ルート29

劇場公開日:2024年11月8日

ルート29

解説・あらすじ

長編デビュー作「こちらあみ子」で第27回新藤兼人賞金賞を受賞するなど高く評価された森井勇佑監督が綾瀬はるかを主演に迎え、詩人・中尾太一の詩集「ルート29、解放」にインスピレーションを受けた独創的なストーリーで撮りあげたロードムービー。

他人と必要以上のコミュニケーションを取ることができない孤独な女性・のり子は、鳥取の町で清掃員として働いている。ある日、彼女は仕事で訪れた病院の入院患者・理映子から「娘のハルを連れてきてほしい」と頼まれ、何かに突き動かされるように姫路へと向かう。やがて見つけたハルは風変わりな女の子で、初対面ののり子に「トンボ」というあだ名をつける。のり子とハルは姫路と鳥取を結ぶ国道29号線を進むなかで、さまざまな人たちと出会いながら互いの絆を深め、からっぽだったのり子の心は喜びや悲しみの感情で満たされていく。

「こちらあみ子」で主演を務め鮮烈な印象を残した大沢一菜がハルを演じた。

2024年製作/120分/G/日本
配給:東京テアトル、リトルモア
劇場公開日:2024年11月8日

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映画レビュー

2.5 2024年後半個人的最大注目作。あら、これって、こないだ見たアレと一緒?

2024年11月9日
PCから投稿

2022年の「こちらあみ子」で長編デビュー。いきなりオレの生涯忘れえぬ1本にしてしまった森井勇佑監督待望の新作。主演はなんと綾瀬はるか、そして「あみ子」大沢一菜。東京映画祭上映作品。

公式予告からうかがえるのは、ロードムービーであることと、綾瀬はるか主演ということから想像するエンタメ感。こちらの期待はガチ盛りである。

「こちらあみ子2」




じゃなかった、「ルート29」





前作「こちらあみ子」の評価は人それぞれで、どちらかというと、「可哀そう」、「あみ子のその未来は暗い」といったネガティブな声の方が大きかったように思える。個人的には「こんな前向きな映画はない」といってもいいぐらいの勇気と誠実さを感じる映画だったが、そんな声を意識したのを想像できる内容と、監督お気に入りである大沢の再起用ということからもこれは開けてみれば「こちらあみ子」の続編である。

前作をネガティブにとった人には、簡単に言ってしまえば、「あみ子」が一人たくましく(正確にはシャケ師匠と)生きており、死と上手に向き合えるようになり、そして現代に生きる人々の諦観や悩みそして死を感じながら、綾瀬が一歩前に進む足がかりな存在となった、というアンサーの作品である。

体はロードムービーのド定番。

タイトルは「こちらあみ子2」あるいは、「みんなあみ子」と改題してもいいかもしれない。

このメッセージ自体は非常に力強い、勇気づけられるものであるのは確かだ。そこに大きな価値、共感を得る人がいることに対し、異論は全くないし、その感性は素晴らしいものだ。

ただ本作は前作はスパイス程度だった「ファンタジー色」がより強くでている一方、人とのつながりが人を生かす、希望を与える、前向きになれる、といったあたりが演出面で少し説教くさく感じる上に、綾瀬の参加により、期待したものとはギャップを強く感じる人もでるだろうし、「こちらあみ子」を未観の人にはなおさら、居心地が悪い。綾瀬はるかにエンタメを求めてしまうのも無理はない。(本編冒頭のタイトルバックと画角でそういう映画ではないことを教えてくれはするが。)

そして、オレにしてみれば前作は「完璧な」ラストだった。

監督の誠実なまなざしは間違いないが、主な登場人物が「信頼のおけない語り手」になってしまっているのも、観る側に難しくさせている。

あら、これって、こないだ見た「フォリ・ア・ドゥ」?

すこし残念な点。もちろん楽しい点は多いが、風の使い方も前作のさりげなさ(がオレは本当にうれしかった)が、今回ちょっとあざとく感じたり、シンメトリーの多投も悪くはないが、ここぞのインパクトもなく、なんとなくウェス・アンダーソンや北野武、ゴダールへのオマージュや音楽もそっち系を必要以上に感じさせてしまっている。

追記

シャケ師匠を演じた播田美保がまたまた素晴らしい。

追記2

「詩人」トンボのメモの文字が見えないなあ、と。まあそこはいいとして、みてわからなかったのは、誰が「ハル」が行方不明だとを通報したのか、という点。

本当に前作の家族が通報した。(つまり井浦新)。病院のお母さん(市川)は「あみ子」の本当の母(前作の尾野真千子は義母)的な妄想をモヤモヤしつつ。そこはパラレルワールドとして委ねられているのだろう。

序盤の綾瀬のみる頭のレントゲンも本当は誰のものか。

うーーむ、モヤるなあ。

も一回観るかな。

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しんざん

4.0 綾瀬はるかの進境と、森井勇佑監督が「あみ子」役で見出した大沢一菜の成長をもたらす“辺路”、あるいは異界巡り

2024年11月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

楽しい

辺境を旅して修行することをかつて辺路といい、のちに字が変わって四国の「遍路」になったのだそう。のり子とハルの旅は、はじめこそ姫路と鳥取を結ぶ国道29号線を車で進むので辺境とは言い難いが、やがて生きているのか死んでいるのかよくわからない人々と出会い、異界巡りのような様相に移っていく。世の中に馴染めずにそれぞれ生きてきた2人にとって、人生の次のステージに進むために必要な通過儀礼だとすれば、この旅も“修行”と呼べそうだ。

いわゆる国民的女優の一人として確固たる地位を築いた綾瀬はるかが、アート系や単館系と呼ばれそうな本作への出演オファーを快諾したのは、(欧米では大物俳優が主要映画祭等で主演賞を獲ったのちインディペンデント作品に出ることもままあるが)保守的な日本ではわりと珍しいケースではないか。綾瀬自身が森井勇佑監督のデビュー作「こちらあみ子」を大好きだったというのも大きいだろう。これまで娯楽大作映画、NHK大河ドラマや民放ドラマで数多く主演をこなしてきた彼女が、イメージが固まることを良しとせず、役者として表現者として新境地を開拓すべく同世代の気鋭監督の映画に参加することを望んだのかもしれない。

そして、「こちらあみ子」で見出された大沢一菜(2011年生まれの現在13歳)が、前作から約2年分の成長を見せて、大人の映画ファンをまるで親戚の子と久々に再会したかのような心持ちにもしてくれる(昨年秋クールの「姪のメイ」でも会っていたドラマ好きも多いだろうが)。「こちらあみ子」は今村夏子の短編小説が原作だが、同作と今作の両方で脚本も書いた森井監督は、大沢一菜の“あみ子”がその後どうなったかをイメージしてハルのキャラクターを造形したものと察せられる。野生児のような天然ぶり、ハルの母親が精神を病んでいるなど、「こちらあみ子」に通じるポイントも多い。気になったのは、リップのピンク色の強さ。外見も内面も性差を感じさせない中性的なキャラクターがハルの魅力なのに、大人から無理に女性らしさを塗りつけられたような違和感を鑑賞中ずっと抱いたままだった。

杉田協士監督作「彼方のうた」、清原惟監督作「すべての夜を思いだす」でも組んだ撮影・飯岡幸子と照明・秋山恵二郎のコンビによる映像が詩情豊かで、観ていて心地よい。のり子とハルが初めて対面する草むらのシーンの美しさは絶品。日常と異界のあわいのような空間の描出にも映像の力が大いに貢献している。29号線沿いの風景には旅心を大いに刺激された。

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高森 郁哉

3.0 時計

2025年8月11日
iPhoneアプリから投稿

社会から距離をとる人と触れあい、頭の中の金魚を育てる。その生き方を是認する。
綾瀬はるかは作業着をオーバーサイズに着こなしている。世界観の割にいずれの登場人物も身だしなみはきれいである。画作りや演出も日常感から外している。マンガのようでもあるが、彼女たちの世界観をリアルに落とし込むと単にずれる訳で、時制の軸を彼女におけばリアルでない世界に見せることも頷ける。

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Kj

4.0 現実と非現実の狭間にある浮遊間

2025年8月10日
iPhoneアプリから投稿

幸せ

癒される

綾瀬はるかがミニシアター系の作品に出演するという話題性に加えて、予告編で聴いたBGMが非常に印象的だったので、劇場で観たいと思いつつ機会を逃していました。
今回、DVDでようやく鑑賞ができました。
この監督の作品は、ルート29に対する興味からはじまり、まずはデビュー作の「こちらあみ子」をDVDで鑑賞したのですが、これがとんでもなく悲惨なストーリーだったので後味が悪くトラウマになっていました。
ルート29は、打って変わって、非常に不思議な浮遊感を持った作風で、何とも言えないほのぼのした後味でした。
ストーリー自体は現実なのでしょうが、いつの間にか非現実との境目が曖昧になり、いま目にしているものは現実なのか、それとも主人公の頭の中で繰り広げられる想像なのか、判別がつかなくなります。
途中で出会う登場人物も、生者なのか死者なのかさえ曖昧な雰囲気が、何とも言えない浮遊感を醸し出しています。
ある意味、死にゆく人から頼まれた人探しは、その過程において死にゆく人との出会いを誘い、死者への手向けなのかなという印象でした。
不思議な浮遊感をもった作品でした。

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だるちゃ