アイアンクローのレビュー・感想・評価
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家族の呪縛
古き良き(イメージ)アメリカの一家。
アメリカの田舎には、こんな一家がいっぱいいたのだろう(想像)。
また、スポーツで、お父さんが子供に夢を託すなんていうのもありふれたこと。
何も、この一家は他とは大きく違うわけじゃない。
ただ、お父さんの夢を託された息子たちにはそれを実現できる才能があったというところだけが、ありふれた一家では無かったところなのかもしれません。
些細なボタンの掛け違いのような事から、次々と悲劇に発展していく物語が本当に悲しいです。
もし、実話を元にしてなかったら、やり過ぎやろ!と途中で嫌になってたかもしれません。
「強い男であらねばならない」
「男は涙を見せてはいけない」
そんな呪縛がこの一家の呪いであり、強い男の象徴のようなプロレスラーであったことが、この呪縛を一層強く強くしたんでしょうね。
爽やかイケメンのザックが、ゴリゴリのプロレスラー体型になってるのも見所ですが、試合前のインタビューでプロレスラーらしく上手く相手を煽るコメントが出来ず、何回もリテイクするところとか、パム(リリー・ジェームズ)と付き合うまで童貞だったところとか、そんなエピソードから垣間見える、実はシャイで真面目で優しい男というのが、ちょっとした演技でもめちゃくちゃ表れてて、そんなところも非常に良かったです。
そして、ラストの兄弟達の再開シーン。
涙無くしては観れません。
「男は涙を見せてはいけない」と言われて、泣けなった兄弟達の代わりに、劇場にいた皆を泣かせる演出なのかな…と思いました。
往年のプロレスファンなのかな?客席は殆ど男性ばかりでしたが、あちこちから鼻を啜る音が聞こえてきました。
父親の呪い
A24はこれだから好きだ。
「呪われた一家」なのは、父親がかけた呪いにある
絶対的家長の父、父の補佐官のような母。俺が掟、の父の「洗脳」の下、プロレス道を邁進すること第一の息子たちの悲劇は起きるべくして起きたのだと思う。
息子たちが窮地に陥っても知らん顔、「兄弟で解決しなさい」という両親には、息子たちは命令に懸命に従う配下でしかないよう。
母が信仰深いのは、父の洗脳の下で息子たちを人として思いやることを禁じられた代償かもしれないと思った
兄弟たちが助けを求めるのは両親ではなく、長兄のケビン。ケビンもそれを喜んでいるよう。恋人時代のパムに「長男病(次男病)」と指摘されたように、兄としての愛情と責任感に溢れて、冷めた両親の代わりに、弟たちの精神的な両親だ。
次男だが、事実上長男のケビンは、プロレスにおいては弟たちの後塵を拝する立場。
よく言われるのだが、スポーツ界において長兄・長姉は割を食うらしい
自分第一ではなく無意識に下の子たちに配慮して、自分を抑えて妹・弟に譲ることが多くなってしまうからとか。その点、弟・妹は余念なく自分第一で競技に没頭できるから、勝負の世界ではいい成績を残せるようだ
この兄弟も、家業のプロレスにおいては家族愛が人一倍強い兄ちゃんが実力で弟たちに及ばず、プロレス至上主義の父から冷酷に格下扱いされている。しかも、その辛さを表に出せずにひとりで耐える、弟たちの兄ちゃんだから。
(このあたりのザック・エフロンの演技、特に表情が絶妙。)
プロレス界で華となった弟たちが、実力ある順に不幸な死を遂げていくのは多分、偶然ではない。三男デビッドは体調が悪かったのに勝負を優先してあのようなことになり、四男ケリーはプレッシャーに耐えきれずほぼ自滅してしまった。ふたりともプロレスが人生のほぼ100%を締めていたからだろう。
余念ゆえに競技で強くなりきれないケビンは、その余念が故に、視野が広がり思い詰めずに済み、ヒトらしい人生が送れたのではないか。
自然に周囲に配慮する気遣いと優しさは、妻となる女性を惹きつけたし、息子たちもパパが大好き、「それなら僕たちがパパの兄弟になるよ」といういい子たち恵まれた。幼い息子にこんな事言われたら、泣きますね。
最終的には父と決別して自分なりの道を歩めたのも、他の道を選択できる心の余地があったからでは
一家では異端児の五男・マイクの悲劇など、明らかに一家の呪いだ。
この家に生まれなかったら違う道に進んだに違いないから。
観に行った劇場では、30人くらいの観客のうち、女性は私ともう一人だけであとはおじさんばかりだった、と家のダンナに言ったら、そらそうだろう、フリッツ・フォン・エリックだからな、というので、え、有名なの? と聞いたら、当たり前だ!と。
昭和の(悪役)外人レスラーで、俺くらいのおっさんなら知らない人はいない、と鼻息荒く
フリッツ・フォン・エリックのアイアン・クローと言えば、デストロイヤーにおける四の字固め、ジャイアント馬場における16文キック、スタン・ハンセンにおけるウエスタン・ラリアート、アントニオ猪木におけるコブラツイスト(以下省略)と同様の必殺技だ!とドヤ顔して恐れ入った。とーちゃんは日本でも有名人だったのか。私はデストロイヤーはバラエティーで、あといつもおでこから血を流している人(誰?)が記憶にあるかなあ。
父親とでかい息子たちの朝食シーンに笑った。パンツ一丁で現れママに「ズボンくらい履け」と文句を言われ、食べる量が恐ろしい。山のようなカリカリベーコン(美味しそう)にバケツに入りのマカロニ、コストコの袋入りを一度で消費してそうなパンの量、この一家の食費ってどれくらい掛かるんだろうかと思った。
エンドタイトルの後に出てきた一家の写真が面白い。
勢揃いのなか、小さい男の子が空高く放り投げられている! 半端ない高さなのに彼、怖がるどころか喜んでんの。こういう一家なんだな、というのが一目瞭然で、これも笑ってしまった。
映画では割愛されていたが本当は六男までいて、彼も悲劇的なことになってしまったとか。
それでも、兄弟の息子娘がレスラーとなり、この写真のように、一家は家業のプロレスを続けているのだ。
プロレスの試合前の相手を罵倒し倒すパフォーマンスが「プロレス」の空気感を出し、肉弾ぶつかりあい汗と血しぶき飛び散る試合のシーンの迫力が凄い。
ホルト・マッキャラニーが実物のフリッツ・フォン・エリックにそっくり。
私の知っているレスラーは、フォン・エリックファミリーの対戦相手たちのようにちょっと筋肉たるんだイメージだったので、兄弟の肉体に驚き。
特にザック・エフロンの肉体は驚異的。
リアル超人ハルクみたいで、CGかと思ったが鍛えて作ったカラダだそうで、惚れ惚れしました。
親ってなに?
ザック・エフロン主演のプロレス映画!兄弟の絆に涙する。
「家族と一緒にいたい。一緒なら何でもできる。」
ザック・エフロン主演のプロレス映画!兄弟の絆に涙する。
▼感想
心を揺さぶられた。
前半は一緒にハンバーガーを食べたり、川で遊んだり、アメフトをしたり兄弟の仲の良いシーンが美しく、その分後半の悲劇の連続には胸を打ちひしがれた。
悲劇の連続はエリック家の呪いという不運だけでなく、父親にもかなり問題があるように感じた。
ザック・エフロンはCGのようなとてつもない体だった。鍛え上げられた体以上に演技が素晴らしく、眼差しや佇まいから家族を愛しく思う気持ちが伝わってきた。元々好きな俳優だから、この映画をきっかけに更にキャリアを飛躍させて欲しい!
プロレスシーンも圧巻だが、プロレス技よりもエリック家の兄弟の絆・悲劇に心を揺さぶられた!
▼お気に入りのシーン
ケビンが最後に涙するシーン。
2世しか分からない苦悩
呪いはオヤジからのプレッシャー
ダメ親父
当時プロレスファンだった私
小学校のころはプロレスブーム。タイガーマスクが子供たちの心を鷲掴みにしていた。初代タイガーが引退したのが1983年、デビッド・フォン・エリックが亡くなったのが1984年。ショッキングなニュースであった事だけは覚えているが日本で亡くなった事は覚えてなかった。
ケビンとデビッドが一緒に来日したのは知ってるが、プロレスを見出す前の記録が見てないのに記憶になった。ケリーの初来日はなんとなく記憶している。そんな位置関係をネット記事などで映画鑑賞後につなぎ合わせた。
呪われた一家と言われる割には幸せな一家の物語が続く。充実したプロレス人生を揺るがしたのは、過去に長男が亡くなった事の記憶とデビッドの死。そこから崩れ落ちる幸せは、落差の大きさにより効果的に伝わった。ケビンが次々に弟に先を越され落ち込むが追い越した弟が不幸に襲われる。この心情なんて想像出来ないがよく映像化されたと思う。
亡くなった弟たちが天国で再会するシーン。あれは誰の目線として描かれたのだろう。ケビンのねがいだったのかな。
現実のケビンは子供に囲まれ幸せに気付く。
終わらせ方としてはこれが正解だろう。プロレスファンだった自分としてもこうあって欲しい。
蛇足ですが、調べると描かれていない末弟がいたそうです。彼もまたプロレスラーになり、彼もまた自殺で自ら命を絶ったとのこと。
栄光の裏側
悲劇の一族を見届けた不器用な男の物語
プロレスファンなのでエリック家の悲劇は知っていました。しかし、情報として受け取った話と、映画として丁寧に描かれたものでは、やはり胸に刺さる深さが違います。
個々の悲劇が起きる前のひたすら不穏な長回し。そして、悲劇そのものは直接的に描かずに何が起きたかを婉曲的に伝えることで、逆に観客に印象深く見せる演出。そして何よりリング上のパフォーマンスの素晴らしさ。
主人公のケビンは誰よりも父を尊敬し、兄弟で一番苦労し、努力してトレーニングにも励んでいました。それでいながらレスラーとしては、リング上の立ち回りの悪さやマイクパフォーマンスが上手くないことなどから、弟たちに先を越されてしまいます。
先に行った弟達が悲劇に遭う中、最後までプロレスに向き合い続け、彼だけが生き残ることができたのは、妻と子供の存在が大きかったのでしょう。
私がプロレスファンであることを差し引いても、心に残る一作であることに間違いはありません。
この呪われた一家の悲劇を丁寧に映像化したキャストやスタッフたちにひたすら感謝しています。
人生はパーフェクトでなくていいんだ!
昔友達に引っ張られ女子プロレスを震えながら観戦した事は数回ありましたが全くのプロレス素人です
勿論このファミリーの事も知りませんでした
ザック・エフロンとリリー・ジェームズが
夫婦役っ!テンションMAXのウキウキ鑑賞だったのですが
気付けばプロレスシーンでは前のめりでカウントを入れスクリーンに釘付けになってる私…
アイアンクローと言う必殺技で一成を風靡し団体まで立ち上げながら家族の悲劇に見舞われる様は真実とは思いたくない程気持ちがやさぐれてしまいそうでした
側から見れば自身の夢を息子達に託し過ぎる父親に冷やかな視線を投げかけたいところですが
きっと彼は家族一緒に居たい居るべき!自身の価値観が息子達に伝わっているはずだと!
その想いが息子達に重過ぎるプレッシャーになっていた事も愛し方さえも間違えていた事に気付いてはいなかったのかも知れない
兄弟の中ただ1人次男のケビンだけは
リリー演じる最愛のパムに出会い家族に起こる悲劇や父親からの逃げ道を見つけこの苦境から真の愛と支え心の置きどころを得る事が出来たのだ
希望ある結末には安堵しました
栄光と哀しみ…家族・兄弟愛を深く紡いだヒューマンドラマに切なさと感動のさざ波が押し寄せるようでした
ジェレミー・アレン・ホワイト、ハリス・ディキンソン若手のホープ達の熱演も素晴らしかったですが
ザックの肉体改造には驚くばかり!
どこから見ても本物のレスラー!甘いイケメンのイメージをも封印した繊細な演技!
ハリウッドの殿堂入りも成したザックの更なる飛躍を期待します!
★リリーとザックがリアルにカップルになってくれたらなぁなんて願う私です
24-044
父親フリッツの人物像がまだ見えにくいところがある。
父親フリッツを理解するためには戦国武将のような人物と言ったらよいのだろうか。戦国時代の話が好きな人は分かりやすいのかな。徳川家康が長男信康を切った、他にも息子はいるからってことで、みたいな話だから。
それとも経営者としての姿なのだろうか。ローカルなプロレス団体を主催し、興行し、リングや付属施設も保有している経営者として。
いずれにせよ彼は息子たちをリソースとしてしか考えていない。兄弟の問題は兄弟同士で解決しろといいながら、兄弟間の情愛は無視してコインのエピソードのようにその時調子が上がっている者を選択する冷徹な男。
そして兄弟に解決を委ねる姿勢は妻であり兄弟たちの母親ドリスも同じ。エピソードがある。ケヴィンが父親のマイクへのあたりがきついと母親に訴えたところ兄弟で解決せよと言われる。普通そんなこと言わんよね。つまりこの話は非情な父親と母親に振り回された兄弟の話である。
ほぼ長男(実は二男)のケヴィンの視点による作品で、そのあたりもかなり克明に描かれている。ケヴィンさんは存命のようなのでこの作品を許諾したということは父母との決別を意図しているということだよね。
それでも多少遠慮が入っていると思われる部分はある。ひとつはフリッツの会社での粉飾決算。そして薬物の問題。筋肉増強剤や鎮痛剤はこの家では濫用されていたと思われ、それには父親フリッツの了解や推奨があったのではと思われるのだがそのあたりはチラリとしか出てこない。
もう一つ、フォン・エリック家にはあと一人クリスという末弟がいたはず(この人も故人)映画ではケリーと合わせたかたちになっているようだがなにか出せない事情があったのだろうか。
いずれにせよ映画は兄弟の愛情というところにかなり振れているものの、実際のフォン・エリック家は異常な父親が君臨した異常な家庭だった。故人(フリッツ)のこととはいえ、息子たちの無念を思う時、もっとフリッツ夫妻への告発というトーンが映画でも前に出てもいいのじゃなかったか。
しみじみと考えさせられる映画
フリッツ・フォン・エリックとかアイアンクローは、プロレス素人の自分でもなじみがあった。小学生のときにサンデーで「プロレススーパースター列伝」とかで出てきたかも。最初の方の対戦相手にブルーザーブロディとか出てきて、その漫画でも紹介されていたように思い、懐かしかった。映画はこれが実話かとびっくりしつつ、自分の夢や希望はどう育むべきか、親はどう係わるべきか(家族仲はとてもよいし、一筋縄ではいかない)、希死念慮と自殺観念とか色々考えさせられた。その後のエンディングがとても良かった。
足りない
Brothers
プロレス自体はあまり詳しくなく、実在する一家のことも全く知らない状態での鑑賞。
呪われた一家という名目に惹かれましたが、家族映画という印象が強い作品でした。
呪われた一家というのは言葉の綾で、父親から託された夢が結果的に重荷になってしまっている重厚な家族ドラマ、兄弟愛を緻密に描いた作品でした。
史実を知らなかったので、映画で明かされる内容とともに、兄弟達最期を知っていくのは中々に辛かったです。
幼少期に長男は事故で亡くなっていることが明かされ、三男のデビッドは日本に来日のタイミングで急死、四男のケリーは事故による後遺症で未来が見えなくなりピストルで自殺、音楽にお熱だった五男のマイクは薬の過剰摂取で死亡、六男のクリスもシーンはないながらもピストルで自殺と、ケビン以外の兄弟が何らかの形で、ケビンよりも先に旅立っており、兄弟の仲がとてもよさげだっただけに、これが史実なのは心にきました。
その兄弟愛が深いがゆえに両親の愛の注ぎ方や態度はぶっきらぼうすぎないかなと思いました。
父親のフリッツは夢を託したといえば聞こえはいいですが、基本的に鍛えることにしか目が行っておらず、心のケアなんかはまともにしているようには見えませんでした。どんな相談を受けても、プロレス以外だったら兄弟で話し合えと突き放すだけですし、息子達が成長してからも考え方が変わっているようには思えず、いわゆる洗脳のような形で息子たちを支配していたなという印象が強く残り、胸糞でした。
母親は放置しているかの如く教育に携わっている様子が見られず、これまた兄弟たちで話し合ってと突き放すばかり。後は神頼みに逃げているようで、父母どちらからもしっかりとした愛は注がれていないようでモヤモヤしました。
こういう作品で死後の世界が描かれるのは珍しいな〜と観ていましたが、壮絶な死の後に兄弟揃って再会、幼い頃に亡くなった長男とも再会して歩き出すシーンはとても切ないんですが、どこか安心できるシーンにもなっていてとても良かったです。
ラストシーン、素晴らしすぎました。
プロレスラーという職業を辞め、リングから降りて、自分の子供たちと向き合って、兄弟たちに想いを馳せて涙ぐむシーン、それに子供たちが気づいて駆けつけて、僕たちが兄弟になる!と純粋に言ってくれたシーンは観ているこちらもウルッときてしまいました。
エンドロールに大家族で牧場を持って幸せに暮らしているという旨が記されてあって、一安心しました。ケビンの息子たちもプロレスに挑戦していたりと、その後もプロレスとの縁は続いているんだなぁ、血筋だなぁと思いました。
役者陣、ザック・エフロンが素晴らしかったです。肉体改造もさることながら、何かに取り憑かれたんじゃないかってくらい狂気じみたプロレスのシーンや、兄弟の死やうまくいかない生活に感じる悲哀だったりと、様々な表情が見れて素晴らしかったです。
ノンフィクションの物語としての重さがずっしりとあり、全くの他人のはずなのにケビンに強く強く感情移入してしまう作品でした。
家族という名の呪いに兄弟で立ち向かっていく姿、兄弟を失って悲しみに喘ぐ姿、どこを切り取っても辛いはずなのに、自らの手で呪いから脱したケビンに拍手喝采です。どうかこれからもお幸せに。
鑑賞日 4/9
鑑賞時間 12:30〜14:55
座席 F-3
アメリカの話ですが日本のプロレスも同じで、栄枯盛衰は避けられないと
アイアンクロー
神戸三宮にある映画館 kino cinéma(キノシネマ)神戸国際にて鑑賞2024年4月9日(火)
パンフレット入手
解説
日本でもジャイアント馬場やアントニオ猪木らと激闘を繰り広げ、鉄の爪=アイアンクローを得意技としたアメリカの伝説的なプロレスラー、フリッツ・フォン・エリックを父に持ち、プロレスの道を歩むことになった兄弟の実話をベースに描いたドラマ。
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ストーリー
ヒール(悪役)のプロレスラーとしてドサ周り興行に参加していたフリッツ・フォン・エリック(ホルト・マッキャラニー)は、妻と子供たちを養うために自らのプロレス団体を設立。息子のケビン(ザック・エフロン)らを花形レスラーに育て上げようとしていた。
1979年、ケビンがNWAテキサス州ヘビー級チャンピオンとなる。フリッツはケビンを賞賛しつつも「これはまだ第一歩」だとさらなる鍛錬を積むように命じる。フリッツは早くに長男を亡くし、次男のケビンを筆頭にしたプロレス界最強ファミリーを作り上げようとしていた。
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ケビンに続いて三男デビッド(ハリス・ディキンソン)のリングデビューが決まり、大学生の四男ケリー(ジェレミー・アレン・ホワイト)は陸上競技のオリンピック代表選手として日々トレーニングに励んでいた。しかし1980年、アメリカ政府がモスクワ五輪のボイコットを宣言、活躍の場を失ったケリーは実家に舞い戻り、父フリッツの勧めで家業であるプロレスラーになることを決意する。
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フリッツはケビン、デビッド、ケリー兄弟をレスラーとして売り出し、次第に華のあるデビッドとケリーに人気が集中していく。ケビンは自分に向けらていた父の期待が弟たちに移っていることを敏感に察知するが、嫉妬に駆られる感情を抑え込み、ストイックに弟たちを支え続けていた。そんなケビンにとっての心の安らぎは恋人のパム(リリー・ジェームズ)の存在だった。パムが妊娠し二人は家族の祝福を受けて結婚式を挙げる。
デビッドは一家の念願である世界ヘビー級タイトルマッチに挑戦する日を間近に控えていたある日、巡業先の日本で急死してしまう。家族は悲嘆に暮れるが、父フリッツは悲しみを乗り越えて先に進むように子どもたちを叱咤する。
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デビッドの追悼興行でヘビー級タイトルマッチが行われることになり、フリッツはコイン投げでケビンとケリーのどちらかが出場するかを決める。選ばれたケリーは王者リック・フレアーを倒し、ついにフォン・エリック家から世界ヘビー級王者が誕生した。しかも喜びは束の間、ケリーはバイクの事故で片足を失ってしまう。
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「フォン・エリック一族は呪われてる」というジンクスを恐れるようになったケビンは、生まれてきた子供にデビッドと名付け、父親が改姓する前の「アドキッソン」姓で出生登録をする。一方ケリーの事故によって、ミュージシャンを目指していた五男のマイク(スタンリー・シモンズ)もレスラーへの道に足を踏み入れるが、試合中に負傷して病院に担ぎこまれてしまう。マイクは後遺症に悩まされ、周囲の期待に耐えきれずに衝動的に命を絶ってしまった。さらに義足で復帰したケリーも、手放せなくなった鎮痛剤の中毒症状に苦しむようになり、実家の庭で拳銃自殺を図る。
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気がつけば、兄弟で生き残ったのはケビンただ一人となっていた。それでもなお悲しみを拒絶し、強さを誇示しようとする父フリッツを目の当たりにして、ケビンはついに、人生最大の決断をするのであった。
アメリカの悲しみと希望
これまたA24の映画です。
プロレス映画ですが、決して挫折や失敗を乗り越えてついに"勝った!優勝!やったー!"でメインテーマが流れ、感動の涙が止まらないという話ではない。
プロレスと家族を題材にアメリカの男性性や宗教感や価値観の変容を描いてるといった様に私は感じた。
家族の呪いでもあると同時にアメリカの呪いでもある。
いつもは講釈を垂れない様にしてるが今回は垂れ気味に書きます。
まず一昔前の映画を観る時は何となく今の価値観だけでなく当時の価値観を脳の片隅に入れておくといいかもしれない。
例えば親が毒親のように描かれてるかといえば今の価値観でいえばYESで、当時ならNOだろう。今だからこそそれって教育虐待だよって思えるけど、一昔前はその感覚さえなかったわけです。負けと逃げるはあり得なかったから、悲劇的な展開だからこそ批難されただけで成功してれば違って見えるのだろう。
またこの映画の中で男性性の問題を描いていて、日本より自由の国アメリカの方が根強く残ってる。今でさえアリアナグランデの曲を聴いてればゲイ扱いされるし、オシャレしてもゲイ。モテたきゃマッチョで男らしさをアピールすべきと思ってる男性も多い。
その同調圧力も当時なら今とは想像出来ないほど強かっただろう。
それらをプロレスというビジネスで表現しててリングではいかに強く見せるか、それが虚勢だろうと成功すれば正義であり、プロレス(男性社会)では必須でありその強さは日頃の積み重ねが大切だ。だから男は泣いてはダメだし、下を向いても弱音もダメ。
そしてリングに上がる。逃げ場を絶たれたロープ(檻)に囲まれて同じ様に虚勢を張った者同士が本当の強さではなく第三者や運や流れで勝利が決め合う。
今でこそ遺伝で決まる事や成功の再現性の無さなどが理解出来るが、一昔前ならスポ根や24時間戦えますか?の世界だった。タフネスと成功がセットでそれが父親と銃(これもまたアメリカの象徴)で表現されてたのかなと思った。
もう一つ、宗教。敬虔なクリスチャンである母だが、私達日本人からすると信仰してるのになぜ?と思う場面多いが、教義自体が宗教の生まれた時代であり教義がアプデされずに時代の流れとのギャップが生まれて行った時代でもある。
特に自殺はキリスト教において御法度であり天国などありえないし、神様から許されもしない。だから今でも自殺より精神的自殺(ドラッグ依存)を選ぶ人が多い。なのでお母さんさえ涙を堪え息子への気持ちを吐くことさえ出来ず「同じ喪服はイヤ…」という。
また彼女は敬虔なキリスト教信者であると言う事は今話題のトラッドワイフという保守層の女性で、働きに出ず家事をこなし夫を支える。なので男社会に口出しをしないのもその影響であれが当時は一般的だったのだろう。
そういった背景があり、最後の天国の様子を描くというはキリスト教の影響力がアメリカで衰退したからこそ描けるわけで昔の価値観からしたらあり得ないシーンですごくグッときた。
あぁアメリカは変わったなぁと思ったし、息子達の様子を見て涙が流せたのが古きアメリカの呪いが解けた証拠なんだと思った。
唯一の理解者であるパムは新しい価値観の象徴であり、今でいうリベラル層。パムが働いてた事は彼にとっても違う選択肢を選びやすかっただろう。しかしリリージェームスは好きな俳優だからテンション上がったな。本当にかわいい。
パムがどんな時も寄り添い、子どもの面倒を見させてご飯を作らせ、そのおかげで彼は救われ違う道を探し新しい人生を見つけた。最後の沢山の家族に囲まれた写真も兄弟の集合写真も両方とも美しかった。
日本でも男性性の問題は軽視されてる部分や、氷河期の方に見られる自己責任論と助けてと言えない生き方
にも重なるものあるなぁと思った。
悲劇が続くシーンは本当に息が詰まり、友人の訃報を聞くかの様な寂しさとやり場のない共感。
いい作品でした。
ちなみに
カップルで観る◯
こういう話題で少し深い話できそう
家族◯
人によっては微妙な空気になりそう笑
1人◎
A24の映画は1人で観るのが正解なんかもな…
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