劇場公開日 2024年9月6日

「「検閲」が何を指すのかが微妙」映画検閲 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「検閲」が何を指すのかが微妙

2024年9月18日
PCから投稿

今年335本目(合計1,427本目/今月(2024年9月度)21本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。

 「不適切な」VHSを検閲する仕事の主人公がある日みたVHSビデオに映っていたものと、彼女の過去とが交差するホラーものです。VHSなんてめったにみなくなりましたから、ある種ノスタルジーを感じますね。

 むしろ、VHSという文化が1970~80年代に国は違っても流行ったのは事実で、現在ではおよそ見ることはないですが、文化だけは知っているという方は若い方でも多いし、映画の趣旨としてVHSが出てくることに特段意味がなくても出てくる場合があります。この映画もしいていえばそれに該当します(DVDでも成り立つので)。

 個人的に気になった点として、何をもって「検閲」というかです。日本ではこの映画で述べられている行為は検閲ではなく(後述)、また国によってはまだ検閲が残る国はありますが、イギリスにおいては日本よりも早く廃止されていたものです。もちろん、国による国家権力を伴うものとは別に、民間の個人がおこなうものも「広くとれば」検閲という言い方をする場合もあり(超広義に取るのなら、映画のレーティングを決める行為もそれに「あたりうる」)、かといってこの映画を憲法論で解釈するのは無理がありすぎであり(そういう展開は一切出てこない)、一方で主人公(イーニッド)の仕事もよくわからず(真っ暗の部屋の中でひたすらVHSを見ているだけで、何らか国の機関などが映るわけではない)、どういう趣旨なのだろう…といったところはあります。

 採点に関しては以下まで考慮しています。

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 (減点0.3/「検閲」が指す内容が理解しがたい)

 日本では、最高裁判例の積み重ねで、検閲とは、「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的とし、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを特質として備えるもの」をいいます。

 「行政権が」「発表前に審査し」という2点が特に重要で、例えばプライバシー侵害を含むような内容の裁判所の事前差し止めは検閲ではありません(北方ジャーナル事件)。また、「発表前に」は外国も含みます(税関検査事件)。

 これらの「検閲の定義」は国によって多少は最高裁(に相当するもの)によって定義はことなりましょうが大きく異なるものではなく(むしろ先進国でこれと大幅に異なる見解の国があるほうが表現の自由の観点で危うい)、この映画のタイトル等でいう「検閲」が何を指すのかはかなり謎です(少なくとも日本語タイトルとしては意味が破綻している。主人公のイーニッドは行政権を行使していないため)。
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yukispica