「観ている者の集中度の限界を超える長い長い迫力のある戦鬪シーンと敵市民の数の多さに圧倒される」ブラックホーク・ダウン Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
観ている者の集中度の限界を超える長い長い迫力のある戦鬪シーンと敵市民の数の多さに圧倒される
リドリー・スコット監督(ブレードランナー等)による2001年製作のアメリカ映画。原題:Black Hawk Down、配給:東宝東和。
1993年10月3日、ソマリアの首都モガディシュにおいてアメリカ軍と強権者アイディード将軍派ソマリア民兵とのあいだで発生したモガディッシュの戦闘を、リアルに描いた映画。
従来の観客の集中度を配慮した戦争映画と異なり、戦闘シーンが長く長く続くので、見ているこちら側がどっと疲れてしまった。夕刻敵側がようやくお祈りの時間となり攻撃が止まり、ホットした自分に気づく。それも束の間、今度は真っ暗闇の中での戦闘に突入。幸い米軍は夜でも見えるの夜間暗視ゴーグルが有り、その点では有利で有るが、市民兵士の圧倒的な数に見ているこちらも恐怖を覚えた。
戦争の素人としては、ヘリコプターのMH-60ブラックホークを数台有する米軍が空からの攻撃もできて、圧倒的に有利に思えるのだが、市街戦ではそうでもない様で、ミサイン弾でヘリコプターを2機狙撃され墜落。乗り込み員救助のために米軍は向かうが、またそれで多くの兵が犠牲になる。事実らしいが、ヘリコプターに乗っていた2兵士が戦うために敢えて地上に下ろしてもらうのが印象的。彼らは結局、戦死してしまうのだが。
モガディッシュの戦闘は、敵側幹部の多くを捕虜にでき、目的を達成できた作戦であった。しかし、こうして徹底的にリアルさにこだわって戦鬪を描くと、この国で米軍が戦争をしている意義に大きな疑問符が付けられるのは、判然としない部分も自分には残るが、監督や脚本家の狙い通りなのか。
大義名分としては、非人道的な独裁者から市民を守るために、米軍は国連と協力して戦争を行なっている。否、俺たちは仲間のために戦っているんだと強調されていたが、独裁者を倒しても代わりが登場し内戦は続くというソマリア人の言葉に、説得力を感じた(史実的にも実際そうであった)。女や少年も参加する対米の戦い。あまりにも多い市民兵、そして命懸けで戦う姿勢。死者は米軍19名、国連参加軍(マレーシア、パキスタン)2名に対して、ソマリア側は200〜500名。
遠い異国で、何のために、米軍兵士は多くを殺し殺されるのか?疑問を感じざるはえなかった。実際に、映画でも紹介されていたが、この戦闘後にクリンントン大統領は米軍撤退を決めた。
ひたすら戦鬪だけをリアルに描いた映画であったが、それでもソマリアの海岸の美しさ、飛翔する複数のブラックホークのメカニカル美、夜明けのモガディシュの街の都市美が映し出されれるのは、リドリー・スコット監督らしさか。
製作ジェリー・ブラッカイマー、リドリー・スコット、製作総指揮サイモン・ウェスト マイク・ステンソン、チャド・オマン、ブランコ・ラスティグ、原作マーク・ボウデンのノンフィクション小説『ブラックホーク・ダウン アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録』、脚本ケン・ノーラン(トランスフォーマー最後の騎士王等)、スティーブン・ザイリアン(シンドラーのリスト等)、撮影スワボミール・イジャック、美術アーサー・マックス、編集ピエトロ・スカリア、音楽ハンス・ジマー。
ジョシュ・ハートネット(エヴァースマン)、ユアン・マクレガー(グライムス)、
トム・サイズモア(マクナイト)、サム・シェパード(ギャリソン)、エリック・バナ(フート)、ジェイソン・アイザックス(スティール)、ウィリアム・フィクトナー(サンダーソン)、ユエン・ブレムナー(ネルソン)、ガブリエル・カソーズ(カース)、
キム・コーツ(ウェックズ)、ロン・エルダード(デュラント)、トーマス・グイリー(ヤレク)、チャーリー・ホフハイマー(スミス)、ジェリコ・イバネク(ハレル)、グレン・モーシャワー(マシューズ)、ジェレミー・ピベン(ウォルコット)、ブレンダン・セクストン3世(コワレウスキー)、ジョニー・ストロング)シュガート)、リチャード・タイソン(ブッシュ)、ブライアン・バン・ホルト(ストルーカー)。
Kazu Annさん
延々と続く恐怖、戦う事の惨たらしさと虚しさが本当にリアルでした。
それらを理解していながらのプーチンのウクライナ侵攻、そして未だ誰にも止められていないという現実が、虚しく悲しいです。