劇場公開日 2025年1月17日

「たとえ忘れても思い出す」君の忘れ方 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0たとえ忘れても思い出す

2025年1月19日
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何とも不思議な映画である。
グリーフケアの話なのかと思ったら、恋人を亡くした主人公は、そうした集まりを取材するだけで、自ら参加することはない。
死んだ妻が見えるという男が出てきたり、主人公自身も恋人の姿が見えるようになるのだが、そのまま、オカルト的な話になるのかと思ったら、見えているのは死者の霊ではなく、生きている者の脳内現象であると分かってくる。
おそらく、ここで描かているのは、ベテランのカウンセラーがインタビューの中で語っていたような「死者との関係性」の話なのだろう。
例え幽霊であっても愛する人に会いたいという男の気持ちは分かるし、忘れられないことも、忘れていくことも辛いのであれば、いっそのこと、全て忘れてしまいたいと思う主人公の気持ちも理解できる。
通り魔事件で夫を殺された主人公の母親が、執拗に犯人を探そうとすることも、ある種の死者との向き合い方なのだろう。
「妻の姿が見える自分はおかしいのか?」と尋ねる男に、「出てきてくれるだけで羨ましい」とグリーフケアの担当者が答えるように、「死者との関係性」に正解はないのだろうし、それは、時間の経過とともに変わっていくものでもある。
それが、いつになるのかは分からないし、それこそ、人それぞれなのだろうが、やはり、「普段は忘れていて、時々思い出す」くらいになることが、一つの理想的な関係性であるに違いない。
そんなことを考えさせられた映画ではあったのだが、ただ、それだけだったところには、物足りなさが残った。

tomato