Flowのレビュー・感想・評価
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言葉がないからこそ体験できる初めての映画体験
オープンソースのソフトウェアでここまで見応えもあって、世界観も構築されていて、クスッと笑うところもハラハラするところもあって、時間も85分という見やすさ…お見事と言うしかない。
ハリウッドメジャー作品と比べて、毛並みとかの緻密さは無いけれど、その分動きがすごい!めちゃくちゃリアル。動物がモーションキャプチャーで演技した?もはや後半は動物が演技しているとしか思えなかった。
セリフが一切なく、動物たちだけの鳴き声しかないからこそ、どんな国の人が見ても一瞬で世界観に入り込めるんだと気付いた時、言語も宗教も文化も違うけれど、動物を見る目は万国共通なんだと感動した。海外作品を見た時の時々起こるお国柄のセリフに100%理解できない感じが起こらないってすごい。
動物に見えれば見えるほど、猫たちの冒険にハラハラして、没入してしまう。見終わった後軽く疲れたぐらい笑
水害にトラウマがある方は見るの気をつけた方が良いのと、動物たちが少しでも危険な目に合うのは耐えられない!と言う人はオススメできないけど、大丈夫そうなら初めての映画体験ができるのでとってもオススメ!
美しく暗示的なポストアポカリプス世界のネコ歩き
ギルバロディス監督の前作「Away」もこの「Flow」も、物語の前に人間の死があり、それが透明感に満ちたビジュアルの世界にある種の陰影を与えている。
「Away」の少年は黒い精霊から逃れて人里に辿り着くために、本作の猫は洪水から逃れて生きるためにそれぞれの世界を駆け抜けてゆく。旅路をゆく彼らの視界にもまた死の影が見え隠れしており、言葉のない物語に緊迫感をもたらす。
台詞のない映画だと退屈にならないか不安になりがちだが、本作についてはその心配はいらない。上に書いた緊迫感と展開の早さ、風景描写の美しさ、そして何よりも動物たちの動きの素晴らしさに、スクリーンから目が離せない。
風景に比べるとキャラクターデザインは写実性が低いが、フォルムと動きはあくまでリアルで、その加減がとてもいい。不気味の谷に引っかからず可愛らしい魅力を保ちながらも、極端なデフォルメのないキャラがリアリティある挙動をするので、NHKの「世界ネコ歩き」や「ワイルドライフ」でも見ているような感覚になる瞬間があった。生きた動物たちが厳しい自然の中で生き抜く姿を見ているかのように感情移入し、ハラハラさせられた。
特に猫を飼っている人は、あの黒猫の動きを見て「そうそう、猫はこうよ」と思う瞬間が山ほどあるはずだ。もちろんファンタジーなので、実際にはほぼあり得ない行動も出てくるが、細部のちょっとした動きのリアルさがそこに説得力を与えている。モーションキャプチャーのような実物の動きの丸写しではなく、的確に特徴を抽出したアニメーションがとても心地いい。猫の疾走する姿や毛玉を吐くところ、ワオキツネザルの日向ぼっこが個人的には特にツボだった。
各動物の鳴き声は、声優ではなく実際の動物の声だそうだ(ただしカピバラはラクダ、クジラは虎の鳴き声とのこと)。
説明がない分、物語の解釈を自由に想像できる楽しさも台詞のない作品ならではであり、まるで文字のない絵本のようだ。
最初に猫が居着いていた家には、かつて猫の飼い主であるアーティストが住んでいたのだろう。序盤で木に引っかかったボートが映っていたことから、既にこの場所は洪水に見舞われた後で、人間が誰もいないのもその天災が原因と思われる。
再び襲ってきた洪水から逃れるため、道々行き合わせた動物たちの船旅が始まる。最初は他の動物に対し身構えていた猫も、だんだん警戒を解いてゆく。
ヘビクイワシとの関係が特に印象的だ。猫を船に乗せ、怪我を負ってまで同種の仲間から守ったヘビクイワシに猫はやがて心を開き、船から飛び去った彼の後を追って高い岩を登る。
そのてっぺんで、きらめく星に彩られた天空の渦へ吸い寄せられて浮かぶ1羽と1匹。やがてヘビクイワシだけがその渦に吸い込まれ、消えてゆく。とても神秘的なシーンだ。
「Away」では、死を連想させる黒い精霊に少年が飲み込まれた時、渦に吸い込まれるような描写があった。ヘビクイワシはやはり天に召されたのだろう、という気がする。
黒い精霊も洪水も、何故それらがやってきて死をもたらすのかという説明はない。だがむしろ、現実世界で突然訪れる厄災もそんなものではないだろうか。理由がわからない、得体がしれないものに抱く恐れ。言葉で定義されないからこそ、原初的な恐怖や神秘を感じるのだ。
終盤、水が引いた大地に打ち上げられた瀕死のクジラ(ヒレの形など現実のクジラとは違うが、パンフレットにクジラと書いてあったのでそれに倣う)。かつてクジラに命を助けられた猫は、喉を鳴らして寄りそう。
ところがエンドロールの後、そのクジラが大海を悠々と泳ぐ光景が映し出される(同じ個体かは分からないが、同じと考える方が物語として私の好みだ)。世界は再び洪水に見舞われたということか。猫たちはどうなったのだろう。言葉のない物語のオープンエンディング。災禍が終わり、猫たちがたくましく生きてゆくという「お約束」は明示されない。
大地が水に満たされることは人間など陸に生きるものにとっては致命的な災難だが、クジラにとっては世界が広がること、解放だ。そこに悲劇はない、ただ自然の営みが続いてゆくだけ。
自然の大きさと圧倒的なその力、その中で生きる命の小ささと愛おしさ、あえて言葉にすればそんなイメージを、言葉になる前の感触としてこの作品から受け取った。
追記
監督が12年前に製作した短編「Aqua」に、既に本作の骨格がある。「Aqua」はYouTubeに公開されているので、興味のある方は是非ご覧ください。
Flood, flee, flow, and fly. 「2001年」にも比肩する独創的かつチャーミングな叙事詩だ
アニメーションが盛んな日本でもアメリカでもなく、映画産業があるのかどうかも一般に知られていない北欧の小国ラトビアから独創的なアニメーション映画が生まれたことは嬉しい驚きだし、アカデミーの長編アニメーション賞をはじめ多数の賞を獲得してきたことも喜ばしい。もちろん、オープンソースのアニメ制作ソフトウエアの進歩やインターネットを介した国際的な協業体制といった技術革新によって、以前なら夢のまた夢だったことが実現可能になった側面もあるだろう。
ストーリーの流れはシンプルだが、観る人の世代やバックグラウンドによってさまざまな感じ方、楽しみ方ができそう。冒険に心を躍らせ、自分と異なる誰かと仲間になる過程に感動するのもいい。「ジャングル・ブック」「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」そして「2001年宇宙の旅」といった冒険譚を思い起こす映画好きも多いだろう。
もちろん、ノアの方舟の話に代表される「人間への天罰」を読み取る人も少なからずいそうだ。言語により発展した文明が行き過ぎて人類が滅亡した、だからポストヒューマンの世界に言葉はないのだ、といった深読みもできるだろう。登場する動物キャラクターはほぼすべて実在の生物と同じ外見だが、唯一の例外としてクジラに似た巨大な生き物だけはジブリ映画や「アバター」などに出てきそうな異形のクリーチャーとなっており、「Flow」の世界における聖なる存在なのかも。エンドロールの後のポストクレジットシーンに、そんなことを思った。
イマイチよく分からない奇妙な世界観を丸ごと受け入れてしまえば、あとは圧倒的な映像世界に没入するのみ
物語自体はシンプルなのだけど、観た人それぞれにいろんな深読みというか解釈ができるので、難解といえばチョー難解な作品。
陸地のほとんどが水の底に沈んでしまった世界…と言ったらやっぱり頭に浮かぶのは旧約聖書のノアの方舟の物語である。
本作で様々な動物たちが乗り込む小舟が一種のノアの方舟だというのは多くの観客が感じることだと思うけれど、そうするとやっぱり作品のあちこちにキリスト教的なメタファー(暗喩)が散りばめられているのかしらん…と思ってしまう。
劇中では、まさに「天に召された」としか表現のしようがないようなシーンもある。
また、世界の救済と犠牲、ということを描いているようでもあり、なんとなくエンディングを観て自分は「キリストの死と復活」が頭に浮かんだ。
でも、自分はキリスト教徒ではないし、キリスト教にもそんなに詳しくないから、そういうキリスト教的なモチーフとかメタファーみたいな部分は正直よく分からない。
よく分からないと言ったら、本作は分からないことだらけである(笑)。
本作では人間は全く姿を見せない。
冒頭に出てくる山荘のような一軒家には猫をモチーフにした作品を作る芸術家が住んでいたみたいなのだけど、水位の上昇にあわてて逃げ出してしまったのか、どこへ行っちゃったのかよく分からない。
巨大遺跡みたいな建造物とか、人間の文明の痕跡はあちこちにあるけれど、電線とかガスのパイプラインとか工業製品といった現代文明を感じさせるものは一切出てこない。
どうも科学文明が崩壊してしまった後の未来の世界っぽいのだけど、よく分からない。
小舟に乗り込む動物たちは生息域が全く異なるので、なんとなく動物園から逃げ出して野生化した連中のような感じがする。
そうだとすると、やっぱり科学文明が崩壊した後の、生態系がメチャクチャになってしまった未来の世界っぽいのだけど、よく分からない。
クジラのような巨大水棲生物が現れるのだけど、突然変異を起こしたような不思議な姿をしていて、やっぱり未来の物語なのか、それともファンタジックな異世界の物語なのか、イマイチよく分からない。
こういった分からない点について色々と解釈は可能だろうけれど、ひとつヒントとなるのは、Wikipediaによれば監督のギンツ・ジルバロディスが、宮崎駿の演出によるテレビアニメ『未来少年コナン』から多大な影響を受けたと語っている点である。
この点に注目すると、本作で描かれているのは、やっぱり科学文明が崩壊し、生き残りの人類が細々と暮らす世界のように考えても良さそうである。
ちなみに冒頭の一軒家は『アルプスの少女ハイジ』のアルムおんじの山小屋にそっくりなので、監督が宮崎駿の大ファンだというのは気づく人は気づくかも知れない(笑)。
『未来少年コナン』は、超磁力兵器の使用によって大地殻変動が引き起こされ、五つの大陸が海の底に沈んでしまった後の世界を描いている。
本作において、そんな設定は一切語られないけれど、戦争や環境破壊のような、人間の愚かな行為によってそういう大変動が起きてしまった後の世界だと思って観ると理解しやすいことは理解しやすい。
もちろん本作の世界をどう解釈するかは観た人それぞれに委ねられているわけだし、観客のほとんどは監督が『未来少年コナン』の影響を受けていることを知らずに観るだろうし、そもそも『未来少年コナン』を観ていないという人も多いと思う。
だから観客は、このイマイチよく分からない奇妙な世界観を分からないまま、とにかくいったん丸ごと受け入れるしかないのである。
それができるかどうかが、本作を楽しめるかどうかのカギだと思うけど、いったん受け入れてしまえば、あとは圧倒的な映像世界に没入するのみである。
本作はラトビア出身のギンツ・ジルバロディスが監督・脚本・音楽・編集・撮影を全て一人でこなし、スタッフは50人以下、制作費は350万ユーロ(約5.5億円)という低予算で製作されたインディペンデント(独立系)作品である。
これはどういうことかと言うと、一人の天才クリエイターのイマジネーションやインスピレーションによって作り上げられた部分が非常に大きいということであり、本作が難解なのは、一人の芸術家が創ったアート作品を見せられているのに非常に近いからなのだ(…と思う、多分)。
自分も本作を観てかなり衝撃を受けた!
黒猫をはじめとする様々な動物たちの、リアルでありつつもどこか人間性を感じさせる生き生きとした動きから目が離せなくなったし、陸地のほとんどが水の底に沈んでしまった驚異の世界を描いた映像美には圧倒される他なかった!
ただ、正直言うと芸術性が高いインディペンデント作品で上映時間84分は自分にはちょっと長かった(笑)!
アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞した作品にこんなことを言うのは甚だ申し訳ないけれど(笑)、30〜40分くらいの短編でも良かったのじゃないかしらん…などと思っていたら、監督のギンツ・ジルバロディスは本作より前に猫を主人公にした7分半の短編映画『Aqua』(2012)を既に作っていたのである!
『Aqua』は本作の基になったという作品で、本作と同じく世界が水の底に沈んでしまった後に小舟に乗って生き抜こうとする猫の姿を描いている。
本作の動物たちもちょっと手描きっぽい粗いタッチで描かれていたけれど、『Aqua』の猫はかなりデフォルメされたシンプルな線で描かれていて、こちらもかなりアート性が炸裂していて、強く印象に残る作品である。
『Aqua』は、本レビューを書いている現時点でギンツ・ジルバロディス(Gints Zilbalodis)の公式YouTubeチャンネルで視聴できるので未見の方で興味がおありなら是非。
上映時間も7分半なので。
ざわめく木立ち、水際のきらめき☆
劇場公開の時に逃して、ようやくWOWOWで鑑賞
黒猫(名前なし)、お目々がくるくる動く
黒目が大きくなったり、まぶしくて細くなったり、遠くを探索するような視線、びっくりして見開く眼
全編を通して台詞が一切無いので、我々人間が彼らの感情を推し量るに、黒猫の眼が様々な感情を伝えてくれる
そして、しなやかな身のこなし
おそらく人間と住んでいた我が家のベッドにゆったりと身を横たえる仕草、全力疾走したり、高くジャンプする為に身をかがめたり、必死になって泳ぐ姿、感情を表す尻尾の動き、仲間たちに何かを伝える必死な様子…
我々はキャラクターが黒い線でトレースされて動くアニメーションに慣れているが、このアニメには線で縁取られない、或る意味自然の姿そのままの動物たちが描かれる
そして自然の描写!鮮やかな色彩!
生き生きとした葉の連なり、地面の下草の動き、水に浸されて動きだす白い小さな花、青い空、風、雲
美しい宝箱を覗いているようで、その景色の中で愛らしい黒猫が生き生きと冒険する姿から目を離せない
地上波放送がつまらなくて、でも何か美しいものを無心に見たいとき、そんなとき、この「Flow」を見ようと録画したものは保存版にすることにしたほど
あえて難癖をつけるとしたら
動物たちの“感情”が極めて人間くさい点でしょうか…
眼や身体(尻尾)の動きで、彼らが何を言わんとしてるのかを明瞭にしすぎて、こちらが予想したとおりに話が展開してしまいがち、なところかな?
(想定外だったエピソードは、鳥同士が争うシーン
これは読めなかったですね…)
映画館で沈黙の中鑑賞したわけでなく、家族でリビングでストーリーを推測しながら鑑賞できたのも、この作品をより楽しめた点
たまには、こういう風に作品を鑑賞するのもいいですね
ブレーメンの音楽隊じゃないけど
なぜ黒猫🐈⬛なんだろう?
トラやブチや毛足の長いコじゃないのだろう?
とまず思ったが。
カピパラは単独行動するのかな?お湯に浸かっている
イメージだけど、気性は荒いとか。
メガネザルはモノの収集が好きなんか?
あの白いデカい鳥は何だろう、架空の鳥か?
Flowを味方から助けてくれたいいヤツ。
犬🐕🐶はゴールデンレトリバーかな?
人懐こい顔してる。
偶然乗り合わせた難破船みたいなボート🚣♂️🚤
に乗り合わせたコたち、
決して本物のコたちみたいに毛並みが無いけど、
動きが本物ぽくない?
あ、猫🐱🐈の耳、犬🐶🐕の喜び方、他は知らん、
水に入るのを嫌がる猫な筈なのに
犬カキならぬ猫カキどころか潜る←ちょっとムリかな。
色鮮やかな魚🐟を器用に獲って、
🐶や🐔にあげてた。
洪水で逃げて来て流れるままに、一応舵取ってるか?
周りの景色が
ローマのコロッセウム跡みたいだったり
ペルーのマチュ•ピチュっぽかったり、
幻想的な雰囲気。
あの気持ち悪いデッカい魚🐟❓も
水が引き打ち上げられていた。
水中だと怖いけど陸の上なら手出しできないゾ‼️
Flowちゃんもみんなも無事逃げおおせたのかな🐱
呉越同舟
黒猫とその他動物たちの脱出冒険劇
主人公の黒猫の日常に、突然の海面水位上昇が発生し、危機を脱する為に偶々出くわした他の動物たちと助け合って乗り切るストーリーだと思います。自然の美しさや、映画には出てこない人類が創造したであろう猫を模した像など、神秘的建造物も出てきて美しさに見応えを感じます。黒猫の猫らしい性格も良いし、危機を乗り切るのに助けとなってくれた他の生物たちの行く末も手に汗握りながら見る事ができます。
字幕はありませんが要りません
動物しか出てこない作品で、大災害(津波)に見舞われた時、君たちはどう生きるか?…な作品。
序盤で人間が居たような形跡がある事からすでに何度目めかの満潮引き潮が起こっているのかと思います。
主人公(かな?)の猫を筆頭にそれぞれ拠り所とする船に乗る別種族の動物達が時に協力、時に喧嘩しながらも目標とする長い岩のような物を目指します。
たどり着いた先はゴールなのかはたまた序章なのか…
スタッフロールのクジラを見て察してください。
子どもと観てましたが、子どもは子どもなりに色々考えて「こうなんかな?」「あーなのかな?」等と観覧途中に聞いてきました。
セリフが無い分色々考えたり、セリフを勝手に付けたりできるので面白い作品だと思います。
さすが文科省推薦映画だけのことはある!
追伸、犬が全体的に邪魔な事しかしてなかった様な気がします(笑)
映像と音だけで物語を紡ぐ
言語を超えた人間共通の感情を動物で表現?!
最後まで観れた
この世界に引き込まれていく
ドキドキして、ほっとして、癒やされて、寂しい。
なんとも不思議な感覚になる映画だった。
動物が主人公の映画だと、最初から擬人化されていて人間のように話したりするものが多いように思うが、本作は最後まで動物は鳴くだけで言葉は発しない。
主人公の猫はじめ、犬、猿、鳥、カピバラ、どれもその生態をよく観察したのだろう。本能の動きがリアル。しかし、そこにちょっとずつちょっとずつ、人間味という味が足されていくところがこの映画のミソなのだ。
動物たちが、仲間の連帯感を高めるうちに、食料を分け合ったり、船の舵を取ったり、物言わぬ人のごとく振舞い始める。ラスト近くになるとロープを引いて仲間を救出するまで人間味が濃くなる。この過程で、我々も徐々に彼らに心を寄せ、物語に引き込まれていく。そんな仕掛けが施されているように感じた。
しかし一体、この世界は何だろう。災害級の自然現象で滅びた古代文明のような建造物。ノアの箱舟を想起させる神話のような世界観。古代ではなく、これは温暖化で海面が上昇する近未来の地球の姿のようにも思える。
主人公の黒猫が、目が大きくてチャーミング。
また静かな夜に観てみたい。
人を継ぐ
黒猫の方舟
そういや今日(鑑賞した2月22日)は語呂合わせで“ねこの日”とされているんだよね。にゃんにゃん。
だからと言う訳ではないけど、ちょうど先日WOWOWでの放送を録画し、また昨年、『シュレック』以来のドリームワークスの受賞が期待されていた『野生の島のロズ』を抑えてアカデミー長編アニメ映画賞を受賞し、気になっていたラトビアから流れ着いたアニメーション映画。
ただの可愛いにゃんこちゃんアニメじゃなく、大洪水で沈みゆく世界で、一匹の黒猫がボートに乗って…。
もしこれがディズニーなどハリウッド製アニメだったら…
動物たちは擬人化されてキャラデザも可愛らしく。勿論喋る。
主人公の猫はちょっと内向的ではあるけれど、好奇心旺盛で、自分を変え世界を見たがっている。旅立つ時は『モアナと伝説の海』のようなミュージカル風に。
旅の中で出会った仲間たち。
カピバラはマイペース。
猿は几帳面神経質。
犬は陽気なかまってちゃん。
鳥は気高い性格。
そんな個性的な仲間たちとユーモアたっぷりのやり取り、ハラハラドキドキの冒険、皆で危機を乗り越えて、深めた絆をハートフル感動的に。
いや、これだって充分良さそうだ。
しかし本作は、動物たちは擬人化されず、リアルに描かれる。喋りもしない。
台詞ナシ。人間キャラは一人も登場しない。ナレーションもナシ。
何と意欲的!
だが、『ズートピア』など擬人化された可愛い系キャラやストーリー性もしっかりある作品が人気の中で、果たしてウケるのか…? 見る者に伝わるのか…?
これが驚くほど伝わる。評判の良さはすでに周知の通り。
台詞ナシのパントマイムは、古くはチャップリン、ジャック・タチ、Mr.ビーンなど映画の常套手法。
徹底的にリアル志向で描かれた動物たち。その動き、眼差し、表情、生態を含め、言葉以上に物語る。
聞こえない台詞があたかも聞こえてくるようで、動物たちの動向にも引き込まれる。
先に挙げた“もしもディズニーアニメだったら?”のキャラ性格も見ていてイメージが沸いてきて。
擬人化とまではいかないが、動物たちが喧嘩したり、物を分け合い、懇願したり、助け合ったりも見受けられるが、動物たちの行動など人間の常識を凌駕する。
もし動物たちを同じような状況下に置いたら、こんな行動をするのかもしれない。是非何かで検証して欲しくも思った。
さながら本作は、人間が居なくなった世界で、動物たちが一隻のボートに乗り合わせて行くリアル・ドキュメンタリーのよう。
動物たちはリアル志向で描かれるが、唯一クジラだけ。『アバター』のような神秘的。
2019年の『Away』で監督・音楽・編集などを兼任し、高い評価を得た注目のアニメーション作家ギンツ・ジルバロディス。
本作でも監督・脚本・製作・音楽・編集・撮影までも兼任。5年半の歳月を経て完成。
低予算、スタッフも僅か50人で、ハリウッドのビッグバジェット・アニメとは比べ物にはならない。
それは動物たちの毛並みや質感などの見劣りにも表れているが、決して本作がクオリティーが低い訳ではない。
いや寧ろ、風景の美しさに驚かされる。
人間が一人も居なくなり、再び緑に還った世界。そういう終末世界はよく映画で描かれるが、きっとそれは誰しも望んでいるのだろう。
洪水で水没した世界は恐ろしくもあるが、それがまた自然と映える。尚、水の描写は『崖の上のポニョ』を参考にしたという。偉大也、宮崎駿!
人間が遺した建造物もそれらに包まれる。
緑、水、遺された建造物…。そのコントラストの美しさと言ったら!
こういうインディペンデント作品が評価され、ディズニーなどを抑えてアカデミー賞を受賞するのは大変喜ばしい。
今年もこの部門は、『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』に獲って欲しい。
台詞やメリハリのあるストーリー性は無いので、明確な旅の目的は無い。動物たちもたまたまボートに乗り合わせたにしか過ぎない。
かと言って、動物たちの動向に何も無いという訳でもない。
動物たちが一隻のボートに乗り合わせて、その果てに…本作は言うまでもなく、現代版“ノアの方舟”。もしくは、“子猫物語”ならぬ“黒猫物語”…?
本来水嫌いな猫。当初はボートから落ちた時、水の中でただもがくだけで、一人でボートにもよじ登れなかった。それがやがて一人でもよじ登れるようになり、水中に潜って魚を捕らえるまでになる。
他の動物たちで特に感情移入したのは、鳥。早い段階から猫を助けるも、それ故仲間から傷付けられ、見捨てられる。ああいう異端の存在が仲間から追放されるのは自然界でもある事だし、何だか人間世界にも通じる。ボートに一人立つ姿は神々しくもあり、最期は幻想的荘厳的でもあった。
反対にイラッ!…とさせられたのは、途中乗り合わせた犬の仲間。残して置いた魚を勝手に食べちゃうわ、猿のコレクションを壊すわ、クライマックスの危機的状況でうさぎを追い掛けて居なくなるわ…。動物的本能とは言え、コラッ!
描写の一つ一つ、細かい所にまで、監督の動物たちへの愛情をひしひしと感じた。
特にラスト、危機を助け合い、新天地で再会を喜び合う彼らのじゃれ合いに、心がほっこり。
動物も人間も同じ。
作品の心地よさ、魅力、没頭感もさることながら、
水が引いた世界、新天地での動物たちのその後を見たい。
すでに取り掛かってるであろう新作の次でもいい。何年掛かってもいい。
監督、是非続編を!
だって、また彼らに会いたい!
アカデミー賞の長編アニメ映画賞を受賞したらしいが、何を描きたいのか...
逞しく生きる生命
水に沈んで行く世界で、黒猫の逞しく生きる姿を描いたロードムービー。
舞台は人間がもういなくなった世界。
マットなタッチで描かれた動物達の躍動感が素晴らしく驚く。
そして草木や水面など自然の描写は、実写のようにリアルで実に美しい。
この対比が面白いですね。
知り合った動物と様々なピンチを切り抜け、段々と巨大都市に近づいていくのは中々に冒険心を掻き立てられます。
途中道具を使ったり、漁を覚えたり、仲間を想う気持ちを覚えたりと成長していく彼ら。
とにかくカピバラが頼りになる。
打ち上げられた船に取り残されたシーンは本当ドキドキしました。
ラストも儚く、大きな自然の力とその中で逞しく生きる生命を描いていました。
これは面白かったです。
素晴らしすぎた
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