私たちが光と想うすべて

劇場公開日:2025年7月25日

解説・あらすじ

ままならない人生に葛藤しながらも自由に生きたいと願う女性たちの友情を、光に満ちた淡い映像美と幻想的な世界観で描き、2024年・第77回カンヌ国際映画祭にてインド映画として初めてグランプリに輝いたドラマ。

ムンバイで働く看護師プラバと年下の同僚アヌはルームメイトだが、真面目なプラバと陽気なアヌの間には心の距離があった。プラバは親が決めた相手と結婚したものの、ドイツで仕事を見つけた夫からはずっと連絡がない。一方、アヌにはイスラム教徒の恋人がいるが、親に知られたら大反対されることがわかりきっていた。そんな中、病院の食堂に勤めるパルヴァディが高層ビル建築のために自宅から立ち退きを迫られ、故郷である海辺の村へ帰ることになる。ひとりで生きていくという彼女を村まで見送る旅に出たプラバとアヌは、神秘的な森や洞窟のある別世界のような村で、それぞれの人生を変えようと決意するきっかけとなる、ある出来事に遭遇する。

パルヴァディ役に「花嫁はどこへ?」のチャヤ・カダム。ドキュメンタリー映画「何も知らない夜」で、山形国際ドキュメンタリー映画祭2023インターナショナル・コンペティション部門の大賞を受賞するなど注目を集めたムンバイ出身の新鋭パヤル・カパーリヤーが、長編劇映画初監督を務めた。

2024年製作/118分/PG12/フランス・インド・オランダ・ルクセンブルク合作
原題または英題:All We Imagine as Light
配給:セテラ・インターナショナル
劇場公開日:2025年7月25日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第82回 ゴールデングローブ賞(2025年)

ノミネート

最優秀監督賞 パヤル・カパーリヤー
最優秀非英語映画賞  

第77回 カンヌ国際映画祭(2024年)

受賞

コンペティション部門
グランプリ パヤル・カパーリヤー

出品

コンペティション部門
出品作品 パヤル・カパーリヤー
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(C)PETIT CHAOS - CHALK & CHEESE FILMS - BALDR FILM - LES FILMS FAUVES - ARTE FRANCE CINEMA - 2024

映画レビュー

3.5ムンバイに生きる市井の女性の心模様を繊細に綴る日常系インド映画

2025年7月26日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
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共感した! 13件)
ニコ

4.0無数の光によって彩られた街の神話

2025年7月25日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

この映画の虜になるのに5分とかからないだろう。映し出されるのは大都市ムンバイ。繊細な光で照らされた街並みと喧騒、音のコラージュ、人々の言葉が相まって、街の鼓動を親密に響かせていく。とりわけ通勤電車の窓から望むビル群の夜景は無数の星が点々と輝く宇宙のようだ。それらは美しくとも少し孤独で悲しげな生命の集合体に見える。本作は当地で暮らす地方出身者の胸の内を探究しつつ、同じ病院で働くルームメイトの看護師らが心を寄せ合い生きる日々を紡ぐ。片やムスリム青年との恋愛に夢中な年下のアヌ。片やお見合い結婚した夫と長らく連絡を取り合っていないプラバ。真逆の性格の二人が悩みながら自分の幸せを精一杯に模索する姿を、本作は安易な価値判断を下すことなく、ただただ柔らかく見守る。時に本能の赴くまま、時に友情と絆、マジックリアリズムを加味しながら進む歩調が心地よく、全てを暖かく包み込む監督の視座にすっかり陶酔させられた。

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牛津厚信

4.0「花嫁はどこへ?」と並走する、インド発女性映画のトップランナー

2025年7月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

幸せ

2024年のカンヌ・コンペ部門でグランプリを獲った話題作。念のため、カンヌの最優秀賞はパルムドールであり(昨年の受賞作は「ANORA アノーラ」)、グランプリは準優勝に相当する。この年のコンペ出品作を振り返ると「エミリア・ペレス」「憐れみの3章」「メガロポリス」「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」「サブスタンス」など力作がひしめいており、これらをおさえての銀メダルと考えれば「私たちが光と想うすべて」への期待も高まるのではないか。

インド第2の大都市ムンバイの病院で働く3人の女性たち。看護師のプラバは既婚者だが、見合いで結婚した夫がドイツで働いていて疎遠になっており、年下の同僚アヌとアパートに同居している。アヌはイスラム教徒の青年と交際しているが、インドではヒンドゥー教徒が大多数であることから親や周囲から猛反対されるのは明らかなので、恋人のことは隠している。病院の食堂に勤める寡婦のパルヴァディは自宅から立ち退きを迫られているが、プラバが親身になり助けようとする。

「女性たちの友情」と単純に紹介されることもあるが、世代も境遇も違う3人の彼女らの繊細な絆や連帯感、穏当なシスターフッドの物語と評すべきではなかろうか。前半は都会を舞台に、プラバとアヌ、プラバとパルヴァディの関係がそれぞれ描かれるが、後半のパルヴァディが故郷の村へ帰る際にほかの2人が手伝いで同行する展開が、海辺のロケーションも相まって開放的で心地よい。

監督兼脚本のパヤル・カパーリヤーも女性で、本作で長編劇映画デビューを飾ったムンバイ出身。今年5月開催の第97回アカデミー賞のインド代表を「花嫁はどこへ?」(日本では2024年10月公開)と競うも選ばれなかったが、両作ともに女性監督がメガホンをとった女性映画である点も共通する。当サイトで「花嫁はどこへ?」の新作評論を担当し、「インド映画の2大潮流として、複数の娯楽ジャンルを混ぜ合わせた商業的な“マサラ映画”と、マサラ映画の特徴である歌とダンスのシークエンスを排した現実主義的な“パラレル映画”」と紹介したが、こちらの「私たちが光と想うすべて」もパラレル映画の流れ。インド固有の階級制や宗教事情を背景にしつつ、女性の自由や自立という普遍的な題材を繊細な感性で扱っている点において、世界で、そして日本でも評価されてしかるべき好ましい佳作だ。

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高森 郁哉

3.5希望の光は与えられるものではなく、自分たち自身が思い描いて手に入れるもの

2025年7月31日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

前半の舞台はムンバイ。夢を見て田舎から都会に出てきたはいいが、夢に敗れ、厳しい現実に直面する人も少なくない。それでも幻想を追いかけ続けなければ、自分が自分に負けたように感じてしまう、というのはインドに限らず、何処の国でも同じであろう。

主人公はムンバイで看護師をしているプラバとアヌの二人の女性。プラバは親の決めた相手と結婚したが、結婚後ほどなくしてドイツに出稼ぎに行き、ほとんど音信不通状態。アヌの恋人はイスラム教徒で、異教徒との付き合いを親が認めるわけがない。

地上げ屋に住処からの立ち退きを迫られ、故郷の海辺の村に帰ることにしたパルヴァディについて行ったプラバとアヌは、そこで自らの人生に改めて向き合う……。

人と人を隔てるものには、国籍、人種、宗教、性別、言語、そして経済格差などがあるが、その障壁を乗り越えさせてくれるのが愛。

多民族で多宗教で多言語で、なおかつ家父長制とカースト制による差別意識がまだまだ根強いインド。女性たちが自分らしく生きるための自由を渇望しても、ままならないことが少なくないはず。それでも力強く人生を切り拓いていこうとする女性たち。

希望の光は与えられるものではなく、自分たち自身が思い描いて手に入れるものだというタイトルに込められたメッセージは美しい映像の中で一段と輝きを増しているようだ。

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Tofu

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