「透明感と柔らかさに満ちた映像で紡がれる再出発への道」来し方 行く末 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
透明感と柔らかさに満ちた映像で紡がれる再出発への道
透明感あふれる映像の中で、人の生き様や遺したものを真摯に見つめる物語である。主人公は弔辞の代筆業を担っている。遺族に代わって故人の人となりをまとめる仕事だ。依頼者は北京で日々忙しく暮らす人ばかり。もしかすると10年先にはAIでたやすく代用される職かもしれないが、しかし今依頼が絶えないのは、彼のとても誠実なリサーチ力と、完成原稿のクオリティに定評があるから。案件によっては、遺族から話を色々と聞く中で、故人の知られざる思いを発見することもある。ではなぜ彼はこうして見ず知らずの人について掘り起こすことに長けているのか。ここに本作のもう一つの焦点と、なるほどと腑に落ちる展開がある。終始ゆったりとした語り口で、感情を荒げたり、感動を押し付ける真似はしない。悪人も出てこない。だからこそ、この再出発の物語に安心して身を委ねられる。決して派手さはないが、気がつけば不思議と心にエナジーが溜まっている一作だ。
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