「ツインタワー、9月、分断された人々」ロボット・ドリームズ キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
ツインタワー、9月、分断された人々
公開館数が少ないこともあってか、日曜朝7時台の上映回も結構お客さんは入ってた。
(この先ストーリーに触れますのでご注意下さい)
セリフなし、ナレーションなし。
どの国の人でも、子供でも楽しめるのがまず良い。隣の席はまさに外国人のファミリーだった。
「ロボットと主人公が心を通わせる」というテーマは、昔から変わらずの定番。
そんな使い古されたネタがこんなに良いのは、やはり作り手の腕と熱意。
繰り返し登場するニューヨーク、ツインタワー、『September(9月)』、分断された人々…。おそらくモチーフの一つは「アレ」でもあるのかな。
でも政治的な雰囲気は皆無。
購入したロボットが、主人公が何かを失った代替品ではないこと。それぞれが誰かの代わりではなく「自分」であり、自分の道を踏み出すことこそ幸せだということ。
そして「元通りがいつも正解とは限らない」ってこと。
「戻れないからこそ美しい」ってのもあるよね。
家族・友人・恋人…
観客がそれぞれに大切に思う人と重ねられる様に、あえて人間を使わず、性別も世代も明らかにしない。
実際に主人公とロボットが交流する時間はほんのわずか。前述のとおり、会話も描かれない。
そんな二人が、お互いを必要な存在として認識し合うクダリが美しい。
この作品の大きなカギになる、Earth, Wind & Fireの『September』にのせて、幸せな瞬間が観客の胸にもガッツリ刻み込まれる。
そんな二人が別れ別れになって、とにかく動き回る主人公と、動けないロボットの対称的なエピソードが、また素晴らしい。同じ「雪」も、一方では遊び道具であり、一方では自由を奪う枷であったり。
動けないロボットが、夢の中で『オズの魔法使い』の世界や、スクリーンの外へ飛び出すってのもニクい。
足を掃除機のパイプに交換されて、歩きにくい描写も絶妙に可笑しみがありながら、現実的にはすごく残酷なシーンでもあったり。
決してありがちなパーツを組み合わせた焼き直し映画ではなく、オリジナルを作ろうとする意欲に溢れていた。
時々ふいに残酷で苦々しいけど、優しさいっぱいで最後はちゃんと観客の心に波紋を広げて終わる。
オススメです。
帰り道、気付くと口笛吹いてました(笑)