Flowのレビュー・感想・評価
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美しく暗示的なポストアポカリプス世界のネコ歩き
ギルバロディス監督の前作「Away」もこの「Flow」も、物語の前に人間の死があり、それが透明感に満ちたビジュアルの世界にある種の陰影を与えている。
「Away」の少年は黒い精霊から逃れて人里に辿り着くために、本作の猫は洪水から逃れて生きるためにそれぞれの世界を駆け抜けてゆく。旅路をゆく彼らの視界にもまた死の影が見え隠れしており、言葉のない物語に緊迫感をもたらす。
台詞のない映画だと退屈にならないか不安になりがちだが、本作についてはその心配はいらない。上に書いた緊迫感と展開の早さ、風景描写の美しさ、そして何よりも動物たちの動きの素晴らしさに、スクリーンから目が離せない。
風景に比べるとキャラクターデザインは写実性が低いが、フォルムと動きはあくまでリアルで、その加減がとてもいい。不気味の谷に引っかからず可愛らしい魅力を保ちながらも、極端なデフォルメのないキャラがリアリティある挙動をするので、NHKの「世界ネコ歩き」や「ワイルドライフ」でも見ているような感覚になる瞬間があった。生きた動物たちが厳しい自然の中で生き抜く姿を見ているかのように感情移入し、ハラハラさせられた。
特に猫を飼っている人は、あの黒猫の動きを見て「そうそう、猫はこうよ」と思う瞬間が山ほどあるはずだ。もちろんファンタジーなので、実際にはほぼあり得ない行動も出てくるが、細部のちょっとした動きのリアルさがそこに説得力を与えている。モーションキャプチャーのような実物の動きの丸写しではなく、的確に特徴を抽出したアニメーションがとても心地いい。猫の疾走する姿や毛玉を吐くところ、ワオキツネザルの日向ぼっこが個人的には特にツボだった。
各動物の鳴き声は、声優ではなく実際の動物の声だそうだ(ただしカピバラはラクダ、クジラは虎の鳴き声とのこと)。
説明がない分、物語の解釈を自由に想像できる楽しさも台詞のない作品ならではであり、まるで文字のない絵本のようだ。
最初に猫が居着いていた家には、かつて猫の飼い主であるアーティストが住んでいたのだろう。序盤で木に引っかかったボートが映っていたことから、既にこの場所は洪水に見舞われた後で、人間が誰もいないのもその天災が原因と思われる。
再び襲ってきた洪水から逃れるため、道々行き合わせた動物たちの船旅が始まる。最初は他の動物に対し身構えていた猫も、だんだん警戒を解いてゆく。
ヘビクイワシとの関係が特に印象的だ。猫を船に乗せ、怪我を負ってまで同種の仲間から守ったヘビクイワシに猫はやがて心を開き、船から飛び去った彼の後を追って高い岩を登る。
そのてっぺんで、きらめく星に彩られた天空の渦へ吸い寄せられて浮かぶ1羽と1匹。やがてヘビクイワシだけがその渦に吸い込まれ、消えてゆく。とても神秘的なシーンだ。
「Away」では、死を連想させる黒い精霊に少年が飲み込まれた時、渦に吸い込まれるような描写があった。ヘビクイワシはやはり天に召されたのだろう、という気がする。
黒い精霊も洪水も、何故それらがやってきて死をもたらすのかという説明はない。だがむしろ、現実世界で突然訪れる厄災もそんなものではないだろうか。理由がわからない、得体がしれないものに抱く恐れ。言葉で定義されないからこそ、原初的な恐怖や神秘を感じるのだ。
終盤、水が引いた大地に打ち上げられた瀕死のクジラ(ヒレの形など現実のクジラとは違うが、パンフレットにクジラと書いてあったのでそれに倣う)。かつてクジラに命を助けられた猫は、喉を鳴らして寄りそう。
ところがエンドロールの後、そのクジラが大海を悠々と泳ぐ光景が映し出される(同じ個体かは分からないが、同じと考える方が物語として私の好みだ)。世界は再び洪水に見舞われたということか。猫たちはどうなったのだろう。言葉のない物語のオープンエンディング。災禍が終わり、猫たちがたくましく生きてゆくという「お約束」は明示されない。
大地が水に満たされることは人間など陸に生きるものにとっては致命的な災難だが、クジラにとっては世界が広がること、解放だ。そこに悲劇はない、ただ自然の営みが続いてゆくだけ。
自然の大きさと圧倒的なその力、その中で生きる命の小ささと愛おしさ、あえて言葉にすればそんなイメージを、言葉になる前の感触としてこの作品から受け取った。
追記
監督が12年前に製作した短編「Aqua」に、既に本作の骨格がある。「Aqua」はYouTubeに公開されているので、興味のある方は是非ご覧ください。
なぜか見てしまう美しさ
台詞無しで割と単調な物語として進む
なんらかの洪水で黒猫は住処を失い、カピバラが乗ってきた船に相乗りして旅に出る
なぜ洪水が起きたのかはわからない
人間の痕跡はあるが人間は出てこない。何らかの原因で滅んだのかも。詳細はやはりわからない
どこへ向かうのかもわからない。多分遠くに見える塔みたいなところに向かってるが、それが何なのかはわからない。
途中マダガスカルの猿みたいなやつが出てくる。犬が出てくる。黒猫を庇って仲間内からいじめられた鳥が出てくる。この鳥はやや傲慢そう。
そういうロードムービー 的な要素がある。
何となくその動物たちの性格も、不思議とわかってくる。
そして神聖そうな、でかい鯨的な、架空の動物に何度か助けられる。
塔に着いたら、嵐の中、鳥がどこか空へ消えていく。突然ファンタジー要素が強くなる。どこか幻想的なシーン。猫は吸い込まれることなく元に戻ってくる。
鳥はどこへ行ったのか、死んだという意味なのか、もちろん説明はないからわからない。
そして洪水は終わり、突如として大陸が発生。動物たちが共存する。
何だかノアの方舟みたいな話なのかもしれない、と途中から感じ出す。ノアの方舟の人間がいないバージョン。
やや幻想的なシーンも宗教的な意味合いを持つのかもしれない、と映画を見ながら想像をする。けれどやはりわからない。
そういう、曖昧なまま説明なしに進んでいく物語。しかし不思議と見れてしまう。解釈の余地があるということでもあるし、台詞無しの限界でもある。
ただ何よりもその前提にあるのは映像の面白さ。
なかなか見たことのないアニメーション。
水や草木の描写が綺麗すぎる。
特に水面と水中を同時に映すシーン。すごい。
動物の毛並みにはやや物足りなさを感じるが、それ以外はかなり時代はこんな感じなのかと感じる。
カメラワークも猫に寄り添うような視点で臨場感がある。
不思議と面白い映画
言語のない映画の意味(個人的解釈)
なぜこれを映画館へ見に行かなかったのかと、Amazonプライムで鑑賞後に後悔。
このような映画は様々な解釈ができるだろうと思う。
みるタイミングやその人の心情によって映し出されるものは変わるだろう。
おそらくこの「FLOW」は、昨今流行りの「鬼滅の刃」と対極にあるアニメ映画のように思う。
映像の中で起こること以外、何も教えてくれない。そもそも言語が一才使われていないのだ。
だから見終わった後に、「それで?」と思う人は一定数いるだろう。
でもよく考えてみれば、絵画や映像作品というものはそういう物ではないか。
そこに写っているキャラクターの心情は、本来誰かが教えてくれるものではないはずである。
本映画も、ひとつひとつの仕草や微妙な表情の変化、ちょっとした鳴き声のニュアンスからキャラクターの感情が垣間見える。
以下本編の個人的な解釈、、
主人公の猫は「夢」や「憧れ」に強く惹かれ、衝動的にそれらを追ってしまう性分。
しかし水たまりに映る自分を見てふと我に帰る。
憧れを追いかけて、輝く世界を目の前に置いて行かれてしまった時(ヘビクイワシの時)、
鹿の群れを追いかけてようとして、これまで幾度となく助けてくれた偉大な存在が弱り果てているところ(自分にはどうすることもできない現実)に遭遇した時(クジラ?的生物の時)。
自分が追いかけていた抽象的な(その実態がわからない)憧れからふと、
すぐそこに既にある大事なものを思い出す。
自分が置いていった者たちのことを。
社会には色んな人がいて、デリカシーがない人もいれば、恩を仇で返すタイプもいる。(全部イヌ笑)
でも時間が経って気がつけば、大事な存在になっていることもある。
彼らの存在が自分にとって大事なものだと気づけた時、新しい一章が始まるのだろう。(映画はここで終わっているけど。)
そんな人生の行ったり来たりを、自分にとって大事なものが何か?を、表現している。
じんわり暖かい、心にしみる作品だなと受け取った。
そして何より、キャラクターたちの行動が半分感情的に、半分は無意識的に(動物としての本能的、衝動的に)起こっている点が魅力的であった。
よく考えれば、我々だってさほど変わらないなと思わせられた。
No. 1661
Review 101
やっぱりゴールデンしか勝たん
アマプラにて、おすすめにあがってきたので鑑賞。
スイッチの安いゲームみたいなアニメーションで、まるで自分で目線をコントロールしてるかのような動き。
高校生が作りました!ってならすごいってなるけど、
おそらくプロが長い年月をかけて作ったとなると、うーんという感じ。
最後のオチもよく分からなかった。
知識のある人向けの話なのかな。
ゴールデンの甘えてくる感じ、遊ぼうって誘ってきたり、友達になろうって表情で訴えてくるのが可愛かった。
シンプルながら奥が深い
洪水が進んだ世界に取り残された動物たちの旅路を描いた映画
セリフを使うことなく状況を伝え、動物たちの姿・・・特に主人公の黒猫の仕草がとてもリアルに描き、製作陣の手腕が光る演出だなと思った
いろんな生き物が出てきて子供も楽しめるような内容ながら結構ハラハラする場面もあったり、後半はいろいろと考察ができるような考えさせられるなと感じました。
水鏡に映る君と僕。
大洪水に見舞われ自分の住まいを失った猫が流れてきた1隻の船に乗り込み始まる話。
乗り込んだ船にいた先客のカピバラに警戒しながらも、舵を取りながら水の流れに身を任せ進むが…。
行き場を失った野生動物達(猿、鳥、犬)を乗船させては警戒から始まり徐々に芽生えてく友情、動物だけに会話は無いけれど何故か主人公の黒猫ちゃんの仕草と映像、異種動物達とのやり取り、芽生えてく友情と映像に惹き込まれる。
配信鑑賞でこの評価、劇場で観てたらもっと評価上がったかも!?洪水で街、森が飲まれ、その水はやがて引き、その中をやり過ごす動物達のストーリー面白かった。
大洪水になった世界に迷い込んだ猫、それは想像を超えた冒険の始まりだったー。
原題
Straume
感想
ラトビア出身のクリエイター、ギンツ・ジルバロディス監督の長編2作目となる『Flow』
世界が絶賛!アニメーションの未来を切り開く新領域!
人間は全く登場せず、キャラクターは動物のみ。人間の言語は一言も用いられず動物たちの鳴き声以外にセリフはなし!
世界観と水の表現が良かったです!
1匹の猫とさまざまな動物たちの映像体験でした!
カピバラ、ワオキツネザル、ラブラドール、ヘビクイワシなど。謎のクジラも笑
猫は大好きなんですが個人的にはラブラドールが可愛すぎました!
しかもちゃんと最後までいい奴!他の犬たちやばっ…笑
もちろんカピバラとワオキツネザルにも癒されました〜笑
ヘビクイワシはなぜ天に召されたのか?笑
動物たちの習性などもちゃんと描かれてるのもよかったです。
ちょっと85分は長かったのかなって感じました。
ラスト4匹で水面を見てるの好きでした。
水が押し寄せるシーン、濁流、波や水中での揺れの描写があるので苦手な人は注意です。
※この冒険の果てにあるものはー?
セリフ無し
突然、森を襲った洪水から逃げる動物たちのサバイバル冒険アニメ、驚いたのは、人間は一切登場せず、黒猫が主役、犬はワンワン、猫はにゃーにゃ―でセリフ無し、これなら子供から大人問わず世界共通で愉しめますね。
国の大半が森と湖の自然豊かな国ラトビアのアニメ、最初は仲違いする動物たちも危機に瀕した時は助け合うという子供に観てもらいたいコンセプト、洪水は怖いですが猫、犬、キツネザル、カピバラ、クジラに水鳥(蛇鵜)など動物たちは生き生きとして魅力的でした。
ただ、気になったのは町にも人のいないこと、うまく逃げられたのでしょうかね、つい最近も米テキサス州で洪水のニュース、106人が死亡し、140人が依然行方不明だそうで痛々しい。地球温暖化の影響でしょうか、洪水は他人ごとではないですね。
アカデミー賞をはじめ多くの賞をとったようですが納得です。
人類が絶滅した後は
あのにょきにょきは何だろう、もとは湖の底に近いところだったのか、地球規模の地殻変動があって、今も続いているようで、クジラみたいな大型海生生物がいたりして人類が絶滅してから何世紀か経過しているのか、でも、子猫が住んでいた家では最近まで人がいたよう。
ほのぼの系の子猫の大冒険譚、かと思ったら、こんな話だったのか
人が滅んでそうなのに純血種っぽい犬たちが何種類か生き延びているのは不思議ではあります。
タイトルの「Flow」には、船で流れていく動物たちのことだけでなく、生命の流れ、という意味もあるのでは
ちょっとした哲学的要素も入っていたと思うが、私は人類が絶滅するくらいの大地殻変動の後、地球生物はどんなものが生き残って台頭するんだろうか、とずっと考えながら見てしまった。
背景の美しさが素晴らしい。背景と音楽だけで環境ビデオになりそう。特に水の描き方がすごい。洪水で押し寄せる水、川辺の澄んだ水、遺跡と化した街なかを流れる水、海の色、洪水に流される子猫の目線から見たうねる水面水中などなど、それぞれありそうで見たことがない光景。
イキモノたちの外見をわざと粗く描いて背景と一線を画したよう。でも動きはまるでホンモノみたい。
猫(めっちゃかわいい、見ていてそうそう、猫ってそうだよね、と何度も思いました)は言うまでもなく動物たちのそれぞれの特徴が良く出ていて、にまにましました。
主人公は子猫だけど監督犬派なのかも、ラブラドールなんて、活発で人懐っこくて遊び好きな性格よく出ていて笑ってしまった。カピバラの性格は知らないけど、あんな感じなんですかね。ワオキツネザル(?)には何となく哀愁を感じてしまった。
基本的に言葉を話さない動物そのまま、そこに友情を持つようになるなど、擬人化具合が絶妙で良かった。
生き延びるためには、余計なものを持っていないほうが良いようです。
身一つでぎりぎりのところを切り抜けながらのサバイバル、所有物に執着していたらヤバい。知能が人に近いサルは若干の所有欲はあったようだが執着ってほどでもない。そして、身体能力の高いものがより生き延びられるんだ、と思ったら、それじゃカピバラさんは? となったが、そこはまあ、ご愛敬で。っていうか、現代まで淘汰されてないんだから何か得意技があるんでしょう。
あのプライド高そうな天に召された鳥には特別な意味が込められているんでしょう。聖書的な何かの気がする。精神性が高すぎて周囲に馴染めない、こういう孤高の個体は、地球が変動しようがなんだろうが時々生まれるんでしょう。
ただし、もしこの鳥が点に召されたことで洪水が引いた、という意図があるならちょっと興ざめ。そこだけメルヘンチックの度合いが異質な感じがするので不要と思う。
津波の直前には潮が引くというし、鹿がわらわら走っていたのでまた洪水が来たのだろうが、水の引き具合から言って次の津波はとてつもない大きさだったのでは
大冒険を一緒に乗り切ってきた弱い異種の寄せ集めの小さいコミュニティーはどうなったんだろうか。それを思うと儚くて哀しい気持ちになりました。
ギンツ・ジルバロディス監督作品は初めて見たが、これから追っていきたいです。
大掛かりでも特殊でもない一般的な機材、フリーソフトを活用してこの作品を制作したらしい。機材の進化にも驚きです。
アニメは、作り手のセンス次第、特殊な技術や知識を有する特殊な人でなくても作れる時代になってきたのかも。
動物ものだけど
未来なのか?不確かな世界。
水に浸食され続ける世界で生き残りを掛ける1匹の猫を中心に複数の動物たちとの出逢いを通して、互いの足りないものや想いを動物同士の関係性を保たせつつ描き、協調性、気遣いなど世知辛い世の中にひとつでもその思いを伝えたい製作者の想いは受け取れた。
ただ幻想的で緩やかなリズムのため中々入り込めない点は観る者にとってはきつく感じられた。
所詮〇生には主役はムリ
数々の国際映画賞をとった作品とのことで観に行った。
だが、擬人化されていない動物が主人公なので行動に思惑がなくすべて本能任せなので展開が行き当たりばったりでストーリーの流れがないなと感じた。進むにつれ出演者たちは思いやりや仲間意識が芽生えるがそれなら初めから言葉を交わした方が物語性がでて面白いのにと思った。
良かった点は画がいい特に水の表現はすばらしい、あとネコ好きにはたまらないでしょう。同監督作品「awey」のほうがヒトを主人公にしたぶん評価は断然上です。
動物かわいい
賞を受賞してるのも納得
無声映画
結構面白かったなあ
水が押し寄せるシーンは津波を思い出してびっくりしてしまったけどだんだんとキリスト教的な世界観からファンタジー要素を作ってる作品なのに気づいた。人間がほぼほぼいなくなった後の世界での大洪水からのノアの方舟的な、というか方舟自然発生みたいな
小さなコミュニティができていき警戒し合っていた仲の動物たちが協力し合ったり猫自身が定番だけど水への恐怖心を克服して成長したり。
でっかい鳥が昇天したシーンは神的なのがある前提のストーリーだったけど変に押し付けがましくなく。
超長いけど自分用まとめ↓
猫自信が主人公で、大洪水が起きることで自分よりでっかい動物たちが怖いのと水が嫌っていうのプラス生き延びないといけないという強烈な目的が生まれる。
他の動物たちは個性がそれぞれ際立っていてそれゆえの強みの見せ場とそれぞれが抱えてる問題も見えてくるが過去はほぼ不明。
全員が主人公の猫に対して何かしら働きかけ関係性を構築していく。居場所をあげたり精神的に支えになったり敵から守ってくれたりなど役立っていた。猫に苦難やピンチを提供し成長を促す役割でもあった
カピパラさんがのんびり屋で肝座っててすぐ寝るけど意外と猫さんに居場所提供したり自分で食べ物取ったり猿招き入れたり有能なのが良かった。のんびりすぎて最後死にそうになるけど。
鳥さんは良いやつで怖い雄鳥にも立ち向かう勇気があるけどそれ故に怪我をしたり。
イッヌはアホっぽいけど力持ちで優しいし人懐っこい。故に猫を何回か助けてくれるけど自分のお仲間を助けて結果小さき船上のコミュニティが崩壊しかけたり。
猿に関してはキャラが一番立ってたけどイマイチ見せ場で個性は活かし切れてない気がした。あのガラクタをもっと上手く使って欲しかったなー浮具で猫は助かってたけど
全体的にストーリーありのフィールド探索するゲームの感じを映画作品にしたみたいなアニメだった。
特に光の使い方が美しくてニーアとかその辺のグラフィックが綺麗&ストーリーが結構じんわり良いゲームをプレイしてる感覚。
じんわりなストーリーだけど猫が色んなキャラと関わりながら成長するようにしっかりキャラと出来事が計算されて面白く作られていた。
タイトルなし(ネタバレ)
突如襲った洪水。
一匹の黒猫は小型の帆船で命拾いをした。
しばらくして、カピバラ、犬、ワオキツネザルなどが乗り込み、群れを追われた大型の鳥がスキッパーの役を務めることになる。
ときには、クジラに助けられたりもして、彼らのサバイバルは続く・・・
という冒険譚を、前作『Away』同様、セリフなしのアニメーションで魅せるアニメ。
人間は登場せず、動物たちだけの冒険譚で、やや擬人化された表現もあるので、ファーストルックは子ども向けっぽい感じがしないでもないか。
舞台設定は不明だが、バルト三国のラトビア発の作品なので、北極圏の氷河が解けたことによる洪水かしらん。
地球温暖化の問題は北欧では切実。
洪水により生物界ヒエラルキーは変化し、陸上の頂点に鳥類に。
海では、大型のクジラが頂点か。
このあたりの設定は興味深い。
小型帆船に乗り込んだ動物たちのバランスもよく、犬や猿はそれなりの小集団が残っている。
スキッパーに収まる鳥は、大集団の中でヒューマニストぶりを発揮したがゆえに群れを追われるあたり切ない。
洪水の中で安住の地を手に入れるような安直な展開にはならず、洪水は突如引いていく。
帆船に乗り込んだ動物たちにとっては、めでたしめでたしなのかもしれないが、そこにもうひとつ寓意めいたものが提示されて、物語は開いた形で終わる。
このラストも切なく、ある種の批判と警鐘が込められているように感じました。
映像が美しいってだけではダメなのが映画です
主人公の黒猫が住みついてる家は、屋根も家の中も結構キレイな状態。
なのでこの物語の世界は、文明が滅びて人間がいなくなってからまだ日が浅い。
一方で家の前の猫のオブジェが苔むしていたり、冒頭のシーンで森の木の上にボートが引っかかっていたりするところを見ると、この世界は大洪水による急激な水位の上昇と、その後の急激な陸地の隆起を短いサイクルで繰り返しているらしい。
(なんでそんな事になってるのか全く意味不明だけど)
なので前回水位が上がった時、猫のオブジェは水没したけど、家の方は水没せず無事だったって事だろう。
そして黒猫はこの家に避難してきて住みついたか、もしくは元々この家の飼い猫だったのかもしれない。
アニメらしく動物キャラの顔を可愛くデフォルメしてるけど、キャラの動き自体は全編セリフ無し(鳴き声のみ)で四足歩行。擬人化せずにリアルに描いてるあたりは斬新だった。
また3Dアニメーションで終始ダイナミックにカメラを動かしてるのも、ゲーム画面っぽいというか目新しくて斬新だった。
でも良かったのはそれだけ。
具体的に言うと、黒猫が船に飛び乗って旅に出るところまではワクワクしながら楽しんで見れた。
でもその後はというと、仲間が増えて賑やかになってくるのはいいんだけど、基本的に目的もなく漂流してるだけなのでだんだん飽きてくる。
(船上で仲間とケンカして水に流されてまたケンカして水に流されての繰り返し)
その中で唯一白鷺だけが塔のような高い山に行きたいという目的を持っていた。
船上でほとんどの時間白鷺が舵を取っていたのが象徴的。
でも本来なら主人公である黒猫がこの役割を担わないとダメ。もしくは舵を取る白鷺と対立する立場にならないと。
(そうでないと黒猫の心理に葛藤が生まれないし、物語にもドラマ性が生まれない)
船の仲間に白鷺が加わった後は、白鷺がストーリーラインの中心にいて、黒猫はただの白鷺のお供状態。(立場逆だろ苦笑)
そして本筋とは関係ないところで他の脇役とドタバタケンカを繰り返すだけ。
せっかく主人公らしく表情が豊かに作り込まれてるのに、めっちゃもったいない扱い。
そしていちばん残念だったのが、終盤のクライマックス。白鷺が天に召される的な演出でいなくなったあと、黒猫の心理に何の変化も生まれていない。
これだと黒猫が何のために白鷺のお供をして高い山まで行ったのか意味が分からなくなる。
結局この黒猫って最初から最後までなんとなくの場当たり的な行動しかしていない。
主人公に何をやりたいという明確な目的がないと、観客は共感できる部分を見つけられず感情移入できない。
この黒猫可愛いねってだけで終わってしまう。
絵は綺麗だったし、演出も良かった。でもストーリー的にはかなり残念な内容だった。
アニメーション監督って綺麗な絵を描けただけで満足しちゃう人が結構多い。でも映画ってそういうもんじゃないでしょ。世界が水没したんならその状況でどう生き抜くか、キャラクターの目的と行動をきっちり描かないと。
2025/4/2
TOHOシネマズ川崎で鑑賞
Flow 生命の流れ
本作で描かれる動物たちはディズニーによる巨費を投じた最新式のCGで描かれる毛の一本一本までその毛並みが再現されたような本物と見まごうばかりの動物たちではなく、どちらかというと拙い技術で描かれた動物たちだ。だがその動物たちにより繰り広げられる冒険の旅は見る者の想像力を存分に搔き立ててくれる。
リアルに再現された動物の姿に想像の余地を抱けないのと違い、本作はむしろその拙さが想像の幅を広げてくれた。もちろんその描かれた物語によるものであることは言うまでもない。
ある日黒猫が住処とする一帯周辺がすべて水に覆われてしまう。たちまちそこに暮らす動物たちも同様に住処を奪われ、彼らは水の恐怖に震えおののく。陸上に生きる陸棲動物たちにとって突然の洪水は脅威であり、激しい濁流に飲み込まれれば深く暗い水の底に引きずり込まれてしまう。それは死の恐怖であった。
しかしそんな水は水棲動物たちにとっては命の源であり、水の中には色とりどりの魚たちががまさに水を得た魚のように泳いでいた。
水棲動物だけでなく陸棲動物たちにとっても命の源である水。人間がいなくなったこの地球上でその表面を覆いつくした水がまるで死に瀕していた地球を再生させてるかのようだ。新しい種に水をやるかのように。
人間のいない世界、今回の箱舟には人間は乗せられなかった。神も前回の過ちに気づいたのかもしれない。
黒猫は水に覆われた世界で命からがら一つの小さなボートに乗り込む、先客のカピバラ、そして後から乗り込んできた欲張りなワオキツネザル、優しい鳥さん、わんぱくな犬たち。船は異なる種の動物たちを乗せて進む。その船に付き添うクジラはここぞというときに助けてくれる心強い存在。彼らははじめこそ反目し合うも皆違う種でありながら互いに協力して旅を続ける。いじわるされた犬たちにも情けをかけて船に乗せてやる黒猫の慈悲深さは難民問題で揺れる人間社会を皮肉ってるようにも見える。
巨大な遺跡に到達すると鳥さんはまるで神のもとに召されるかのように天空に姿を消す。自分の身を挺して黒猫を守った心優しき鳥さんは神に見初められたのかもしれない。そうするとたちまち陸が隆起して広大な大地がそこに生まれる。黒猫たちは安堵するがその一方でクジラは陸に打ち上げられ、いまやその命が尽きようとしていた。どうすることもできない黒猫たちは自分たちの姿が映る水たまりの水面をただ見つめるしかなかった。
洪水により大地が水浸しになれば陸上の生物は生きてはいけない、他方水棲動物にとってはそれは居心地のよいものだ。逆に大地が隆起すれば陸棲動物にはありがたいが水棲動物には命取りになる。
まるで洪水と大地の隆起が地球表面で交互に行われることで地球上の陸生生物と水生生物の命のシャッフルが行われたかのようだ。
生命の交換がなされるかのように失われる生命が新たな生命を生む。本作のラストはそんな光景を描いている。
生きとし生けるもの必ず他者の犠牲のもとにその命がはぐくまれてきた。生きていくには他者を捕食しなければならない。魚を捕る黒猫、黒猫を食べようとした鳥。そうした食物連鎖という循環の下で生命は維持されてきた。この自然のシステムを破壊に至らしめた人間はもういない。
動物たちはこの自然のシステムに組み込まれた存在、システムそのものなので自然には逆らえないし逆らおうともしない。
人間のいなくなったこの世界でこの生命の循環が再びこれからも続いていく。生命はその食物連鎖という循環の中で永遠に流れ続ける。生命の流れ、それこそが映画タイトルのFLOW(流れ)の意味なんだろうか。人間がいなくなった地球はいま再生への道をたどろうとしていた。
台詞もなく、不必要に説明的でもない。見る者の想像の幅を広げてくれるこういう作品は見ていてほんとに楽しい。鑑賞しながら思考を巡らせる喜びを味わえるのだから。
前作「Away」はミニシアターでの上映、今回はシネコンでの上映。出世されてなにより。
猫と美しい水の世界
猫ちゃんが水の中で泳ぐ姿はアニメならではのかわいらしさ。それだけでも見る価値あり!
人類が滅んだ後の世界。
猫の習性で、水を嫌い、いつも単独で生活をしてきた黒猫。ある日突然洪水が起きたことで、1匹で気ままに生きていた猫は仲間と助け合うことを学び、苦手な水に飛び込むようになる。
排他的で同種属だけの群れで生きていた犬やキツネザルは仲間と離れて新しい仲間と助け合う。
それぞれ種族ごとに分かれて生きてきた動物たちが、洪水の世界で一つの船に乗り旅をする。
ヘビクイワシは、洪水にならないと辿り着けない聖地のような場所に向かって舵を取る。
あのクジラのような生物だけは未知の生物なので、洪水にならないと現れない動物なのかもしれない。
洪水の世界はボーダレスの世界。人間の世界で例えるなら国境がなくなった世界と言える。
洪水が起きた時ヘビクイワシは、群れのみんなは空を飛んでいたにも関わらず、たった1匹で地上に佇んでいた。ヘビクイワシが猫を助けたのは、閉鎖的な群れ社会にいるより単独でいる猫にシンパシーを感じたのかもしれないし、種族を超え猫を庇って吠えたレトリバーに影響されたのかもしれない。
カピバラは誰にでも優しく、レトリバーは誰に対してもフレンドリー。
洪水になっても物欲が強く鏡で自分の姿ばかり見ているキツネザルは現代の人間を表している。
猫が水面を覗き込み自分の姿を見つめているようなシーンが何度かあるが、自分ではなく水そのものを見ていたのではないだろうか。カピバラの乗っている船の中には初めから鏡があったが、その鏡を覗き込んで自分を見つめることは一度もしていない。それをしていたのはキツネザルだけである。
エンドロールの最後のシーン。
たぶんまた大洪水は起きる。
大洪水を繰り返している世界で、また泳いでいるクジラは同じクジラであって欲しいと思う。
贄によるパラダイムシフト(世界救済)
映像が綺麗とか劇伴がとても良いとか、アーティスティックとか、猫が可愛いとか、色々、枝葉に語りたいことが多い非常に素敵な作品なのですが、
これ、主題としてあるのは、「贄によるパラダイムシフト」ですよね
この世界は、なぜか、贄により、世界が水没したり、水が引いたりする仕組みなのですね
この文脈で読み解くと、とても面白いのは、
まずは物語の中盤、「鳥さん」の犠牲により、この世界は水没から免れた訳です
彼はまた、自然界の掟として、群れに逆らい、信念を貫き、また舵を手放すことで、箱舟のパーティーからも離脱した
あの「絶望」と「誇り」によって、結果的に、偶然的に、この世を救う訳なのですが、
彼の精神性、魂の浄化性からすると、それは残虐な犠牲ではなく、
むしろこの世からの解脱、昇華の仕組みにより、彼は救われたはずで、
この世界はいったん、水引きの状態に戻ります
そしてラストシーン、海の王、リヴァイアサンとでもいうべき、あの存在、
旅の外に見え隠れする、最期の仲間ともいえる彼の、上陸に喘ぐシーンで、物語は終着を迎えます
(黒猫は、いちど彼に救われていますよね、恩がある状態なので見捨てられないが、どうしようもない)
ラストシーンは、仲間たちの、水面に浮かぶ、浮かない表情
作劇のメソッドで言えば、これは「自問自答」の画ですよね
そしてエンドロールのあとの、最後の最後に鯨が海に還るシーン
おそらく、彼らのうち(おそらくは黒猫)が再度「贄」にとなり、世界を再水没させることで、あの鯨を救ったのでしょうね
その根拠としては、彼がマストの上で未来予知した、偶蹄目による周囲を囲まれる呪術的なあの悪夢
あれは鳥さんが昇天したものとの「対」になっており、おそらく、世界を水没させるための儀式なのでしょう
それを知っているのは黒猫だけなのですね
なぜならば、これは完全なる妄想ですが、
おそらく、最初の世界水没の「贄」となったのは、彼の飼い主なのでしょう、だからそれを知っている
最期に生き残った人間である彼の絶望、彼の犠牲性により、この世界は水没を迎えます
これも推測ですが、猫大好き人間だった彼は、最愛の猫を亡くすのでしょうね、その絶望により、彼は贄となり、世界は水没する
主人公の黒猫はまだ魚も採れない子猫で、だとすると、
親猫が死んでも、子猫が生き残っているうちは、猫大好き人間である彼は死ぬ理由がありませんから
おそらくこの子猫は、彼がいなくなった後に現れた存在であり、たまたま廃墟に居ついたというよりは
おそらくですが、飼い主の生まれ変わり、猫大好きすぎて猫に転生したのでしょうね
偶蹄目の儀式を覚えているのは、前世の記憶の残滓という訳ですね
ラストシーン、陸に打ち上げられた鯨には、黒猫は 恩があり、彼を救うために
彼は再度「贄」となるのですね
そのため、鯨は再び海を泳ぐ世界線で終劇を迎えます
黒猫はもともと、呪術的な存在でもあり、
ラトビアにそのような伝承や文化があるかどうか、私は勉強不足にて、存じ上げませんが
黒猫が あの世界を救うための主人公であるとするならば、
作中の情報をかき集め、推測するだに、この文脈なのではないかなぁと空想します
しかし、「誰ひとり取り残さない」世界とはこれほど大変なことなのですね
犬たちのような愚か者もいれば、鯨のようにそもそも生態や住む世界が違う者もいる
そのすべてをひとつの世界やルール、考え方では到底、包括できない訳で
こうやって世界は、振り子運動で揺れ動きながら、螺旋を描きつつ、時間に沿って前に進むしかないのですね
そういう意味では世界は何も変わらないのかも知れません
とても良いものを観た
「抱きしめたい、この名前もない猫を⋯。」
ずーっとそんな気持ちで見守っておりました。
人間がいなくなったポスト・アポカリプスの世界。
ポスト・アポカリプスとは、文明が死に絶えた後の世界を描くものらしく、
その不思議な世界にどんどん吸い込まれていきました。
その世界の中の森で暮らす1匹のダークグレーの猫が、
洪水と水位上昇によって、水一面になった世界を旅する物語。
猫は旅の中でラブラドール・レトリバー、カピバラ、ワオキツネザル、ヘビクイワシ、謎のクジラなど様々な動物と出会いながら、
流されながら、知恵をつけ、仲間という感覚を知っていくようである。
擬人化されていない動物たちにセリフはないが、感情や個性はあるようで⋯
鳴き声と表情と動きだけで、受け手にいろいろ想像をさせてくれる余白があるところも面白く、
今まで出会ったことのない作品で、絵も構成も荘厳な音楽も、素晴らしく、
特にヘビクイワシが天に昇る比喩的なシーンが美しく脳裏に焼き付いて離れません。
本当にとても良いものに出会えて、ありがとうという気分で映画館を後にしました。
観る側の精神性が問われる
セリフがないせいか一瞬も目が離せず、ただ食い入るように観ました。観る人によっていろいろな解釈がありそうな意味深なストーリーでした。
それぞれの動物の特性がよく捉えられていて笑えるシーンもあります。物欲にとらわれる猿。目先の獲物にしか興味がない単細胞で強欲な犬。仲間思いのカピバラ。臆病だが状況をよく観察していて学習力の高い猫。頭が良く精神性の高い鳥。
最も高尚な魂を持った鳥は天国に召されていきました。
最後のシーンは見る人により解釈が異なると思いますが、私は次のように理解しました。ラスト付近で再びカモシカの群れが何かから逃げるように走っていくのは、再び洪水がやってくることを示唆している。ラストシーンで猫たちが足元の水をのぞき込むのも世界が再び水の中に沈んでしまうことの暗喩。エンドテロップ後に、陸に揚げられていたはずの鯨が悠々と泳ぐのは、世界が再び水没してしまったことを示しているのでしょう。その海にはもう陸地は見えませんでした。救いのない悲しい物語です。
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