ダム・マネー ウォール街を狙え!

劇場公開日:2024年2月2日

ダム・マネー ウォール街を狙え!

解説・あらすじ

SNSを通じて団結した個人投資家たちが金融マーケットを席巻し社会現象を巻き起こした「ゲームストップ株騒動」の実話を映画化。ベン・メズリックのノンフィクション書籍を基に「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」のクレイグ・ギレスピーが監督を務め、前代未聞の事件の内幕をユーモアたっぷりに描く。

コロナ禍の2020年、マサチューセッツ州の会社員キース・ギルは、全財産5万ドルをゲームストップ社の株に注ぎ込んでいた。アメリカ各地の実店舗でゲームソフトを販売する同社は時代遅れで倒産間近と囁かれていたが、キースは赤いハチマキにネコのTシャツ姿の「ローリング・キティ」という名で動画を配信し、同社の株が過小評価されているとネット掲示板で訴える。すると彼の主張に共感した大勢の個人投資家がゲームストップ株を買い始め、21年初頭に株価は大暴騰。同社を空売りして一儲けを狙っていた大富豪たちは大きな損失を被った。この事件は連日メディアを賑わせ、キースは一躍時の人となるが……。

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のポール・ダノが主演を務め、ピート・デビッドソン、ビンセント・ドノフリオ、アメリカ・フェレーラ、セス・ローゲンが共演。

2023年製作/105分/G/アメリカ
原題または英題:Dumb Money
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2024年2月2日

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

“観る楽しさ”倍増する特集をチェック!

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画評論

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3
  • 画像4
  • 画像5
  • 画像6
  • 画像7
  • 画像8
  • 画像9
  • 画像10
  • 画像11

(C)2023, BBP Antisocial, LLC. All rights reserved.

映画レビュー

4.0下層の意地と反逆に鼓舞される。

2024年2月29日
PCから投稿

富裕層に楯突いた名もなき庶民たちの胸のすくような実話、という体裁からして、いかにもハリウッド好みの題材に思えるし、草の根の運動が大きな波を起こすカタルシスも、実話ベースであることを思えば、ハリウッド的な単純化から逃れてはいない気がしてしまう。しかしそれでもなお、この映画が描く反骨精神を応援しようという気持ちには同調するし、群像劇で登場人物が多く、ひとりひとりの掘り下げに時間を割いていないからこそ、誰かひとりに肩入れするのではなく、ムーブメントに自分も参加したような気分が味わえる。その意味では、今必要な下層の人間を鼓舞してくれる役割をクレバーに果たしている作品ではないだろうか。『ラースとその彼女』『アイ、トーニャ』のクレイグ・ギレスピー監督のことが好きすぎて、ちょっと評価が甘くなっている気もするが、まあそれも監督の功績が為せる技ということで。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
村山章

4.0題材に誠実に向き合った作りだが、それゆえの物足りなさも

2024年2月5日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

IT系ニュースサイトで翻訳に携わってきた関係で、「ゲームストップ株騒動」は一応覚えていた。とはいえリアルタイムで追いかけていたわけではなく、公聴会が開かれるほどの大問題に発展してからの報道で、それまでのおおよその経緯を知った程度だが。そんなわけで本作を観ることにより、主人公であり騒動を牽引したキース・ギルの動機や、彼の動画配信やRedditの書き込みを通じて賛同した低所得の若年世代が手数料なしの投資アプリ「ロビンフッド」を通じてゲームストップ株を買い支え、巨額の空売りを仕掛けていたリッチな大口投資家らを慌てさせる過程などを追体験する感覚でよく理解できた。

本編中に「マネー・ショート 華麗なる大逆転」の映像の引用があったが、同作や「アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!」を撮ったアダム・マッケイ監督の作風と比較すると、金融市場を通じて富裕層が庶民から収奪する構造を問題提起するスタンスは近いものの、ユーモアやサスペンスで盛り上げる娯楽成分が、この「ダム・マネー ウォール街を狙え!」にはやや足りない。誠実に向き合ったことは伝わるのだが、まじめゆえに物足りないというか。コロナ禍の期間に撮影されたため、登場人物の大半がマスクを着けていたり、電話やビデオ会議で会話するシーンが多いなど、あの時期特有の閉塞感が漂っているのもすっきりしない一因だろう。

ゲームストップ店舗の上司をデイン・デハーンが演じていて、ほぼマスク着用のためカメオ出演みたいな感じになっているのはちょっと笑えたが。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
高森 郁哉

4.0わかりやすく、高揚と狂騒に満ち、語り口にも勢いがある

2024年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

我々の暮らしが金融市場と不可分な以上、『マネー・ショート』(15)のような作品は何度となく出現し続けるのだろう。『ダム・マネー』にも少なからずあの語り口やノリに似たものがある。すなわち、観客が現在地の足場を確認しながら、それでいて決して専門知識的な”置いてけぼり”を喰らうことなく身を投じていける狂騒的でいて高揚感あふれるジェットコースターのような空間だ。物語も明快。「ゲームストップ」という銘柄をめぐるヘッジファンドの空売りと、それに目をつけて小口投資家に抵抗を呼びかけたローリング・キティの闘い。ファンドの当初の読みは虚しく、株価はグングン上がる。コロナ禍という時代背景もポイントで、皆がフィジカルに集結し触れ合う「場」を失った中で育まれる一体感だからこそなおいっそう胸を打つ。決して誰しもが担えない奇妙で人間臭くもあるカリスマを、ポール・ダノがごく自然体でこなしている姿には目を見張るばかりだ。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
牛津厚信

3.5赤信号みんなで渡れば青信号

2025年6月23日
Androidアプリから投稿

2021年コロナ禍が蔓延し世界中の人々が鬱々としていた頃に、ロックダウンでほぼほぼ家に缶詰め状態のアメリカ人が目を見張るような金融事件が起きたのである。「ゲームストップ事件」がそれ。将来的に値下がりが予想される会社の株をヘッジファンドが借り受け売りを仕掛け、安くなった時に買い戻す=ショートセリングを仕掛けられたビデオゲーム小売会社の株を、小口投資家集団が買いに走ったため株価は急騰。空売りを仕掛けていたヘッジファンドが結果破産に追い込まれる前代未聞の金融クーデターをベースにしているそうだ。

投資フォーラムを主宰するローリング・キティことキース・ギル(ポール・ダノ)は大手ヘッジファンドに空売りを仕掛けられているゲームストップ株を5万株保有していることを公開し、SNSでフォロワーに投資を呼びかけていた。過去10年にCEOが何回も交代しているビデオゲーム小売チェーンのどこに投資対象としての妙味があったのかはよくわからんのだが、ほとんどのショップが店を閉めているコロナ禍中にあって、このゲームストップだけは店を開けて細々と営業を続けていたそうなのである。

ショップ店員にどこまでのロイヤリティがあったのかは定かではないのだが、多くのネット住民たちがゲームストップの営業姿勢にある種の“誠意”を見たのは事実だろう。Uber Eatsのバイト中に届け物のつまみ食いばかりしている弟のケビン、老人ホームで働く介護士、大学の奨学金返済に悩んでいるレズビアン女子大生…このままコロナ禍が続けば将来食い詰めること間違いなしのプア・ピープルが一発大逆転をねらってゲームストップ株を買い始めるのだ。

豪勢なお屋敷に贅沢なランチ、会員制のテニスコートで腹をすかせることぐらいしか能のないヘッジファンド幹部が、予想外の株価の動きに大慌て。しまいには米国金融当局まで動き出し、ゲームストップ株は売買停止にまで追い込まれてしまう。さらに、当局からの圧力によってギルの運営する投資フォーラムまでアクセス不可に。民主党お得意の情報封鎖によりあわれギルはbanされてしまったのだ。

当然ゲームストップ株価は爆下がり、買い増しを続けていた小口投資家は大損をぶっこくのであるが、ギルだけは頑として売ろうとしない。小口投資家の応援のかいもあって株価は反転しギルたちは大儲けするのだが、空売りをしかけたヘッジファンドやギルのSNSを凍結した株式売買サイト運営会社ロビンフッドに当局のメスが入るのである。忘れてはならないのが、ウォール街そのものは民主党の有力なサポーターであり彼らにとって不利な判定は絶対に下さない、ということなのだ。

当時は民主党支持だったはずのイーロン・マスク(多分声優による物真似)からギルに激励の電話があったり、ニューヨーク州下院最年少議員として当選をはたした貧民出身のオカシオ・コルテスご本人が出演してさも“私はこちら側の人間です”的な発言をしていたが、ゲームストップ人気に便乗した売名行為に違いなく、貧民vs.金持ちのガチンコ勝負をどっちらけにさせる要因にもなっている。

ギルのポジションを確認できずに一度はゲームストップ株を手放した女子大生たちも、「なんだか気持ち悪くて眠れないの」と言ってゲームストップ株を買い戻すのである。損得でいったら売りぬけて当然のタイミングなのだが、コロナ禍における閉塞感も手伝ったのだろう、ローリング・キティとともに夢を見続けたいドリーマーたちの良心が、ヘッジファンドの実利主義を(結果的に)やっつけたのである。

しかし夢はそう長く続かない。実際にゲームストップ株を押し上げたのは、空売りを仕掛けた連中のショートスクイーズ(踏み上げ)と、ゲームストップ人気に着目したその他ヘッジファンドによるコールオプションが原因だったとか。ローリング・キティも現実的にはヘッジファンドの“踏み上げ=買い戻し”を狙って、フォロワーの買いを煽りつつひたすらホールドを続けていた可能性が高いのだ。

この事件に端を発し、空売りを仕掛けられていた別銘柄でも似たような急騰案件が発生し、クレディスイスが破綻に追い込まれたという。実際には、狂暴なハイエナ同士の仁義なき戦いの間に漁夫の利を得た“キティちゃん”たちのおとぎ話だったわけである。ゲームストップも時代の流れには逆らえずその後大規模なリストラを敢行、ゲームソフト小売業からデジタル販売会社へと転身中だという。株価は現在23.5ドルと低迷を続けている。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
かなり悪いオヤジ

他のユーザーは「ダム・マネー ウォール街を狙え!」以外にこんな作品をCheck-inしています。