TATAMI

劇場公開日:

TATAMI

解説・あらすじ

「SKIN 短編」で第91回アカデミー短編実写映画賞を受賞したイスラエル出身の映画監督ガイ・ナッティブと、「聖地には蜘蛛が巣を張る」で第75回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞したイラン出身の俳優ザーラ・アミールが共同でメガホンをとり、実話をベースに描いた社会派ドラマ。スポーツ界への政治介入や中東の複雑な情勢、イラン社会における女性への抑圧を背景に、アスリートたちの不屈の戦いを描いた。

ジョージアの首都トビリシで女子世界柔道選手権が開催されている。イラン代表選手のレイラ・ホセイニとコーチのマルヤム・ガンバリは、順調に勝ち進んでいたが、金メダルを目前に、政府から敵対国であるイスラエルとの対戦を避けるため棄権を命じられる。自分自身と人質に取られた家族にも危険が及ぶなか、政府に従い怪我を装って棄権するか、それとも自由と尊厳のために戦い続けるか、人生最大の決断を迫られる。

レイラ・ホセイニ役をアリエンヌ・マンディ、コーチのマルヤム・ガンバリ役をザーラ・アミールが演じた。第36回東京国際映画祭のコンペティション部門で審査委員特別賞と最優秀女優賞(ザーラ・アミール)の2部門を受賞。映画史上初めてイスラエルとイランにルーツをもつクリエイターが協働した作品とされ、製作に参加したイラン出身者は全員亡命し、映画はイランでは上映不可となっている。

2023年製作/103分/G/アメリカ・ジョージア合作
原題または英題:Tatami
配給:ミモザフィルムズ
劇場公開日:2025年2月28日

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映画レビュー

4.0柔道シーンの迫力

2025年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

国際政治に翻弄されるスポーツ選手の物語である。そのため、見どころは大きく2つ。政治的な駆け引きと翻弄される主人公といかに国の圧力から脱するのかのストーリーと、本格的な柔道バトルだ。
カメラは、手持ちで主人公をどこまでもついて行くタイプの撮り方。そのため、観客は主人公と同じ状況に放り込まれて、突然国の諜報部みたいな連中が圧力をかけてくるところに遭遇させられる。孤立無援の状況の中で、試合もこなさないといけない、しかも、国では家族にも危機が迫っている。目の前の相手とそれ以外のものとも主人公は戦う必要があるという緊迫した状況が続く。
そして、柔道シーンがすごく本格的なのがいい。カメラも近接ショットが多くて、迫力満点。組み合う選手たちの必死の形相がこの格闘技の激しさをよく伝えている。
苦難を乗り越え、戦い続ける主人公がカッコいい。スポーツはとかく政治に翻弄されてしまうものだが、純粋な戦いだけを臨むアスリートの情熱が政治を乗り越えていく姿には感動を覚える。

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杉本穂高

4.0小粒だが痺れる。モノクロームが技と運命の決断を際立たせる

2025年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

小粒ではあるが痺れる映画だ。モノクロームで織りなされた映像が、柔道の国際大会ほぼ一か所に限定された舞台の息苦しさと緊張感に拍車をかける。まさかこの場所、このタイトルから、イラン代表の女性選手をめぐる政治サスペンスが勃発するなんて誰が想像しただろうか。助けてくれる者なんて側にはいない。それどころか工作員のような連中まで控室まで易々と入ってくる。そんな状況に主人公がたった一人で抱え込む葛藤。その感情を全て投げ打つかのような畳上での気迫。「一本!」の声が響く時の沸き立つ高揚。余計な色を削ぎ落としているがゆえに、彼女が下す決断の数々が際立つ。その集積の上に彼女の命運とアイデンティティが築かれていくのがわかる。そして繰り返される歴史の鎖を象徴するかのような専属コーチの葛藤も本作のもう一つの魂。同役を演じ共同監督を兼任したザーラ・アミールの実人生が、本作に言い知れぬ力強さとリアリティをもたらしている。

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牛津厚信

4.5スポーツ・格闘技としての面白さと、国家からの抑圧に抗う人々を描く社会派サスペンスの意義を両立させた傑作

2025年2月25日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

興奮

日本発祥の柔道を題材にワールドクラスの傑作映画をイスラエルとイラン(系)が中心の製作・出演陣が作ってくれたことに、率直な感謝と軽い嫉妬(なんで邦画でできなかったんだろうという)が入り混じった思いを抱いた。

映画の重点は柔道そのものよりも、国の抑圧的な干渉に抗う代表選手と板挟みになる監督に置かれる。とはいえ、トーナメント形式で進行する国際大会の一日をほぼリアルタイムで追う大筋の中で、数試合のシーンは臨場感と迫力に満ちている。撮影上のテクニックと工夫が駆使され、激しく組み合う2人をカメラが近い位置からぐるりと回って収めたり、抑え込まれてうつぶせの主人公の苦し気な表情を畳側から(!)とらえたりする。

主人公のイラン代表選手レイラ・ホセイニを演じたアリエンヌ・マンディは、チリ人とイラン人の親を持つ米国人女優。ドラマシリーズ「Lの世界」の主要キャストとして知られる。本格的にボクシングに取り組む姿が短編ドキュメンタリー「Arienne Mandi | Why I Fight」(2022)になるなど、格闘技の選手役に最適なキャスティングだったようだ。

企画の始まりはイスラエルのガイ・ナッティブ監督からだったが、「聖地には蜘蛛が巣を張る」の女優ザーラ・アミールにまずガンバリ監督役をオファーし、キャスティングと脚本への彼女の協力を経て、共同監督としてのコラボに至ったという。「聖地には~」で書いたレビューから長めの引用になるが、「ザーラ・アミール・エブラヒミはイラン出身の女優で、2000年代に同国のテレビドラマなどで人気を博するも、06年に元交際相手と彼女の性行為を撮影したものだとされる動画が流出してスキャンダルに。エブラヒミに非がない上に動画の真偽も定かでないにも関わらず当局から収監されるリスクが生じ、08年にイランを脱出してパリに移住(後にフランスの市民権を得ている)」。体制と男性優位社会から抑圧され亡命したザーラ・アミールの経験が、本作にも確かに反映されている。

スタンダードサイズ(1.33:1)のモノクロ映像は余計な情報を排除し、試合中の選手らの動き、人物らの表情に観客が集中するのに大いに役立つ。さらに、国の関係者らから棄権するよう命じられ追い詰められるレイラとガンバリの閉塞感も効果的に表現している。

人権、とくに女性の人権を尊重せず抑圧するイランの体制を批判する映画の日本公開が、2週間前の「聖なるイチジクの種」、そして本作「TATAMI」と相次ぐ。国の強大な力に、表現というソフトパワーで立ち向かうイラン(系)の人々の映画に、「柔よく剛を制す」の精神を見る思いがする。

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高森 郁哉

1.0TATAMI

2025年5月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

前半は見えてしまう展開で、これ星★の作品かな?と思いました。
もう脅かして、残り90分どーすんの??と。
それに抗うスポ根的な作品かと思いました。
で、例によって「思ったのと、違う」でした。
スゴく政治色の強い、ヒューマンドラマ(ニセモノの)。
国や宗教に虐げられながらも、自由を求める人達。
親を人質に取られても、なお、
てな、観るべき映画なんです(ニセモノの)。
作品として、フィクションとしては面白い映画です。
ここからは、ニセモノに言及します。
イス〇エルの監督が、アメリカ映画でイ〇ンを批判したら、もう娯楽ではありません。
事実に基づこうが、必ず作り手は都合良く解釈します。
イ〇ンばかりじゃありませんよね?
かの大統領の出現で、アメ〇カも、もはや自由の国じゃなくなった。
不倫して尚、政党の代表に居座るこの国の政治家。
キックバックが当たり前の政党。
でも、列挙した国々よりも、この国はまだまだマシなのかな?と、思う帰り道でした。

簡潔を旨としてるのに、思わず長くなりました。
見て下さる方々、スミマセンでした。

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