動物界

劇場公開日:

動物界

解説

人間がさまざまな動物に変異してしまう奇病が発生した近未来を舞台に家族の絆を描き、本国フランスで観客動員100万人を超えるスマッシュヒットを記録したSFスリラー。

近未来。原因不明の突然変異により、人間の身体が徐々に動物と化していく奇病が蔓延していた。さまざまな種類の“新生物”は凶暴性を持つため施設で隔離されており、フランソワの妻ラナもそのひとりだった。ある日、新生物たちの移送中に事故が起こり、彼らが野に放たれてしまう。フランソワと16歳の息子エミールは行方不明となったラナを捜すが、次第にエミールの身体に変化が起こり始める。

「彼は秘密の女ともだち」のロマン・デュリスがフランソワ、「Winter boy」のポール・キルシェが息子エミールを演じ、「アデル、ブルーは熱い色」のアデル・エグザルコプロスが共演。2014年のデビュー作「Les Combattants」で高く評価されたトマ・カイエが監督・脚本を手がけた。

2023年製作/128分/PG12/フランス・ベルギー合作
原題または英題:Le regne animal
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2024年11月8日

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(C)2023 NORD-OUEST FILMS - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINEMA - ARTEMIS PRODUCTIONS

映画レビュー

4.0こんな映画見たことない?!父親フランソワの家族愛が胸に迫る、少し不思議なアニマルスリラー映画

2024年11月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

興奮

まずこの映画を楽しむために
必要なのは、前提を受け入れること

この映画の世界では、
「人間が様々な動物に変異してしまいます。」

理由や原因は何かを追求するのはナンセンス!そういうものだとひとまず受け入れてさえいればオッケー👌です。

予測不能なコロナのパンデミックを経験したばかりの現代人には、まるで無関係な絵空事だとも思えません。だって人間も動物だものね🙄

率直に観終わった感想をいいますと
こんな映画見たことない…かしら?

途中「アバター」かと思ったら、
最後は「もののけ姫」だった?!
みたいな?シュールな見た目の生き物がたくさん出てきて、🫣こんな感じになる場面もあったけど、なんかちょくちょく泣かされてる🥲不思議な映画です。それもこれも主人公の父親を演じたロマン・デュリスさんの確かな演技力と終始家族を愛する姿勢が胸に迫ります。息子のエミールを演じたポール・キルシェくんも難しい役どころを、しっかり噛み砕いて自分の中に落とし込んで演じていたと思います。普段フランスの映画をあまり見ないので、まずフランス語が新鮮でした(もちろん字幕)

ちなみにもし動物になるなら?
という質問に対して
ロマン・デュリスさんは、ユキヒョウ。ポール・キルシェくんは、クジラと答えていました。私は何かなぁ?白蛇かなぁ?動物であってる?

普通の映画は見飽きたあなたにお勧めの映画です♪

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ななやお

4.0人の世界と動物の世界、どちらが実りある世界か

2024年12月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ホラーやスリラーかと思いきや、ティーンエイジャーの成長ものと自分の居場所探しの物語へと進展していった。人が動物化する奇病が発生、感染するということで、社会はパニックに。感染者は隔離されることとなり、主人公の妻も隔離される。しかし、移送中のトラック横転で脱走、主人公とその息子は森の中に分け入り、妻を探そうとする。
そうこうしているうちに、息子も感染。父はばれないように必死に隠そうとするが、息子は森で出会った鳥化した青年との交流を重ねるうちに、森での暮らしが心地よくなっていく。感染者を差別する人間社会で生きていくのか、新たな居場所として森を選ぶのか、息子は選択を迫られていく。人の世界を選ぶか、動物の世界を選ぶかという選択で葛藤する男の子、という点で細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』と共通点がある。シングルマザーとシングルファザーの違いはあれど、やっぱり子離れするのは苦しいけど、子供の選択を尊重する親の気持ちも描かれていて、感動的な作品だった。

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杉本穂高

4.0自己と関係の変化に対する不安が普遍的だからこそ、苦悩する息子と諦めない父の姿が胸を打つ

2024年11月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

知的

カフカの「変身」とカミュの「ペスト」という、20世紀前半の欧州で生まれた不条理文学の2大小説を組み合わせたような設定だと感じた。ホラーやパニックサスペンスにジャンル分けされそうな現象や状況を導入に用いつつ、そうした予期せぬ事態に陥った個人の苦悩や、家族や友人知人といった人間関係がどう変わっていくかといったテーマに重点が置かれるのも共通する。2020年代に世界が新型コロナのパンデミックを経験した後で、未知の疫病におそれる人々の姿もよりリアルに迫る共感ポイントになった。

身体が子供から大人へ変わる十代に特有の不安やおそれのメタファーで、異なる何かに変貌する若者の苦悩を描いた映画としては、デンマーク・フランス合作「獣は月夜に夢を見る」(2014)、フランス・ベルギー合作「RAW 少女のめざめ」(2016)などが記憶に新しい。フランスを中心に欧州でこうした映画がコンスタントに作られているのも、変化する実存への根源的な問いを文学的・哲学的に追求する教養やリテラシーといったものが長きにわたり蓄積、共有されているのだろうか。

ロマン・デュリスが熱演した父フランソワが新生物に変異する奇病を発症した家族を支え守り抜こうとする姿も、心から愛する身近な人が、病気や事故などによって身体的特徴や精神状態が大きく変わってしまった場合(認知症を患い家族さえも認識できなくなるケースが挙げられよう)、前と変わらずに愛し続けられるのかという試練に通じる。自らが変わってしまうことへの不安に加え、身近な人が変わってしまう、関係が変わってしまうような時に自分はどう対応するのかという難問も普遍的だからこそ、この苦悩する息子と諦めない父の姿が多くの人の胸を打つのだろう。

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高森 郁哉

4.0意外にも友情と愛情と成長の物語だった

2025年1月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

予告編で感じた印象と本編を観た時の印象が違うと、どうやって宣伝するのか決めるのが大変だったんだなと思う。本作では、病により獣に変化していく人間たち(新生物)の姿を予告編では見せていなかったことがポイント。彼らの見た目を隠すことでとてもミステリアスな存在として演出したかったのだろう。だから本編では、結構序盤で新生物の姿をあっさり見せるんだと驚いた。
子どものときに「エレファント・マン」という映画の公開時に似たような印象を抱いたことがある。CMなどで流れてくるのは頭巾をかぶった、ミステリアスなエレファント・マン。彼の素顔にいろんな人が驚くシーンをCMに使うことで人々の興味を引こうとする。でも、実際あの映画は苦しみに満ちた1人の人間を描いた感動の物語だった。特異な見た目に興味を抱かせようとする宣伝方法に違和感を覚えた印象的な映画だ。本作はその気持ち悪さに通ずるものがある。だって、本作の予告編を観て感じたのはスリラーっぽさだが、観た後に強く印象に残ったのは友情や愛情だったから。
思春期を生きる少年エミールの成長と、獣に変化していく苦しみ、父親との確執と愛情、鳥に変化していくフィクスとの友情。獣に変化していく人間たちを排除しようとする人たちがいて、逆に排除するのではなく共生すべきだと主張する人たちもいるところも妙な風刺が効いている感じで面白い。万事解決!というスッキリしたラストではないし、先行きを考えると不安も残る。でも、不思議と爽快感のある終わり方だった。いい映画だ。どうやって宣伝するのかを考えるのも大変だったんだろうなと勝手に想像する。この面白さを他人に説明するのはなかなか難しいもの。

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kenshuchu