「淋しさの正体」ファーストキス 1ST KISS 佐伯彼方さんの映画レビュー(感想・評価)
淋しさの正体
分担が決まっていた柿の種とピーナツ。
マグカップの上に乗せた食パンときちんと茶碗によそわれた卵かけご飯。
あの時間にホームにいる理由になったコロッケとチョコレートドーナツ。
タイムトラベルのきっかけになった餃子。
色んな会話を重ねた行列の出来るかき氷。
タイムトラベルが現在に影響することに気づくきっかけのとうもろこし。
二人で帰り道に買い食いしたアイス。
そして、駈と入れ違いに届いた餃子。
食べるということは生きるということ。
だから、同じテーブルで食事をするということは、一緒に生きるということだ。
成り行きでなく本人たちの意思であのかき氷に並んだ時から、二人は一緒に生き始めたのだと思う。
一人で食べるためにカンナが注文した餃子は、二人で食べるために駈が注文したものに。
駈が一人で食べるために買ったコロッケとドーナツは、二人で飾るための花に。
あの手紙を書きながら、それでも最後まで未来が変わっていることを駈は望んでいたのではないか。
三年待ちの餃子のお届け予定日の通知が来た時、駈はどんな気持ちだったんだろうか。
朝は和食派の駈が買ってくれた、パンが美味しく焼けるトースター。
味の違いは分からなくても、そのトースターで焼いたパンはきっと駈の想いの分だけ暖かいはず。
もし未来が変わっていなくても、自分が一緒にテーブルを囲めなくても、美味しいものを食べて欲しい。
こんなに優しくて暖かい愛は、他にはない。
けれど、あなたと食べればきっともっと美味しかった。
これもまた愛で、淋しさの正体なのだと思う。
はじめまして!素敵なレビューに激しく同感です!
「他人同士が同じ物を食べる奇跡」って言葉に人を想う気持ちの尊さを感じました!塚原作品にしては久しぶりに映画してましたね(失礼w)