バットマン ビギンズ : 映画評論・批評
2005年6月15日更新
2005年6月18日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にてロードショー
007シリーズ的アクション・アドベンチャー風味も悪くない
80年代半ば、アメコミ界のグラフィック・ノベル革命を受けて、ヒーロー&悪役のディープな魅力を掘り下げたティム・バートン監督のカルト作「バットマン」(89)、「バットマン・リターンズ」(92)が大ヒットしたものの、それに続く「バットマン・フォーエヴァー」(95)と「バットマン&ロビン」(97)では、陽気なゲイ趣味を発揮したジョエル・シュマッカー監督が、60年代的レトロ・キッチュに逆噴射。その後、しばらく、企画の紆余曲折を経て、ようやく再始動した新生シリーズの第1弾は、そのタイトルにふさわしく、これまでコミックでも語られなかったオリジナル・ストーリーで勝負。
大富豪の遺児ブルース・ウェインが、悪と闘う闇の騎士バットマンになるまでの、精神的・肉体的彷徨と成長にスポットを当て、“恐怖”をキーワードに駆動する物語は、ダークトーンでありながら、いくつかのセリフを除き健全性を保ち、バートン版的な“病んだ”影がないぶん、マニアには不満が残るだろうが、モーガン・フリーマンのキャラが連想させるように、007シリーズに似たテイストのアクション・アドベンチャー風味も悪くなく、今後のシリーズ展開にも期待できる。
(高橋良平)