西湖畔(せいこはん)に生きる

劇場公開日:

西湖畔(せいこはん)に生きる

解説

2023年・第36回東京国際映画祭コンペティション部門出品。

2023年製作/115分/中国
原題:草木人間 Dwelling by the West Lake
配給:ムヴィオラ、面白映画
劇場公開日:2024年9月27日

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(C)Hangzhou Enlightenment Films Co., Ltd.

映画レビュー

3.0タイトルなし

2023年11月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

楽しい

知的

TIFF2023にて。
前作とはイメージがガラリと変わって驚かされたが、違わず、美しい素晴らしい作品でした。

西湖の茶園で働いていた女性が解雇された次に行き着いたのが、足裏シートを売るマルチ商法の団体。
洗脳されてハマる母と助けようとする息子。悲しいが、よくある事件であり、世知辛い社会で生きる庶民の姿を客観的に切り取ることで、自分探しという欲求を通して、運命をどのように切り開いていくかということが描かれていて、美しい風景の映像とは裏腹に、経済悪化に翻弄される親子の様子は、惹き込まれてとても気持ちがヒリヒリしました。

人間誰しも多様性を秘めているが、どう有りたいか、どうしたいかという気持ちを抱けるのは、自分という者を少しでも理解している人が、そう思えるのだと思います。

1つの欲望から、自分という者がどういう人間でありたいか?と気付くことは、生きる力でもあり、その先にも沢山の可能性という選択肢が待ち受けている。失敗や成功を繰り返しながらも人は死に向かって生きていかねばならない。超高齢社会となった今ではとても長い過酷な道のりとなってしまったが。

お茶という字は草と木の間に人を書くが、人間は草木の間に生きており、 人間の個体は草木のような生命があるという。
草木の様に、抗わず自然に生きるのが美しいのだな…と、感じさせられた映画でした。

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エミさん

3.0題目やポスターから、 香ばしいお茶、畑で丹精込める様子を想像したと...

2023年11月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

題目やポスターから、
香ばしいお茶、畑で丹精込める様子を想像したところでしたが。

まさかの、
茶摘みを解雇され、詐欺で財産を失う母と、彼女の覚醒を願う息子の話でした。

自信がつくような暗示、周囲の羨望を浴びている(と信じられること)、派手な生活が、
よかったのか、悪かったのかは、判断つけきれないです。

茶摘みの、緑色の茶畑で丹精込めた、地味で目立たない過ごし方とのコントラストに驚きました。

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woodstock

4.5美しい一編の詩です。

2023年10月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

 「春江水暖」の顧曉剛監督の新作。同じ西湖の周辺に漂う人間模様を描くが、趣は前作とは大いに異なる。それは前作が素人を使ったドキュメンタリーに近い作品であったのに対し、今回は超一流のプロを使った劇映画だからである。
 しかし、水墨画のような、一片の蒔絵、あるいは細心に織り込まれた絹織物のような、流れるような展開は共通である。煩悩に満ちた小さな、だけれども愛おしい人間たちを優しく包み込む中国の大地や優しい母の如き川の流れが、見事に渾然一体となって美しく描かれる。これは一編の詩である。
 原題「草木人間」は意味深いが、英語題名の直訳の邦題は詩的な原題の良さを欠き惜しい。
 色彩設計が見事だ。銀残しのごとき乾いた渋い色調に茶畑や山の木々の緑が目に痛いほどに輝く。茶の葉を這う朝露の輝きや潤いまで感じさせるほどだ。蓮の花の可憐な淡いピンクは魂の再生を促すようだ。人間が美しい。自転車で疾走する姿、茶摘みの姿、母を背負い山を登る青年の姿は、純粋に、映画的に美しい。
 私は中国語を解さないが、私の耳には台詞がとても美しい音楽のように響いた。脚本の監督と郭爽が、美しい言葉、美しく響く言葉、美しい文字を特に選んだのだろうか。前作と異なり、見ていて辛くなるような厳しいこの物語が縦糸なら、この美しい言葉たちが横糸としてこの物語を紡いでいく。
 映画は天の慈愛に満ちた目で優しく主人公たちを見つめる。彼らは現代の中国の普通の人々だ。貧しくて、不幸せで、自己実現、承認欲求にもがき苦しんでいる。そう、彼らは我々と同じ「普通の人々」だ。皆が幸せになりたくて、世の中に認められたくて、悩み、苦しみ、もがいている。彼らは必ずしも賢明な存在ではないが、映画は優しく彼らを見つめ続ける。
 主演俳優陣は皆素晴らしい。一人一人の主人公たちが愛おしく、見終わったあとに抱きしめたくなるほどだ。演技は、まさに中国の悠久の歴史の如く、たゆとう川の流れの如く、自然かつ演劇的なものである。母親役の蔣勤勤の狂気の演技は主演女優賞に値する。映画史に残る名演だ。汚れ役だが、芯の美しさを隠すことはできない。息子役呉磊の演技はどうだ。若々しく純朴な、正義心に溢れる青年を見事に演じきっている。家族を必死に守ろうとする彼の姿は感動的だ。猛セールスを演じる王佳佳も狡猾な実業家と純粋な人物の二面性を見事に演じ分けている。同じく猛セールスを演じる鍅楠も本物ではないかと見まごうほどの名演である。茶園経営者を演じる陳建斌の慈愛に満ちた自然な演技も素晴らしい。
 名匠梅林茂の音楽が素晴らしい。ただ多彩で美しいだけではない。あえて音楽を使わない「無音の美」を感じさせる間合いはさすがだ。また、音楽と自然音や効果音が見事に融合され一体となる奇跡のような瞬間がいくどとなくあった。
 ラスト、青年は自らの相剋を乗り越え、寺を訪れ、悟る。そのときカメラはそれまでの天の目と異なり、一瞬ロー・アングルから彼に対する敬意を示すように仰ぎ見る。それはあたかも天の目が地上に降り立って、初めて彼を認め、再生した彼に寄り添ったかのようだ。そうして、ときは静かに流れていく。西湖をたたえる水も変わらない。人の悩みや苦しみや幸せや相剋や和解や復活や、そうした人間ひとりひとりの、愚かだが愛おしい営みの全てを受け入れ、静かに見つめ続けるように。

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マベリック
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