはかつてと変わらないようだが、仲間の一人が
戦争に巻き込まれて亡くなっていたり、
生活のために金持ちと結婚し他国へ渡ったり。

人々の頭上にふわりと浮かんだたくさんの蝶の絵を
見ながら語る「蝶は風を待っている」という言葉は、
戦争に蹂躙されてきたジョージアという国に
生きる人々の気持ちなのだろうか。

若き日からずっと、カメラを通して仲間を見続けてきた
女性ナタの主人公への思いは、友情であり愛のようで
あり、もう少し離れた目線でもあり、
それは監督の祖国への想いなのかもしれないと思った。

ジョージアの歴史を知らないまま観た私にとって、
最初は芸術家たちの暮らしはとりとめもない印象だったが、それでも見ているうちに徐々に輪郭を持ってきた。
「私は撮るべきものは撮った、次はあなたの番よ」と
少年にカメラを手渡すシーンは
監督のささやきのようでとても心に残り、
最後にはもう一度見てみたい1本になった。

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bikke