「長尾謙杜くん演じる才蔵がとにかくかっこいい!!!」室町無頼 IRISさんの映画レビュー(感想・評価)
長尾謙杜くん演じる才蔵がとにかくかっこいい!!!
原作を拝読し、才蔵がこの作品の要であることは否応なしに伝わりました。才蔵を演じるに足る役者を探すのは本当に大変だったことと思います。しかし、先日IMAX上映にて映し出された才蔵は目を見張るものがありました。
まず、表情が素晴らしかった。映画冒頭の天涯孤独で餓死寸前の落胆や諦め、悲しみが入り混じっていながら、それらが主張しすぎず自然に物語に溶け込んでいたこと。そこから兵衛と出会い、人生が色づき始め、才蔵の人生の歯車が動き始める。少しずつ色づいていく表情に、先ほどまででは見られなかった少年らしい笑顔が見えました。そこからの修行シーンでは少年から青年に変わっていく、洗練された表情を見ることができました。時代の先を見ているかのような表情に惹き込まれました。表情のグラデーションが素晴らしい。
そして圧巻の殺陣。これに関しては公開前に監督が偉業であると話されていたり、別の方には佐藤健さんが主演を務めた『るろうに剣心』剣心の殺陣に似たものを感じると話されていたり、半信半疑になるような褒め方をされており、そこまで持ち上げて本当に大丈夫かと心配すらしていたのですが、そんな心配はいりませんでした。長尾くんが挑戦したワイヤーアクションには『るろうに剣心』のワイヤーコーディネーターの方がついており、そこからもクオリティの高さが保証されていましたが、そのワイヤーアクションがさらりと描かれていたところに技巧を感じました。もちろんこのワイヤーアクションも見所ですが、私が特に目を見張ったのは地上戦での棒術シーンです。修行シーンからスタントなしと聞いていたので、本当に?!と疑ってしまうほどのクオリティで驚きました。修行終盤から最後にかけての才蔵の棒術は流れるように無駄がなく、“動きを覚えた”アクションではなく、“自然に動いた”アクションにすら見えて、素晴らしかったです。また、修行前と修行後で棒術の軌道が明らかに読みづらくなっていたり、次に行く動作が速くなっていたり、今作の見どころである才蔵の“成長”を感じることができ、たいへんよかったです。また、幕府軍と一揆勢との大乱闘シーンでは人がごった返す中であの長さの獲物を振り回すのは難しかったと思いますが、とてもスムーズに立ち回られており、そこにも大感動でした。そして、外してはいけないのは最後の才蔵の独壇場での大立ち回り。あれは圧巻でした。皆が疲労困憊の中、才蔵が中央に躍り出て、感情のままに棒を振る様は鬼のような凄みがありつつ、冒頭の用心棒時代の大暴れシーンとの対比がなされており、才蔵の成長を感じました。
次の時代を切り開いていくであろう才蔵が幕府の門前に辿り着くシーンは、次世代の息吹を感じさせる、希望の光のような場面で、考えさせられるものがありました。
長尾くんに関してもう少しなところを上げるとすれば、滑舌でしょうか。表情や縦が素晴らしいので勿体無い!でも、本当にそれだけです。才蔵が時代の兵法者に成り上がったように、長尾謙杜という俳優の大きな可能性と未来を感じさせる作品でした。