とりつくしまのレビュー・感想・評価
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誰しも考える設定かもしれないがリアルさが秀逸
冒頭の小泉今日子演じる、とりつくしま係と
死んでしまった小春との会話で、
この作品の世界観がよくわかります。
要はモノにとりつくことができるという設定ですね。
自分自身も加齢や両親の死にあたって、
死のことを考えるようになりましたが
モノにとりついてみたいなことは考えたことがあります。
自分の想像ではファンタジーな世界でしたが、
本作はファンタジーでありながらも
どこかしらリアルなので集中して観ることができました。
オムニバス形式であることも奏功したと思います。
とくに2話目の『あおいの』では、
複数人がモノにとりついていることに、
私自身最初は気づかなくて、後々わかるという、
いつもながらまんまと監督の思惑にハマってしまい、
楽しめました(笑)
ラストではこのオムニバスの作品たちが
地続きの物語であることがわかる描き方をしていて
気が利いているなと思いました。
期待せずに観た分、期待を超えていて
良作への出会いに感謝しました。
観て良かったです。
とりつく視間
題材的にしんみりしそうなのに、割合明るくカラッとした仕上がりが爽やかな佳作。
●トリケラトプス
ツッコミがとても気持ちよく、コミカルさと切なさのバランスも好み。
旦那さんもいい人だし、新彼女の最後の態度もあの若さの嫉妬心と思えば許せる程度。
過去の映像の見せ方もよかったなぁ。
●あおいの
ちっちゃい子なのもあってかモノローグも少なく、傍観者的な立ち位置が多い。
主役としての役目は薄いが、「いたる所にいるかもよ」と示すのは面白かったし、母も妹も自然な名演。
照れ隠しで男っぽい言葉を使う新谷ゆづみが可愛い。
●レンズ
店主が孫かと思ったら、売られてんのかい!笑
…と、掴みがよかったし、穏やかな雰囲気の中で一切のコミュニケーション無しに親密になる様子にほっこり。
中華テーブルのシーンだけよく分からん。
●ロージン
短期的なものにする選択は正しいと思う反面、あまりにローアングル過ぎるし、何故6回裏から?
冒頭の“言葉”たちに一番大事なものが欠けていたが、ちゃんと回収してくれて、ベタなのに少しウルッと。
バッターの構えが嘘っぽいのが残念。
思いのほか出番の少なかったキョンキョンも、とぼけたキャラでいい味を出してた。
1話の尺に自由度があるという意味では、オムニバス映画が最適な作品かも。
景色の切り取り方も自然で雰囲気がよかったし、シリーズ化してほしいくらい。
後からじわじわと
「ほとぼりメルトサウンズ」の監督作品ということで
現世に未練を残して亡くなった人が「物」にとりつく4本のファンタジー
鑑賞後にじわじわときます
原作未読ですがこの作品4本目の「ロージン」だけが他3本と大きく違います
いつまでも「未練」があっては亡くなった人も残された人も先に進めないということかと
(ロージン以外の3本は終わりが分からない)
だから消耗品にとりついた母の息子への思い
個人的にはそこが一番大事かなと
現実にはなかなか難しいとは思いますが
(ボーっと観ていてはダメ🙇♂️)
2本目の「あおいの」は主人公の男の子の他に公園でとりついていた仲間が3人?いたことに鑑賞後にやっと気がついたり(笑)
この世の未練に「とりつくしま」あの人のそばで見守っていたい気持ち ちょっとだけ癒される感じがいい
この世に未練があるとき「とりつくしま」として、「もの」にとりつく。
あの人のそばで見守っていたい気持ち。
ちょっとした4つのエピソード。
「トリケラトプス」しょうもないことが、一緒に生きていた証だった。微笑ましい日々。捨てられないマグカップが、新しい彼女との別れのきっかけになる。いっそのこと割ってしまってほしいと思う切ない気持ちが、わかる。
「あおいの」ジャングルジムでママを待つ。公園の人々の中には仲間もいた。
「レンズ」孫と一緒に居たかったのに、売られてしまって、他人のおじいさんの視線をきょうゆうしていく。
「ロージン」試合の結果は見届けられず、白い粉は球場の空の彼方へ。もう母親としての役目も終わったかと思う気持ちが切なく、温かく、泣ける。
どの話も、ちょっとした癒しがあったけれど、最後の話が一番、いきなり感動してしまった。
東京では1館のみの公開。それでも、当たり前で言わなくてもいいくらいでしょうが、小泉今日子の出演があらゆる意味でこの映画を大きく変えましたね。
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