「ルカ・柚実がサイコー!」ネムルバカ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
ルカ・柚実がサイコー!
青春コミックの実写映画化らしいですが、原作未読です。予告も目にしなかったので、予備情報もゼロです。でも、「ベイビーわるきゅーれ」シリーズの阪元監督作品であり、キービジュアルからも同じ雰囲気を感じ取り、ちょっと期待して公開初日に鑑賞してきました。
ストーリーは、大学の女子寮で二人暮らしをしていて、インディーズバンドのギター&ボーカルとして夢を追う先輩・鯨井ルカと、これといった夢もなく古本屋でなんとなくバイトを続ける後輩・入巣柚実が、変わり映えのない日常の中でも二人で緩く楽しく暮らしていたが、ルカにレコード会社からデビューの話が舞い込んだことで、二人の生活が大きく変化していくというもの。
期待どおり、完全に「ベイビーわるきゅーれ」とかぶり、二人の醸す空気感はちさまひのそれとよく似ています。もちろん、そこに既視感はあるものの、これも悪くないと思わせる独自の関係性が垣間見え、この緩くどうでもいい会話の応酬をいつまでもずっと見守っていたいと思わされます。
そんな二人が、互いをどれほど大切に思っているかが伝わってくる終盤は、なんだか一気に切なくなります。先のことをあまり考えてなさそうな柚実は、ルカとの生活は永遠に続くものだとぼんやり思っていたのでしょう。でも、ルカはもっと現実を見ていて、後ろ髪を引かれながらもバンドメンバーに別れを告げ、メジャーデビューを目指します。これにより、二人の共同生活を終わりを迎えます。
しかし、夢がかなって売れっ子となりながらも、思いとは異なる仕事をさせられる中で、ルカは違和感や消化できない思いを募らせていったのでしょう。ラストステージで歌い上げる「ネムルバカ」は、やりたいことをブレずに貫く強い決意の表れであり、その原点を与えてくれた柚実への感謝だったような気がします。そんな今の自分を柚実に見届けてほしかったのかもしれないし、夢や目標のない柚実への精いっぱいのメッセージだったようにも思います。ルカの思いは観客の誰にも理解されなくても、柚実とかつてのバンドメンバーにだけは、しっかりと受け取ってもらえたに違いありません。
本作は、「やりたいことが見つからない」「何をやればいいのかわからない」という思いを抱いて焦燥感に駆られる若者には、刺さるものがあるのではないでしょうか。また、かつてそんな思いを感じ、今は惰性に流される日々を送る大人には、懐かしく沁みるものがあるように思います。
主演は、久保史緒里さんと平祐奈さんで、二人の掛け合いが最高すぎます。ぜひこのコンビで、本作の前日譚や後日談を描いてもらえないでしょうか。脇を固めるのは、綱啓永さん、樋口幸平さん、兎さんら。
ルカがデビューを受けたのは、売れるためでなく現状のダサイクルを抜け出すためだったのでしょうね。
そして、最後のライブでもまたダサイクルを突き破った。
それだけに、柚実にも何かしら前向きな変化がラストに欲しかったなぁ、と思ってしまいます。
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