「躍動する身体は、青の衝撃…自分らしさを取り戻せ!」美しき仕事 とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
躍動する身体は、青の衝撃…自分らしさを取り戻せ!
囚われた葛藤の先に辿り着くのは、他人と比べたり、他人の目ばっかり気にせずに、もっと自分らしい動きで自由に生きようよ、という"自分"の奪還。
軍隊の訓練とは上官の指示に絶対服従するため、基本的に個性を剥奪するものだ。それは本作でも揺るがず、同じ頭(髪型・坊主頭)で同じ動きをひたすらにして="規則性"に満ちた・秩序だった"美しき仕事"。一見意味のわからないような動きでも疑問を挟む余地もなく。それが作中、変にコミカルにも映ってくる。訓練、警護、洗濯、アイロン掛け、外出…その繰り返し。だから、"出る杭は打たれる"?人を惹きつけるという"個性"は奪えない。
"大義のために生きて死ね"。ただ、実戦があるわけではなく、何も起こらない"平和"で退屈な繰り返しの日々(ex.『ジャーヘッド』)。だから、切迫した状況では気にならないようなことも目について、時間ばかりあるから、ついつい考え事をしてしまう。部下への嫉妬や羨望に駆られるドニ・ラヴァン。それは外国人部隊という場所・集団だけでなく、もっと普遍的に言えることだ。
後悔を超えて、最後に解き放たれる自由。どんなにキレイに美しく振り付け踊られたダンスシーンよりも記憶に残るような一心不乱に躍動する身体が、瞼に焼き付いて離れない。忘れられない。映画史に残るであろうラストシーン。人間が陥りがちな画一性/規則性(没個性)など縛り付けるあらゆるシガラミ足枷なんかブチ破って、自分がそこに存在する意味・意義=本分を見失うな!
ヨーロッパ的で基本的に一定の距離を保ったカメラ位置・構図が、対象やそこで起きている出来事と心理的にも一定の距離を取っているよう。映画館で観れば眠くなるような、家で見ればついついスマホに手を伸ばしてしまうような、そんな作品を包む語り口トーンの中に青い炎が燃えるのを感じた。自分も考えすぎてしまう性格 & すごく他人のこと羨ましく思ってばかりなので、個人的には見ていて共感性高かった。