「最後にあれをやっちゃうと、一定数の低評価がつくのはデフォだと思う」映画検閲 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
最後にあれをやっちゃうと、一定数の低評価がつくのはデフォだと思う
2024.9.19 字幕 アップリンク京都
2021年のイギリス映画(84分、R15+)
1980年代のビデオ・ナスティ論争時代の映画検閲官の精神崩壊を描いたスリラー映画
監督はブラノ・ベイリー=ボント
脚本はブラノ・ベイリー=ボント&アンソニー・フレッチャー
原題は『Censor』で「検閲」という意味
物語の舞台は、1980年代のイギリス・ロンドン
サッチャー政権が打ち出した方策により、個人的に販売された低予算ホラーも検閲の対象となり、有害と思われるシーンはカットされることになった
イギリス映画分類委員会の検閲官として働いているイーニッド(ニアフ・アルガー、幼少期:Beau Gadsdon)は、「リトル・ミス・パーフェクト」と呼ばれるほどに、優秀な検閲を行なっていた
委員会には、彼女の他にもサンダーソン(ニコラス・バーンズ)、アン(クレア・バーキンズ)、パーキンズ(ダニー・リー・ウィンター)などが所属し、彼らをまとめているのはフレイザー(ビンセント・フランクリン)だった
フレイザーは映画プロデューサーたちと仲が良く、とりわけホラー映画を手がけているダグ・スマート(マイケル・スマイリー)とは旧知の仲だった
ある日、職場にダグが訪れ、イーニッドに目をつける
「検閲に飽きたら銀幕デビューさせてやる」と言うダグは、ホラー映画監督のフレデリック・ノース(エイドリアン・シラー)との新作を手がけていた
前作「野獣男」が大ヒットし、その続編を制作していて、ダグはイーニッドに試作段階の映像を見せることになった
映画は、その映像に幼少期に失踪した妹のニーナ(Amelie Child Villiers)らしき女性が映っていたところから動き出す
それは女優のアリス・リー(ソフィア・ラ・ポルタ)で別人なのだが、イーニッドは彼女が生きている妹だと思い込んでしまう
イーニッドが検閲を繰り返す中で、残虐なシーンを見すぎておかしくなってしまうとか、精神的な負担から見逃して問題になってしまうとか、過去に検閲した映画の模倣犯が現れてしまい、その責任を追求されるなどのストレス過多の様子が描かれていく
そうした中で、一縷の望みのように思えた映像にのめり込み、アリスに会うためにダグの家を訪れたりもする
そこで事故が起きてしまい、ダグは死んでしまうのだが、そこからさらに撮影現場に向かったり、そこでアリスとの共演をさせられたりといった非日常の世界へ入ることを余儀なくされてしまう
映画は、どこまでが映画内リアルで、どこからが映画内虚構なのかわからない内容になっていて、ラストでは「Censor」というタイトルのビデオテープが取り出されるところで終わる
このラストのシーンは、劇中でイーニッドが手にするビデオテープ「The Day The World Began」の再現シーンのようになっていて、そこにいるのは両親ではない
また、検閲されて却下されたビデオの中に監督自身が血まみれになる女優役で登場していて、遊び心が多い作品になっていた
このあたりは、ビデオテープ型のパンフレットに詳しく書かれているので、興味のあるホラーファンは必読かもしれません
いずれにせよ、本線はスリラーだが、ホラー映画の検閲をしているので、ホラー描写が死ぬほど多いので注意されたい
検閲に引っかかるレベルの残虐なシーンが多いので、ホラー映画に慣れていない人にとってはちょっとハードルが高い
個人的には「最初から最後までフィクション」と言う感じで、この映画は検閲を無事に通りましたよと言うメタ構造になっているのだと感じた
首が切断されて飛んでいくシーンとかが普通にあり、あの時代だとアウトだと思うのだが、今ではセーフと言う意味合いがあるのかもしれない
政治利用されたビデオ・ナスティ問題でもあるので、興味のある方はググるかAIに質問して見識を深めるのも良いかもしれません