「原作を読むと分かりやすいです」六人の嘘つきな大学生 Ericさんの映画レビュー(感想・評価)
原作を読むと分かりやすいです
会議室という密室で繰り広げられる展開。私が初見にもかかわらず話に付いていけたのは原作を読んでいたからではないかと思う。それほど次から次へと六人に問題が矢のように突き刺さる。
黒の就活用スーツに身を包んだ人達が六人…果たして見分けられるのかと思っていたが、六人それぞれの個性を出されそれは杞憂に終わった。
欲を言えばストーリー後半に登場する波多野の妹、芳恵が事件の真相に迫るキーパーソンなのでもう少し流れを見たかったが、六人の存在の印象がそれだけ弱くなると考えればあの程度の絡みにするべきだろう。
ただ芳恵が指摘した20日、あの時刻に三箇所の撮影はできないこと、波多野の過去として晒された写真の問題が急ピッチで説明されて把握しにくかったのは残念。
ラストへの展開を変えたのは好感を持った。原作では前半を波多野、後半を嶌の語りとし、この二人の人物像を語る「証人」がいない。それで他の四人と比べると「月の裏側」とされた影が弱い。そこを映画では波多野は怒りから証人に会い始めたこと、嶌は内定選出方法が変わり波多野の気持ちを使いお互いに、つまり自分を選出して欲しいと頼んでいたこととし二人を善人から遠ざけた。
そして最後に嶌が四人を再び集めた。原作では四人は嶌と話をした後に去ってしまったと思われる。それが五人の前で真相が分かり、袴田、矢代、森久保、そして九賀さえ悪人ではなかったと、何より波多野の無実が明らかにされる。六人があの日の姿になるシーンは、あの時の波多野の皆への思いは間違っていなかったとなり安堵すら覚えた。
〈ちなみに原作の袴田はもっと迫力があるけれど、もっともっといい人です。原作を読了後、2025/2/28まで読める『六人のショートストーリー 袴田亮』にはちょっと来てしまいました。twitter(現X)から行けます〉