ネムルバカのレビュー・感想・評価
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青春の終わりの痛みがビシッと伝わってくる
阪元監督らしい、というか、ベビわるらしい若い女性ふたりのわちゃわちゃ描写が炸裂、と思ったら、違う作品なのだから当たり前といえば当たり前なのだが、トーンも見せ方もかなり違う。原作にかなり忠実なノリだと思いつつ、そこは映像化の独特のノリでもあり、ルカと入巣は深いところで繋がっているようで、同じ方向を見ることなく、常にすれ違っている。
阪元監督自身が「ベビわるは永遠でネムルバカは有限」とコメントされていたが、「青春映画とは終わりを描くもの」と考えている自分にしても非常に納得のアプローチで、終わってしまう、変わってしまったという感覚がいろんなベクトルで押し寄せる「A、あるいは人間。」のライブシーンではまんまとすっかり涙ぐんでしまった(このときの平祐奈の完璧な「A,、あるいは人間。」っぷりはかなりの見ものだと思う)。
そしてその後の「ネムルバカ」の歌。撮影も編集も一旦終わった段階で、平祐奈が「歌を録り直したい」と言い出したことで、よりライブ感と想いが増したというのも納得のシーンであり、そして原作者が映画のために描き下ろした歌詞を踏まえると、「ルカ先輩の入巣に対する想い」がギュギュッと詰まっているようで虚を突かれるので、ぜひパンフとかどっかで歌詞はチェックしてほしいと思う。
あと久保史緒里のダルいコメディエンヌっぷりは最高。
今年観た邦画の中ではかなり好き
「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」「リンダ リンダ リンダ」、古くは「青春デンデケデケデケ」、最近だと「知らないカノジョ」など、音楽青春映画には大好きな作品が結構ある。もちろん洋画にも好きな音楽劇映画はたくさんあるけれど、邦画作品の“青春”のとらえ方や描き方にある日本特有の感性が自分の記憶と感情により響くのかも。「ネムルバカ」はそうした音楽青春物のお気に入りに加えたい快作で、ジャンルを問わず今年観た邦画の中でもかなり好きだ。
阪元裕吾監督は「ベイビーわるきゅーれ」シリーズで培った、女子2人の何気ない日常会話から醸し出すシスターフッドの要素や、台詞だけでなく沈黙の間(ま)やカット編集のタイミングでも笑わせるユーモアセンスを、本作でも大いに発揮している。もちろん、石黒正数による同名原作漫画との相性も良かったのだろう。声を出して笑った場面がたくさんあったが、とりわけ変身ベルトから飛び蹴りのくだりでは爆笑した。
原作は未読ながら、コマ投稿できる「アル」というサイトで数ページを見ての比較では、久保史緒里が演じた入巣柚実に自堕落な感じが少々足りない気がする。乃木坂46の現役メンバーなので、所属事務所からの要請か製作側の配慮かはわからないものの、アイドルとしてのイメージを崩すような描写は控えたのだろう。ドラマ出演作の「どうする家康」や「未来の私にブッかまされる!?」などでのお姫様やヒロインはパブリックイメージに合うキャラクターだったが、入巣役はやや挑戦だったか。ルカとの会話の掛け合いでも、久保のツッコミがちょっと弱い場面がいくつかあった。
ルカ役の平祐奈はベビーフェイスで背も低めということもあり、入巣より先輩の設定に初めのうちちょっと違和感があったが、すぐ気にならなくなった(後で調べたら平が現在26歳、久保は23歳で、ちょうどいい感じの実年齢差だった)。やさぐれ気味で鬱屈した思いを抱えている感じはすごく良かったし、ルカとの先輩後輩の親密さと距離感の絶妙な塩梅も久保と2人で自然に表現できていた。歌唱は頑張ったけれど、感動的というほどでも。もっとも、アマチュアバンドの状態でしばらくくすぶっているという物語の設定上、あまりうますぎない、魅力的すぎないボーカルであることが必然で、演技としても演出としても仕方ない部分があったのも理解できる。
細かいところでは気になる点もいくつかあったが、総合的には大いに楽しめた。阪元監督も今後アクション作品以外のオファーが増えるのではないか。
大変面白く観ました!
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
(レビューが溜まっていたので数行で短く)
結論から言うと、今作の映画『ネムルバカ』を大変面白く観ました。
鑑賞前は、『ベイビーわるきゅーれ』の阪元裕吾 監督の作品の情報ぐらいで、ほぼ前情報なく観て、一体これはどういう映画何だろう?と観ていると、なるほどこういう映画だったのか!との合点の行く内容だったと思われます。
後輩・入巣柚実(久保史緒里さん)と先輩・鯨井ルカ(平祐奈さん)のダラっとした日常会話も心地良く、やはり阪元裕吾 監督の人間描写の演出はセンスあるな、と改めて思われました。
一方で、男性陣の会話は、田口(綱啓永さん)と伊藤(樋口幸平さん)はまだ見れましたが、特にレンタルビデオ屋のバイトの先輩・仲崎(ロングコートダディ・兎さん)の会話は心底ダサく、会話劇としてはどうなんだと、と引っ掛かりはありました。
ただ、男性陣の会話のダサさが、なるほど後半に効いてくる作品だったんだと次第に分かるのも納得感がありました。
レンタルビデオ屋のバイトの先輩・仲崎はファスト映画配信者で、後に訴えられるのですが、仲崎は仲間内で褒め合う、先輩・鯨井ルカからすれば「駄サイクル」にいる人物として描かれています。
一方、先輩・鯨井ルカも、仲崎を「駄サイクル」と嘲笑しながら、自身もバンド活動で「駄サイクル」の中の1人との認識が独り言で同時に示される描写も、この映画の秀逸さの1場面だったと思われます。
先輩・鯨井ルカが音楽活動でプロになる目標と実現がありながら、一方で、後輩・入巣柚実は「何かしたいけど何ができるのかわからない人」の「8割」の方の人だと自身も認識していて、今作が、その8割の方の人に対して優しいまなざしを持っている所にも、人間理解の深さを感じました。
今作の『ネムルバカ』は、プロのミュージシャンを目指す先輩・鯨井ルカと、先輩の同居人である「何かしたいけど何ができるのかわからない」後輩・入巣柚実とがまつわる映画だったと、最後の方でようやく分かるのですが、その紆余曲折さの描写の積み重ねが、全体として普遍的な私達の日常に通じている素晴らしさがあったと思われます。
個人的な好みとしては、先輩・鯨井ルカが、(今後失敗するか成功するかは別に)自身の望む音楽をあくまで選択するのか、妥協しても業界の中を生き抜こうとするのか、先輩・鯨井ルカの選択と未来を、いずれにしても取り急ぎの結論として、具体的に最後に描いて欲しかったなとは思われました。
それは、インディーズ映画で自身の望む映画表現を実現しながら、メジャーな場所でも勝負が出来ている、現在の阪元裕吾 監督なら、先輩・鯨井ルカのいずれの選択と未来も、説得力を持って描くことが可能だったと思われたからです。
個人的には、後輩・入巣柚実が憤慨していた先輩・鯨井ルカのアイドル的電子音的ソロ曲含めて、楽曲が好みで、もちろん先輩・鯨井ルカのバンド・ピートモスの「ネムルバカ」「脳内ノイズ」の演奏含めた説得力含めて、楽曲のセンスが良かったのも、映画の質を高めていたと、僭越思われました。
ネムルエイガ
うーん、期待したのとなんか違った。とにかくどうでもいい中身も意味もないダラダラウダウダした日常の描写が延々続き、あまりの退屈さにちょっとウンザリ。それが1時間以上も続く。このダラダラウダウダ感、どっかで観たような……と思ったら監督が『ベイビーわるきゅーれ』の人だった。こういうのが好きな人もいるかもしれないが、僕はこの監督の作風は合わない。ちょっと眠くなった。ボーカルの先輩だけが大手レコード会社にピックアップされ、他のバンドメンバーが切り捨てられるという展開も、この手の作品では何千回と観てきたような話だ。
ただクライマックスのライブシーンはベタだとわかっていてもジワッと来るアガる展開で、そこだけはなかなか良かった。平祐奈はギターも歌もすごく練習したんだろうね。久保史緒里も演技が上手かった。しかし主演の女の子2人が上手くて可愛いってだけじゃ2時間持たないのも確かで、映画自体が面白くないとやっぱりちょっとキツい。
正直あまり期待してなかったけど
ぜんぶ良い
バンドで夢を追う者と何も目標がない者による物語。
大学生にありがちなモラトリアム感ある生活が描かれ、どこにでもあるような、誰もが一度は経験したことがあるような日々が懐かしくまぶしい!
何者かになりたくてもがいている人には痛みを伴って刺さるだろうし、やりたい気持ちはあるけれどしたいことがない人には共感すること必至。
そして、その職業になること自体が目標になってしまう危うさを描いている映画でもあるとおもう。
まあ、社会人になるとこれもよくある話で、「自分がしたかったのはこんなことなんだろうか…」みたいな若さ故の迷い。
良い。全部、良い。
そんな若さもゆるさもまぶしさもほろ苦さも全部全部良いんだよ!輝いてるんだよ!
これはルカと入巣のシスターフッドの物語でもあるし、最高純度の青春物語でもある!
ラストはもう感涙…。いろんな想いがあふれて涙がこぼれる…。
あと、坂元監督ファンとしては、入巣とルカの何気ない会話で「べびわる」のちさと&まひろを思い出してしまうのは仕方ないこと。このゆるい日常トークが大好き!途中からルカがまひろに見えてきてしまうのは末期的なのかもしれないけれど、観ながら思わず微笑んでしまう。
何度でも観たい。
ダサイクル
ジリジリとする映画
「歌が突出していい」
答えづらいだろうから今聞いているんだよ
先輩と後輩の繰り返す日常
そんな日常に突如終わりが訪れる
別々の道を歩むことになる先輩と後輩
先輩たちと環境が似ている箇所が多くないのに、自然と自分に置き換えて共感してしまう
あっという間に時間が過ぎ、終わったあとはひとりで余韻に浸りたくなるそんな映画でした
映画終わった後に一人で余韻に浸りたくなるのは私としては珍しい感情
一人でその感情と向き合っているうちに気付いたこととしては
「漫画のような、ドラマのような青春がすべてじゃない」ってこと。
キラキラした学生生活を当時行えず目を背けたかったんですが、映画を見て日常こそが幸せなんだと気づくことが出来ました。
意味のないって思うそんな日も大切だったんだなと
今までの記憶を青春に更新しつつ、これからそう思えるようになりたいな
笑いあり、涙ありで感情を豊かにする映画に見えながらも、こうして考えさせられる映画でした
入巣とルカのやり取りがクセになる
ネムルバカとネムラナイテンサイ
原作未読にて観賞。
女子大生とバンドボーカルをしている女子がシェアルームをしている中で起こる日常系ストーリー。
べびわるの阪元監督が製作したとのことで、興味を持ち観賞した。
本作は夢を追いかける者とそうでない者の対比が描かれる。シェアルームで同じ生活をしている彼女達であるが、夢を追いかけるボーカルとただなんとなく生活している大学生。どちらが素晴らしいとは言わないが、低い生活水準の中で希望を持ちながら生活していくのとそうでないのでは心の持ちようは変わってくる。
ふたりの仲がいいだけに、核の部分が異なるふたりを観ていると、ゆるい日常との対比も相まって、深い絶望感を感じてしまう。
ボーカルのメジャーデビューをきっかけに離ればなれになったが、その後のライブでボーカルが失踪。最後のシーンで大学生は新たなルームメイトと生活する様子が描かれる。
アンコールでネムルバカを歌った彼女はてっきり元の生活に戻るのかと思った。しかし、それは裏切られた。この映画の観客は理解に苦しむバットエンドを迎えてしまう。
若いふたりにとっては、お互いが一時的なルームメイトだった。そう割りきるほかに落とし所はつけられないだろう。
本作は、べびわるの仲良しふたり組を期待すると痛い目をみるため要注意だ。
夢と現実の間で揺れる若者たち
2人の演技とスカッとラストが─
荒比屋土倍(笑)は、あの人。
「努力すんの、コスパ悪いじゃないですか」と発言するある登場人物に対して、「御託ばっか並べて、何もしないヤツが一番ムカつくんだよ!」とドロップキックを放つルカ(平祐奈)。
社会や生活との折り合いに課題があったり、大切な人との関係構築でも、ぎこちなさが浮き彫りになったりしてしまう不器用な登場人物たちを「ベビわる」から一貫して描いている阪元監督にとって、そういうスマートさを気取る輩に対し思いっきり中指を立てつつも、(多分映画の中のルカも同様だと思うが)自分自身にも喝を入れるドロップキックだったように感じて、いい場面だった。
リタイアするような年になった自分からすると、今作の中で出てきた「何かしたいけど、何ができるかわからない人が8割」といったセリフは、一見正論っぽく響くが、それはモラトリアムだから許される言説でもあって、人は結構、ささやかでも、自分のできることすべきことを見つけてしぶとく生きていく生き物だとも思う。
大人社会の代表者みたいな、音楽プロデューサーの粳間や、タレント部門担当の荒比屋土倍(なんていうネーミング笑)だって、こっち側からの視点ではヤラシイ面しか見えなくても、きっと何らかの熱量を持った努力があったからこそ、その地位にいるはず。
でも、まだ現実とぶつかる経験がないモラトリアムの時期は、そこまで想像できない。結果、自分周りのことで精一杯で、ルカのいう「駄サイクル」にハマっていってしまいがちにもなる。
そんな青臭さが、観ていて気恥ずかしかったけれど、ちょっぴり懐かしくもあった。
劇中歌「ネムルバカ」や「脳内ノイズ」の歌詞は、原作者の石黒正数とのこと。自分がこれまで感じてきた阪元監督の世界観にも一致してる感じがして、この映画化はとても幸せなコラボだったのではないかと勝手に推測している。
久保史緒里と平祐奈のコンビが、ベビわる(特にエブリデイの時のうだうだした感じ)のちさまひをほうふつとさせて和んだし、荒比屋土倍役で伊能昌幸が出てきた時は、とてもアガった。ロンコーの兎のウザさも、いい感じ。けど、それ以上に、ピートモスのメンバーが、よかった。クライマックスでの彼らの姿は、今作の映画化の一番価値があった場面ではないかと思う。
ちなみに、来場者特典のステッカーは、伊藤と田口と柚実とルカの4人が並び立つ場面のものでした。
良かったが歌が活かせてない
最後のタイトルでもあるネムルバカという歌を歌うのだが、歌詞がよく聞き取れなかった。
その後、配信で聞くといい歌詞。
寝言という伏線をリズムをおぼえるくらいわかりやすく出して、最後にその伏線を出しつつ、フラッシュバックさせて終われば良かったのでは・・・と思う
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