ボウリング・フォー・コロンバイン : 特集
お笑いゲリラ、マイケル・ムーアを直撃!
繰り返すが、ムーアは「お笑いゲリラ」だ。「社会派ドキュメンタリー作家」などとカン違いしてはいけない。筆者がムーアを共同取材した時にも、カン違いオヤジがいた。
ラジオ局のレポーターと称するオッサンが、ムーアが部屋に入ってくる前から「『ボウリング・フォー・コロンバイン』はドキュメンタリーとして間違ってる」と息巻いていた。曰く、「あまりにも一方的だ。銃器の所持規制のプロパガンダだ」
「この映画は観客を1つの考えに誘導しますね」。オヤジがさっそく噛み付いた。「たとえばあなたは、小学生がクラスメートを射殺する現場にいた教師が言葉に詰まった時、彼女を抱きしめてしまいますが、報道はもっと客観的であるべきでは?」
「じゃあ、彼女を黙って見てろってのか?」ムーアは訊き返した。「僕はレポーターじゃない。ニュースを読み上げるだけのTVキャスターとは違う。僕は……何よりもまず人間だ。目の前で教え子を殺された記憶を呼び戻された女性教師が絶句して泣き崩れたのに、それを冷酷に見てるのがジャーナリストのあるべき姿だというのなら僕は失格だ。僕は彼女を思わず抱きしめずにはいられなかった。それを撮影して映画に使うべきではない、という人もいるだろう。でも、僕は映画作家なんだ。作品に自分の思いを込めるのは当然だろう。言いたいことを言うのは当たり前じゃないか」
自分の思想がない哀れなラジオ・レポーターはショボン。そこで別の記者がチャールトン・ヘストンに関する質問。ヘストンは銃の所有権を守る団体NRA(全米ライフル協会)の代表。NRAはコロンバインの惨劇があった直後に現場に近いデンバーでガン・ショー(銃の展示即売会)を強行し、ヘストンは「私から銃を取り上げるなら私を殺せ」と演説した。「ボウリング・フォー・コロンバイン」の最後でムーアはビバリーヒルズにあるヘストン氏の自宅を突撃取材するが、ヘストンは都合の悪い質問には黙り込んでしまう。NRAは「ムーアはヘストンがバカに見えるように恣意的に編集した」と非難した。
「『~コロンバイン』を観ればわかるがヘストンのインタビューはワンカットでまったく編集してない。僕も彼の答えにはショックを受けたよ。なんで銃を持つ必要があるんですか? と聞いたら、『いろんな人種がいるからな』と答えたんだよ。つまり銃は白人以外の人種を撃つためのものなんだと!」