ビヨンド・ユートピア 脱北のレビュー・感想・評価
全73件中、21~40件目を表示
共産主義で世襲制をとる独裁国家、北朝鮮。 そこから脱北を試みる家族...
共産主義で世襲制をとる独裁国家、北朝鮮。
そこから脱北を試みる家族、脱北者、彼らを支援する牧師に密着する。
知らないことが多くて無知を恥じる。陸路は中国から行くのが一般的で東南アジアまでの大移動。見つかり次第強制送還されるリスクを抱えながらも進むのはより良い生活のため。スリルが凄まじい。
北朝鮮の恐怖政治から逃れるための脱北だが、洗脳教育の恐ろしさに目が入った。どれほど異常だったのか外国を見て明らかなのに、金正恩への崇拝の意思が変わらない点は驚愕した。
あまりにも価値のある作品だった
序盤の10年会えていない息子のために服を用意するお母さんで完全に自我が崩壊する。やめてくれ。しんどい。
北朝鮮を逃げ出したらどうなるのか?
どうやって逃げ出すのか?
そのあとの生活は?
そもそも北朝鮮ってなんとなくやべえって分かるけどどうやべえのか?
などなど、分かっているようで全く分かっていないことを叩き付けるように教えてくれる作品でした。
個人的に一番「分かっているようで全く分かっていないこと」は、脱北の目的が「生きていけないから」だったことでした。
皆が何かを切欠にこの国もうヤダ!!って逃げ出すのではなく、家族の誰かが脱北したとかスパイ容疑をかけられたとかで仕事が貰えなくなり、このままでは食べていけないから逃げるしかないという人ばかりで、故郷を離れたくない、懐かしい、と思う人がいるということは目から鱗でした。そりゃ懐かしいとは思うだろうが、最低限食べられれば留まっていたのか…と…
でも情報規制されていれば当然なのに、この考えが既にまるっきり第三者の、知ろうともしていない人間のものだと分からせられました。ヒン…
ベトナムとかラオスとか、中国にだって、この異常さを理解してくれる人はたくさんいるはず。
自国が親北だからって(もちろん国全体の利害を考えてそういう立場なのでしょうが)、これをヨシとしない人がいるに違いない国の人たちにも見てほしいです。
助けられることはなくても知るだけでも。
韓国ではこっそり受け皿を作ってあげてるのが本当に素晴らしいです。
もし日本に逃げてきたら、私たちは何ができるのだろう?
直接できることがなくても、この作品から学ぶだけでも非常に価値のある経験だと思います。
もっと広域で上映してほしい。
あらゆる全ての人が見るべき作品です。
ドキュメント映画です
前半は、アメリカ映画によくある二つのストーリーの展開を交互に進み、その間に脱北者のインタビューを挟んでゆく、途中で間延びするが北朝鮮の隠れた実態映像などは、国境近くの中国人が金稼ぎの為に北朝鮮に侵入し隠しカメラで撮影してスマホのSIMなどに隠して販売しているそうだ。この映画もその映像が所々多く見れた、この映画は実際の脱北映画、途中までこのような危険な映像を誰が撮っているのかと疑問を持ちながら見ていたら、途中でお金で脱北を依頼されているブローカーだと言う事が判った。だからブローカーの顔は映っていない、それを映画製作者は買った言う事だろう、何故わざわざ遠くベトナム、ラオスを通過してタイまで行って脱北するのかその理由はこの映画を見れば解かる。この映画を北朝鮮の幹部が見たらますます脱北が難しくなるのに何故公開したのか疑問に思うし、この牧師も捕まったら重い刑罰を受けるだろうに顔も出してよくやるなと思いました。
北朝鮮の兵士も貧しい、だからワイロなどを渡せば知らんふりをして脱北を見逃してくれるそれも実態だ。
本物だとしても、今後の逃避行経路はどうするのか?
20歳の頃、北朝鮮のプロパガンダ映画で、植民地支配していた日本軍を金日成将軍が馬に跨がって追い払うというものを当時の東京国立近代美術館フィルムセンターで観たことがある。本作によると、聖書のイエス降誕に準えた伝説がつくられたり、「鬼畜米英」あるいは「日本鬼子」にも相当するような「憎きアメリカ」という形容付の敵国呼称が存在するらしい。
近年の『蒼のシンフォニー』では、日本の朝鮮学校の生徒たちが、北朝鮮を公式訪問し、平穏な日常生活に触れるというものであったが、本作では、脱北者たちが否定的に表現する映像が投影される。
題名は忘れたが、小舟で南北朝鮮を独り行き来した男性の話を描いた映画を観たことがある。本作では、中国に抜けて、ベトナム、ラオスと、延々1万2千km にも及ぶ逃避行を敢行するということらしい。そういう物語の設定に添ってフィクション映像がつくられてもおかしくないくらいつながっている。想田和弘氏は、脱北者自身にカメラをもたせたことを「常識破りの手法」と評価しているが、難民の逃避行を描いた作品等にも、同様の手法を取ったものがあるような気がする。映像が本物だとしても、こうして実在経路を映画として公開してしまうと、この経路は秘密ではなくなるので、今後は使えなくなってしまうということではないのか。脱北支援活動家が、本作の制作、公開をなぜ許可したのか、理解に苦しむ。
何が幸せ?
いっそ、自分たちの国のことしか知らなかった方が幸せだったように感じた。
「宝くじの不時着」をみたばかりだったので、やはり北を美化してあったのかなあと思った。フィクションは最初から作り物と納得して見れるが、ドキュメンタリーだと何がほんとかはわからない。そこは心しておきたいとは思った。
自分の目ですべてを確かめる
見ることで様々な見え方が生まれる映画でした。
考察
・メディアの恐ろしさ、利益のためか国益のために放送されている。
・どんなにありえない状況の中でも、彼らの精神で学ぶことはたくさんある。
・家族愛を大切にしており、良い暮らしで家族への愛を忘れがちになっているのかもしれない。
・お金で解決されるところはやはり恐ろしい
・意志だけではなく、その中で結局お金に関わる世界は恐ろしい
・みんなが守りたい地位はどの国の政治家に変わりはなく、やり方が異なるだけかもしれない
おしゃれまで80年
緊迫感マックスのドキュメンタリー。人生を懸けて「脱北」を手引きする牧師(韓国人)の物語。妻になる人との出会いがきっかけであり、息子さんの事が今までに至る理由である事に感銘を受けた。それこそ聖職者になった事すら、"今"に導かれる為の手段だったのじゃないかと思う。だとしても頭が下がる。到底出来る事ではない。とにかく観て欲しい。そしてお祖母ちゃんの一言に愛しさを覚えて欲しい。人は"国"の為になんか生きなくて良い。我々(日本)も含めて。
脱北のハードルの高さを知る
北朝鮮、中国、ベトナム、ラオス、タイまで移動してやっと亡命が成立するらしく、その距離に圧倒された。
北朝鮮の生活の厳しさも、しんどいなぁ、辛いなぁと感じたし、逃亡の手助けをするブローカーが、“売る価値がない家族だから”、5人家族の処遇をキム牧師に相談するという現実にも戦慄した。
とはいえ、韓国に亡命できる細くて脆い望みの綱を求める以外に、生きる道がなかった訳で。
既に家族が脱北した場合、北朝鮮に残った家族は、“移住”させられるのだから。“移住”は、人の住めない山岳地帯に毛布さえ与えずに、対象者を放置する行為を指すらしく、事実上の処刑な訳で。
糞尿ネタに笑ってしまう小学生みたいなセンスが抜けない私は、各家庭のうんこを凍らせて国に提出する件は、笑ってしまいました。量が少ないと罰せられるからよその家から盗むて…
そして、処刑を見せられるとか(面前DVのひどいやつよね)、曲芸レベルのバク転?とかを“みんな”やってるとか(運動苦手な子どもはどうなるのだろう、わたし絶対できないし、そのことが原因で殺されるかも)、恐ろしすぎて…
他国の状況を、他所から見て可哀想だとか野蛮だとかいうのは、傲慢だと思うのだけど、傲慢さなんてなんぼのもんかい、傲慢でええからなんとか助けられないの?と思った。それほど人権が蹂躙された状況で、なんとかならんか?とぐるぐる考えています。
事実の重さに潰されそうですが、見てよかったです。
ドキュメンタリーの持つ力に圧倒される
北朝鮮による凄まじい人権侵害。果たしてコレを隣国の話としてみていていいのか。
トップにいるものが国民が汗だくになって働いたものを吸い上げ、平然と嘘をつく。周りの一定数の取り巻きだけが、安定した生活を送っている。底辺にいる人たちの叫びは届かない。誰もが好き好んで脱北しているわけではない。祖国で暮らしていけるのなら、暮らしていたかった。
こんなことが許されていいのかと言う想いで、ただただ脱北の成功と息子さんの安否を願った。
三世代の家族が生きて行けない故の地上の楽園からの脱北とは?
こんなにも苛酷な脱北に老女幼児が痛ましく、可愛らしく、生々しい。
そんな彼らが夢見た行き先の韓国をいかに見るか?
そして、
自由な国家、社会を考えて行くと…
北朝鮮に、
そもそも我が国の朝鮮総督府の面影が浮かぶ。
そうだ、
我が国に何度かの鎖国社会があった。
さらには、隠蔽マスメディア、宗教弾圧、村地域、会社、学校、クラブ、家庭、夫婦、友人と本当の自由な関係であるか?
昔も今も、きな臭さが息づいていることが知れる。
そんな空気のような環境について、気付かせてくれた秀作だった。
(^_-)
オフィシャル コピーより
1949年9月の建国以来、70年以上にわたり北朝鮮社会を支配してきた金日成の一族は、国家を閉鎖された状態に保ってきた。
北朝鮮に住む人々はそこが「地上の楽園」だと信じ、最高指導者である金一族を神と同等の存在として敬い慕う。
しかし、一糸乱れぬ壮大なマス・ゲームや、華々しい軍事パレードの裏側で、ナチスのアウシュビッツやソ連のグラーグを模した強制収容所の存在、密告や拷問、処刑、飢えや貧困といったおぞましい人権侵害の数々が報告されている。
総移動距離1万2千キロメートル、4つの国境を越え、50人以上のブローカーが協力する決死の脱出作戦
この映画の中心となるのは、祖国北朝鮮を離れいくつもの国境や川、険しい山岳地帯を超えて危険な旅に乗り出す2人の幼い子どもと80代の老婆を含む5人の家族、国に残して来た子どもとの再会を切望する母親、そして、自由を求める彼らを強い使命感をもって支援する人々だ。
( ^ω^ )
ビヨンド・ユートピア 脱北
脱北を試みる家族の死と隣り合わせの旅に密着したドキュメンタリー。
これまで1000人以上の脱北者を支援してきた韓国のキム・ソンウン牧師は、
幼児2人と老婆を含む5人家族の脱北を手伝うことに。
キム牧師による指揮の下、各地に身を潜める50人以上のブローカーが連携し、
中国、ベトナム、ラオス、タイを経由して亡命先の韓国を目指す、
移動距離1万2000キロメートルにもおよぶ決死の脱出作戦が展開される。
撮影は制作陣のほか地下ネットワークの人々によって行われ、一部の詳細は関係者の安全のため伏せられている。
世界に北朝鮮の実態と祖国への思いを伝え続ける脱北者の人権活動家イ・ヒョンソをはじめ、数多くの脱北者やその支援者たちも登場。
「シティ・オブ・ジョイ 世界を変える真実の声」のマドレーヌ・ギャビンが監督を務めた。
2023年サンダンス映画祭にてシークレット作品として上映され、USドキュメンタリー部門の観客賞を受賞。
ビヨンド・ユートピア 脱北
劇場公開日:2024年1月12日 115分
牧師さんは大丈夫なんだろうか
命がけの脱出で、見ていて胃が痛くなった。
あの一家5人は、なんて強運な人たちだったか
幼い姉妹の、お姉ちゃんが、おばあさんの不安を和らげるように抱きしめたり、牧師さんの汗を拭いてあげたり、幼いながらも事態を理解して気遣いしていて健気。
再現は一切使っていないとのことだが、ところどころぼかされている部分があり、あからさまにできないことも多いのだろうと思った。
無事に脱北できた一家と対象的に、息子の脱北が失敗、収容所送りにされてしまった母の悲劇。
(この母は韓国でかなりいい生活をしているようで、韓国でいい職についているんでしょうか)
北の国の惨状に絶句だが、かといって自分に何ができるのだろうか。
牧師さんと、奥さんも含めた協力者は、大丈夫なんだろうか。
韓国に潜入している北の手配で暗殺などの危険もあるのでは。
国民の方を向いていない指導者
よくぞ、撮ったものだ。
冒頭「再現フィルムではない」と一文が入る。
すべてが隠し撮りの映像、
見つかると命を失うドキュメンタリーなのだ。
撮影スタッフも、もちろん脱北する家族と
それに帯同するキム牧師も、
たまたま運が良かったとしか思えない
緊迫した時間が映し出される。
明かりを最小限にして幼い子どもたちと祖母を連れ、
10時間も山の中を歩き通し、小舟で国境を渡る。
信頼できるのかも定かではない
ブローカーに命を託すしかない綱渡りが続く。
そんな彼らに、自ら一緒について行き、
ブローカーと連絡を細やかに取る牧師がいてくれる、
それはなんと心強いことだろう。
脱北を果たした幸運な家族と対照的なのが、
もう一方の家族。
自分も幼い息子を置いて脱北した母親。
10年以上を経て呼び寄せた息子が国境で捕まってしまう。お金を用意するがどうにもならず、
角材で殴られ胸も腰も痛め、食べ物も噛めない
様子を聞かされるなんて酷すぎるよ。
17歳の息子は母にも会えず
過酷な拷問でひとり死んでいくだろう。
息子の幸せのためにどうすれば良かったというのか。
飢えて道で野垂れ死んでいる市民の映像や
放課後、毎日何時間もマスゲームの練習をさせられたと
語る、脱北した若い女性のインタビューが挟まれる。
なんという国。なんという指導者。
そして、これほどまでに生命や人権が脅かされている
というのに、周りはなすすべもないのだ。
観ることしかできないけれど
せめて観て、知ることだけでもしようと思った。
次第に中国という国は!ロシアという国は!と絶望的な気分になってくるのだが、冒頭にかつて日本が占領していた話が挿入されているため、じゃああなたは?何の責任もないの?と責められている気もする。
とはいえ、物理的に海で隔てられてもいない韓国や中国の国民は、普通に真面目な人であれば、何をやっても常に心に重しがあるのではないかと思えて仕方ない。
あの牧師さんは現代のキリストか。本当に凄い人を見た。脱北女性と結婚し、脱北者を助ける過程で首を骨折するなど、まだ若いのに身体はぼろぼろ、同じく支援者であったらしい息子さんが、その苛酷さゆえか亡くなった話には驚く。静かに笑いながら打ち明ける姿は、どんな名優もかなわない説得力。達観した人間は、多くを語らなくなるのか。すでに生身を超越し、危険も感じなくなっているのか。
国家とは、権力とは一体何だろう。同じ現代の地球にこんな酷い人権侵害があるのに、オリンピックやワールドカップをやってもいいのかな。スンドゥブやキムチを味わっていていいのかな。でも平和の大切さをかみしめ、維持しなければならないから、やるべきなのだろう。
大金をもらい活動するブローカー、地下活動家の人々は、確実に命を賭して他人を救っている。中には詐欺がいるかもしれないが、信じるしかない人々を相手に、淡々と、国家が手をこまねいている間に次々と、日々命を救おうとする尊さに打たれるばかり。
どうしようもない事と我々に出来ること
2024年劇場鑑賞3本目 秀作 69点
当サイトの好評価と、2022年夏鑑賞の映画 ナワリヌイ の様な脱走ドキュメンタリーということで、桜木町KINOシネマに足を運んで鑑賞
勿論、内容もそうだし現実としての問題、追っている映像や過去の映像は衝撃的でした
皮肉で悲しいのが脱北を手助けする韓国の牧師やその他そういった活動をしている人達も、全て善意で動いていなくて、脱北を試みる方々を金ズルとしかほぼ見ていないのが、牧師も危険が伴うし、仕事であるし、自分らにも生活があるからしょうがない事ではあるのだけれども、ここまで生まれてくる国や地域、時代や性別で、こんなにも不条理で残酷で理不尽なことがあるのかと絶望させられる内容であるのと同時に、結局は我々観客も上部だけの同情でエンタメとして消化してしまう人が大半なのが、悲しく申し訳ないけど、せめてもの手向けとして、それでもできることは日々に感謝することしかないのかなと思った
多分こういったドキュメンタリーを鑑賞したのが今作が初めてであったら、もっと個人的評価がたかったかもしれないが、当方は2年前にそれこそナワリヌイと仙台の収容所のドキュメンタリーである牛久という映画がそれぞれ物凄い衝撃だったので、少しばかり免疫がついてしまったのかもしれない。
もう数年後にでも必ず見返した、是非
リアルかフェイクかミックスか?
質感がリアルで見応えのあるフィルムだった。
編集が上手く、北朝鮮と脱北についての既成事実は全て網羅されていたと言えるだろう。
冒頭に
「再現フィルムは無い」と謳っているが
ここはあえて、懐疑的に
ミックスではないか?
という見地から疑問点を列記したい。
まず、主人公である脱北を支援してきた牧師の今後の活動と身柄が危な過ぎる。
韓国内には相当数の北朝鮮スパイが潜伏しているといわれている。
牧師が顔出しまでして教会の外観やノウハウをここまで仔細に暴露するメリットがわからない。消されないか心配。
山を三つも越える移動を含む過酷な行程で、歩けないお婆さんをどう運んだのか?
撮影機材などのバッテリーはどれだけ搭載していたのか?
負荷荷重は相当だと思われ
ここはリアル脱北家族を使った再現ではないか?と思った。
ストーリー補完役?としてチョイチョイ出てくる脱北整形美人の流暢過ぎる英語力が気になった。
息子の脱北を叶えられなかった母親も役者かな?と思った。
こちらも整形美人。
ブローカーとの大事なやり取りをどうしてタイミングよく収録できるのか?
四六時中クルーが張り付いていたのか?
リアルだとしても再現だと思う。
この他にもツッコミどころ満載なので
アーカイブが出たら是非購入して検証してみたいと思うほど存在すら興味深いフィルムだ。
一つの大掛かりで心温まる成功例を示すことで
キリスト教、もしくは他のカルト教団、そして脱北ブローカー達のプロパガンダというみかたもアリだろう。
脱北の大変さを知り、日朝関係にも目を向けざるを得なくなる労作
北朝鮮から逃れんとする脱北者に密着した迫真のドキュメンタリーでした。「再現映像は一切使っていない」とのことでしたが、文字通りリアルの映像だからこその迫力があり、非常に質の高い、価値ある作品だったと思います。
本作で取り扱った脱北者は2グループいて、1グループは祖母、その娘夫婦、さらにその娘2人の3世代に渡る5人家族で、本作の主役とも言うべき韓国の脱北支援者のキム・ソンウン牧師が、この5人を北朝鮮と中国の国境沿いを流れる鴨緑江の川岸から、中国国内を横断し、さらにベトナムそしてラオスのジャングルを経由してタイまでの千キロを超える道中を案内するというもの。もう1グループは、母親が先に脱北し、その1人息子の脱北のお話。
目指すはいずれも韓国なので、38度線を超えるとか、船でチョロっと行けば直ぐ着くじゃないかと思いがちですが、38度線付近には数百万の地雷が埋まっているそうで、余りにも危険で無理だそうだ。鴨緑江を渡って一旦中国に入ってから船で韓国に渡るルートは、かつては利用されていたようだけど、今は厳しいそうで、前述のような東南アジア経由にならざるを得ないとのこと。数年前に大ヒットした韓国ドラマの「愛の不時着」では、38度線の下に掘られた地下トンネルを通って登場人物が北と南を行き来していたけど、当たり前の話あれは完全な創作であり、現実には絶対に出来ないようです。
そんな訳で現実の脱北者たちは、アジア大陸を大回りをして韓国を目指さざるを得ないことになりますが、キム・ソンウン牧師のような韓国の協力者や、各地にいるブローカーなどの手を借りながら目的地を目指すようです。ただブローカーはカネ目的の商売なので、場合によっては脱北者が人身売買の対象になってしまうことがあるなど、一ミリも油断は出来ない模様。当然のことながら、中国などの警察関係者はもとより、脱北者を当局に突き出せば報奨金が貰えることから、一般の人の眼も避けねばならないという、緊迫感溢れる状態での綱渡りの連続をしないと脱北は出来ないということがヒシヒシと伝わって来ました。それでも北朝鮮に留まるよりはマシというのだから、如何に北朝鮮での生活が厳しいものであるかが分かるというものです。
実際本作の中でも、ソ連崩壊後に共産陣営からの援助がなくなった1990年代前半から、北朝鮮国内の状況が急激に悪化したことが報告されていました。北朝鮮首脳部は、この状況下での権力維持のため、国内においては強権政治を一層強めるとともに、対外的には核開発により外圧を跳ね除ける力を手に入れる方向に舵を切ったようです。韓国のテレビを見たからという理由で処刑されたなんていう話は、本作を観る以前から伝え聞いていたことではあるけれども、本作では一般民衆の前で公開処刑されるシーンも登場し、北朝鮮という国の怖さを余すところなく再認識させられました。
それにしても本作の凄いところは、鴨緑江を渡るシーンの映像こそないものの、その後のアジア大陸横断の様子が映像化されており、また北朝鮮国内を含めたブローカーとのやり取りも記録されていて、非常に興味深いものでした。真夜中にジャングルを彷徨うシーンは、フィクションよりもハラハラするものでした。
いずれにしても、現在進行形で日本の隣にこうした国家が厳然と存在し、北朝鮮の人民だけでなく、日本を含めた周辺国家の安全も脅かし、さらに言えば過去の植民地支配を含め、歴史的に見れば日本と浅からぬ関係があることを思えば、日本国家として、そして日本人として、今以上に北朝鮮との関係や日本の外交的態度を真剣に考える必要があると認識させられた作品でした。
そんな訳で、本作の評価は★4.5とします。
凄い映画。
凄い映画。良く撮れたと思う。
北朝鮮の描写や映像がリアルでぐいぐいとくる。
こんな国がそんなにないだけにこんなドキュメンタリーはちょっと他にないかもね。
キリストと同じ立ち位置にあの一家がいることは初めて知った。
その上での、脱北一家のおばあちゃんと娘さんのコメント。
そりゃああなるのよね。
全73件中、21~40件目を表示