「才蔵無双を観るために映画館に行く価値がある」室町無頼 aさんの映画レビュー(感想・評価)
才蔵無双を観るために映画館に行く価値がある
この映画は、まさに"才蔵の成長物語"です。
原作でも「才蔵の成長と活躍」が主軸に描かれており、
映画はそれを兵衛視点から描いた構成。
原作読者にも逆視点の楽しみがあります。
原作同様、才蔵の“成長と覚醒”がこの映画の核であり、
その視点を通すことで物語の本質がグッと見えてくる構成になっています。
正直、最初は展開の早さや演出に戸惑う部分が結構ありました。
ストーリーの軸が複数あるのでついていけなかったり、
史実では2ヶ月かかった出来事を一晩で描いているので、印象に残る反面、少し混乱してしまう場面もありました。
また、作品全体に西部劇的な世界観が漂っており、要所でウエスタンを感じるのですが、
西部劇に馴染みがなかった私は、演出や挿入歌がやや唐突に思え、違和感を覚えることもありました。
そのため、初見では「ん?」と首をかしげたくなる部分や、解釈に迷う箇所も多く、
高評価・低評価どちらにも納得できる作品だと感じました。
実際、私自身も最初はやや距離を置いたような評価をしていました。
しかし、それではあまりにも勿体ない——。
背景や時代性、人物たちの心情に理解を深めることで、この作品はどんどん面白くなっていきました。
観れば観るほど、噛みしめるほどに、その魅力が深まっていくのです。
歴史に名を残さなかった人々の生き様や、現代にも通じるテーマが物語に力強く刻まれており、今では「高く評価されるべき作品」だと胸を張って言えるようになりました。
でも、最初からこの感想だけは変わりません。
「才蔵無双を観るために映画館に行く価値がある!」
飢えと孤独に耐え、ただ吠えるだけだった少年・才蔵が、信じる心を持ち、自分の意志で変わっていく──
最初は小汚く滑舌も悪くて「威勢だけ」だった才蔵。
けれど1年の修行を経て、最強のヒーローへと成長する姿が心に刺さりました。
髪が伸びただけなのに、顔つきも変わって、なぜか背が伸びたようにさえ感じるほど。最初は幼く感じたのに、表情・歩き方・話し方までまるで別人。1年のはずが5年分は成長しているように思いました。でも、時折見せる純粋さや愛らしさは変わってなくて…そこもまた魅力的でした。
そしてなにより、修行や殺陣のシーンはまさに圧巻。
ゼロから学んだ棒術を、無双シーンではノーカット披露。このシーンを観るためだけでも映画館に足を運ぶ価値がある、と本気で思いました。
これだけでも★5をつけたくなるほどの衝撃でした!
長尾謙杜自身の礼儀正しさや芯のある性格、ちょっと泣き虫だけど素直で思いやりのあるところが、才蔵のキャラクターとも重なっていて、演技だけでなく“彼自身”が滲んでいたからこそ、あれだけ心を動かされる才蔵が生まれたんだと思います。
長尾謙杜 × 才蔵の奇跡的キャスティングといえます。
才蔵は長尾謙杜以外にありえない!!
インタビューで「泣きそうになるくらい稽古がつらかった」と話していたとおり、あの殺陣を完成させるまでの努力はすごかったんだろうなと想像できました。
だからこそ、修行過程がサラッとしか描かれていなくてちょっと残念でした。あっという間に釘刺せるようになって、あっという間に強くなっちゃった感じがして、もっと「血の滲む努力」を見たかったのに...。
でも、最終決戦の“無双”シーンで"あの修行がちゃんと活きてる…!"と感じられる瞬間がありました。すべてが報われるようで、全体の尺としてはこれがベストだったと思います。
恩師のために命かけて走り抜く最強才蔵
本当にかっこいいのでぜひ観てください!
最初は理解できなかった一揆の流れも挿入歌も「無頼」の意味も咀嚼すれば、この映画の素晴らしさがわかってくると思います。
(最終的に咀嚼できたので評価しましたが、咀嚼できないとモヤる可能性ありなのでマイナス評価の要素となるでしょう)
p.s.ラストの才蔵はちょっと兵衛化しすぎで笑っちゃう