劇場公開日 2024年9月6日

「深夜にペヤングを食べる女」とりつくしま あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5深夜にペヤングを食べる女

2024年9月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

歌人の東直子さんの小説が原作であり、娘さんである東かほりさんの脚本、演出で映画化された。原作小説は、やはり歌人が手掛けた色合いが濃厚。短歌が主戦場の人の書く本は一つ一つの言葉が磨き抜かれ立ち上がっている印象がある。そして、この小説は死者による一人語りが基本となっている。つまり、短歌と同じ主観叙述なのである。死者はモノに取り付いて自分が亡き後の愛する人々の動向をつぶさに目にすることになる。でも彼もしくは彼女は、もはや愛する人が不幸になっても手助けできないし、逆に愛する人が背信行為をしても手出しできない。残酷な結末を迎えることもある。実際、原作は10本の短編と番外編1作品を収載しているがいくつかは無惨としかいいようのない読後感のものもある。
さて映画であるが「トリケラトプス」「青いの」「レンズ」「ロージン」と原作の中では比較的穏やかな筋立てのストーリーが選んだ。この内「青いの」は原作ではほぼ子どもしかでてこないし、とりつくのがジャングルジムであったりするのでかなり映画にしづらかったのだろう、大幅に改変している。そしてモノが一方的に喋っているだけでは、ということだと思うが、死者だけでなく生者側からの視点や行動も大きく取り上げている。結果として、ハートウォーミングな傾向に全般的に振れていて一般的にはなったのだろうが原作の切れ味は薄れてしまった。
一つだけ映画の方にだけある毒を。「トリケラトプス」で妻こはるを亡くした夫わたるに積極的に迫る女の子。夜中にこっそりと台所のスミでペヤングソース焼きそばを食べる。マグカップにとりついたこはるはそれを発見し猛烈に非難する。これは原作にはない映画のオリジナルで明らかに東かほり監督が悪意を込めて演出してますね。この世代はヤな女を表現するのにはこんな設定をするんだと大変面白かった。

あんちゃん
たつのこさんのコメント
2024年9月13日

仰っしゃる通り「あおいの」は大幅に変わってましたね
意図は分かるのですが、僕にはちょっと分かりづらかったです
レンズも良かったと思いました
ありがとうございました

たつのこ