劇場公開日 2024年4月26日

「ウクライナ侵攻の歴史的評価を決定づける一級資料」マリウポリの20日間 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ウクライナ侵攻の歴史的評価を決定づける一級資料

2024年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ロシアのウクライナ侵攻が始まって早2年が経過しましたが、本作は侵攻が開始された2022年2月24日から3月15日までの20日間、ウクライナ南東部の港湾都市であるマリウポリを取材したAP通信のウクライナ人記者であるミスティスラフ・チェルノフによるドキュメンタリー映画でした。取材場所は主に負傷者が多数担ぎ込まれる病院で、そのほかにも爆撃を受けた建物や住民たち、略奪を受けている店舗、さらには遺体の山を埋葬する墓地の様子など、市街地がひとたび戦乱に巻き込まれた時の混乱を赤裸々に映し出しており、本当に貴重な映像だと感じました。

当然記者たちも自らの命の危険に晒して取材を続けた訳ですが、電気や通信網が寸断されたため、せっかく撮影したデータも中々外部に送ることが出来ず、苦労して見つけた通信可能ポイントから送られた映像や画像は、日本のNHKを含む世界中のニュース番組で取り上げられ、そのニュース映像も本作中に収められていました。ロシアが病院を攻撃し、妊婦や胎児が亡くなったことなども国際的に報道され、当然ロシアが非難されることになりましたが、これに対してロシアのラブロフ外相は「フェイク動画だ」と反論。情報戦争の一端を垣間見ることも出来ました。というか、フェイクであるという根拠を示さずに、フェイクであるという主張が成り立つなら、この世に犯罪なんてものは存在しませんわな。

いずれにしても今回のウクライナ侵攻は現在進行形で行われているものであり、この戦争の歴史的評価が確定するのには少なくとも数年、場合によっては数十年の歳月を要すると思われますが、本作の映像がその際の動かざる証拠、貴重な資料になることは確実でしょう。

そう言えば、ウクライナ侵攻が終わった後のウクライナを描いた「アトランティス」という近未来映画がありました。戦争は終わったものの皆心に傷を負い、国民の多くがPTSDになったかのような姿が印象的で、非常にリアリティが高い作品だったと思いましたが、あの映画では2024年に戦争が終結し、翌年の2025年が舞台となっていました。既に2024年になりましたが、果たしていつになったら戦争は終わるのでしょうか?

そんな訳で、ロシアのウクライナ侵攻を評価するにあたっての一級資料とも言うべき本作の評価は★4.5とします。

鶏