「「悪意」があるかどうかで話は違ってくる」胸騒ぎ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
「悪意」があるかどうかで話は違ってくる
相手の何気ない振る舞いに、不快感や不信感を抱くことは、日常生活の中でもあることだ。
自分自身も、決して悪気はないのに、不用意な言動で相手を怒らせたり、憤らせたりしていることがあるかもしれない。
そんなことを思いながら、2組の夫婦が溝を深めていく様子を興味深く観ていたが、終盤になって、ホスト側の夫婦に始めから「悪意」があったことが明らかになると、何だか興醒めしてしまった。
それにしても、ホスト側の夫婦にあのような目的があったのならば、ゲスト側の夫婦にはできる限り快適に過ごしてもらい、油断をさせるべきだったのではないだろうか?
実際、ホストの言動に「違和感」を覚えたゲストは、2度に渡って逃走を企てているし、しかも、1回目の逃走は、ゲスト側の不手際がなければ成功していた可能性が高いのである。
2回目の逃走にしても、ホスト側がわざと逃がしたように見えないでもないが、家で犯行に及んでいれば、何の苦労もなかったはずで、ゲストに不信感を抱かせ、恐怖を感じさせたのは、明らかに失敗であったと思えるのである。
そもそも、ゲストが、訪問先を誰かに教えていたら、行方不明になった時点ですぐに警察の捜査が入るはずで、犯行の計画そのものが極めて杜撰であると考えざるを得ず、壁に飾ってあった写真のように、いくつもの家族が犠牲になったとはとても思えない。
ゲスト側の家族にしても、大事なぬいぐるみを何度も失くす娘には、もっと物の管理をしっかりしろと怒りたくなるし、ホスト側の不審な動向に関して、夫婦間での情報共有ができていないばかりか、「帰ってもいい」と言われているのに滞在し続けるという判断能力の無さには、見ていてイライラさせられた。
極めつけは、娘や妻が酷い目に合っているのに、ただ泣いて「助けてくれ」と懇願するばかりの夫で、もっと、戦うなり、抵抗するなりできないものかと、情けなく思ってしまった。しかも、相手は、「石」以外に、武器らしい武器を持っていないのにである。
まあ、犯罪者としては、そういう夫であることを見極めて、この家族に狙いを定めたのかもしれないし、実際に犯罪の現場に居合わせたら、誰もが恐怖でああなってしまうのかもしれないが・・・
いずれにしても、変に意図的な「犯罪」の話に落とし込まないで、最後まで、無意識の「ボタンの掛け違い」が対人関係を悪化させていく話にしていれば、もっと面白い映画になったのではないかと、残念に思えてならなかった。